「ねえ、ねえっ、…祐介っ、やろうよーーーエッチ、しようよーーー」
「な、何言ってんだよ?お前っ…」
異性でありながら「友情」を感じてた。
女なんだけど、オレにとってこいつは「オンナ」ではない……
男同志だとに相談しにくい事だって亜美には話せたりしてた。
そして何よりも、お互いに人として信頼していたと思う。
本当に。マジでそう思ってた。
オレに対しては少しわがままなところはあっても、普段の亜美は根は真面目だし、ましてやこんな風にオレを誘ってくるタイプの女では、断じてない。
――― 亜美とオレ。
高校2年の時に同じクラスになってから、付き合いも3年と少し経った。
その間にこんな風に迫られたこと(迫ったことも)なんて、一度もなかった。
ハッキリと異性だということを意識するような間柄じゃなかったんだ。
それなのに。何なんだよ。
今夜だって、こいつが最近彼氏に振られたっていうんで慰めるために飲みに来たんだ。
下心があったんじゃない。
「お前、振られてヤケになってんじゃないか?」
「ヤケになんて、なってませーん」
ケラケラと笑う亜美。絶対に変だ。
居酒屋にいた時までは普通の様子だった。
おかしくなったのは店を出てからだ。
繁華街をフラフラしてる亜美に、通行人の視線が刺さる。
ブラブラと水色の小さなバッグを振り回して、おぼつかない足どりでオレによりかかってくる。
…そんなに飲んでたっけ??こんなになるまで。
「ゆーすけー…」
オレを上目遣いに見上げる亜美の瞳。
ダメだ、完全に出来上がってる。
酔った勢いで、亜美に手を出すなんて最悪だ。
確かに結構可愛いし、見栄えは悪い女じゃない。
手を出したくないといえば、正直ウソになるかもしれない。
だが、せっかくの『異性の親友』をこんな事で手放したくなかった。
大体こいつとはめちゃくちゃ気が合って、一緒にいるだけで楽しいんだ。
今までもお互いの恋愛の悩みとか、相談しあったりしてた。
異性でないと分からない事もあるし、男には相談できない事もあった。
普通に言ったら恥ずかしいことだって、オレと亜美は随分語り合った。
胸の内を何でも話せるヤツって、そうそう巡り合えるもんじゃない。
要するに、オレにとって、亜美は大事な友達なんだ。
「したいーーー、しようよーーーー」
通り過ぎる通行人の視線がすっごく痛い。
「だ、黙れよ…おい!」
思わず亜美の肩を抱いて繁華街の端に寄った。
「ねえ、いいじゃーん……行こう、行こう!」
亜美はずんずん歩いていく。
こういう繁華街の裏道には、必ずと言っていいほどラブホテルへと繋がる道があるもんだ。
「おい、待てよ、…亜美!」
ホテルの前で、亜美は急に立ち止まった。
「亜美……」
オレは恐る恐る亜美に手を伸ばす。
振り返った彼女は、にやっと笑うとすごい力でオレをホテルへ引っ張り込んだ。
有無を言わさない、っていうのはこういう事だなとオレは思った。
ラブホテルの部屋のドアを勢いよく開けて、亜美はずかずかと部屋に入っていく。
「おい、…おいっ、亜美」
部屋に入っても、オレが手を出さなければ何もないだろうと思っていた。
既にフラフラだったし、部屋に入ればすぐに眠ってしまうかもしれないとも思っていた。
ベッドの側に立つと、亜美の動きが止まる。
彼女のショートカットのうなじが、無言の圧力をオレにかけてくる。
「お前、誰とどこに来てるのか分かってるのかよ?」
オレは後ろから声をかけた。
「分かってるよーーー。祐介、でしょう?」
「………分かってるんなら、……分かってるんだろ?」
(どういうつもりなんだよ)
オレは言葉に詰まる。
せっかく築き上げたオレたちの友情にヒビを入れるつもりなのかよ。
「えっへっへっーーー」
亜美はニッコリと笑って、オレに向かって手を伸ばしてくる。
「祐介こそ、ラブホですることなんて、分かってるでしょー?」
「な、何だよっ……うっ…」
酔っ払いっていうのは、馬鹿力だ。
普段は表に出ない潜在能力って、こんなしょうもないところで発揮されるもんなのか?
猛烈な力で、オレの首に抱きついてくる亜美。
「げっ……」
首が絞まるかと思う。
マジで苦しい。
「祐介ーーーーー♪」
「おいっ……ゲっ」
ほとんど技をかけられてる状態で、オレはベッドに押し倒された。
亜美の体重がまともにオレの体にのしかかる。
重い。
オレはラブホの固いベッドに沈んだ。
「祐介ちゃん、しよー、しよーーー」
「グッ……うっ……」
身動きのとれないこの状況で、いきなり亜美に唇を奪われた。
今までこういう妄想したことないワケじゃなかったが、こんなにもあっさりと、…親友のはずの亜美とキスするなんて。
……オレは軽くショックだった。
呆然としているオレに、亜美は容赦なく濃厚なキスをしてくる。
(こいつ、普段、こんな風に男と付き合ってたのかよ?)
そう言った意味でも、またショックだ。
何となく、亜美は清らかでいて欲しいと願っていた。
亜美の舌がオレの口に入ってくる。
唇を噛まれて、かなり痛い。
「んんーーっ」
オレは亜美から逃れようと、初めて亜美の肩を掴む。
「ゆう、す、け…♪」
オレの腕を肩で押し返して、亜美はまたキスしてきた。
息が熱い。
何をされているのか分からないまま、オレは頭がボーっとしてくる。
…次の瞬間、自分の身に起こっていることに気付いて、驚いた。
ありえない器用さと鮮やかさで、ガチガチに留まっているはずのオレのベルトのバックルが外されていたのだ。
「おい、…あ」
亜美、と言いかけた時、勢いよくオレはズボンを脱がされた。
「ちょ、ちょっとお前……いい加減に」
亜美は上半身に全体重をかけるようにして、オレを押さえつけてくる。
オレはあせり過ぎて、彼女の体の下で変な動きをするだけだった。
「ちょっと待てよ!」
声が軽く裏返ってしまう。
(……あっ!)
オレの手が届く一瞬先に、亜美の手によってオレのパンツが脱がされた。
(マ、マジかよ!)
あまりにも早い展開に、オレの思考が追いつかなかった。
油断してたら、下半身裸にされてた。
「亜美!やめろって!……亜美!…あ、……っ!」
「う、うぅ〜〜んっ…」
ものすごいエロい声を出しながら、いつの間にかスカートの下に何もつけていない亜美が、
……オレのモノを自分に挿していた。
グニュっとした温かいものに、オレのそれは包まれてた。
信じられない。
オレは、ヤられた。
(レイプ、されてる………)
オレは、マジでそう思った。
頭が真っ白になって、自分の身に起きていることが現実のこととは思えなかった。
大事にしたかった友達の関係が、ガラガラと崩れていくような気がした。
認めたくなかった。
こんな風に、彼女と結ばれるてしまうなんて。
「あんっ、あんっ、…あんっ……あんっ…」
オレの体を跨いで、亜美がぴょんぴょんと跳ねてた。
襟にフリルのついた白いブラウスに春らしいスカートをはいた姿のまま、オレの上で…。
亜美の中にオレのモノはしっかりと入っていて、で、亜美によってオレのモノはしっかりと擦られていた。
信じられないが、これは現実だった。
その証拠に、オレはだんだんと良くなってしまっていた。
生で、生の亜美に入ってるオレ。
(ハッ!)
このままだと、非常にヤバい展開になる。
できちゃう、なんてシャレにならないって。
「おい!……ヤバいって!」
オレは切実にあせって、亜美の体を跳ね飛ばした。
「きゃぁっん…」
足を広げたまま、亜美がベッドに倒れる。
なんつー格好してるんだよ。
「な、何すんだよ……亜美っ…」
しっかりと勃起させた状態で、こんな事を言うオレも説得力がない。
おまけにちょっとイきそうになってた。
「ねえ、続き、…しよー…、せっかく気持ちいいのにぃ…」
亜美の口から出てる言葉とは思えない台詞に、オレは愕然とする。
そして同時に興奮もしてしまう。
オレを睨んだように見る亜美のその目が、マジでエロい。
「しょうがないなぁ〜…」
そう言いながら、亜美は服をどんどん脱いでいった。
「…………」
オレは固まったまま何もできなくて、ただその姿を見守ってしまった。
ブラジャーを外す亜美。
ブルンと丸い乳房が露になる。
(おーーーー)
オレはその形の良さに、心の中で賞賛してしまう。
そんな場合じゃないのに。
亜美はスカートを乱暴に脱ぎ捨てると、それが最後の一枚で…
オレの目の前で、亜美は全裸になってしまった。
「脱いでよー……祐介もっ♪」
「………あっ、…おいっ…」
亜美は呆然としているオレに手を伸ばしてくる。
あっという間にオレはTシャツを脱がされてしまった。
そうなると、オレも裸だ。
つまり二人とも、…ベッドの上で全裸だった。
「さーてとっ♪続き続き〜〜♪♪」
ラブホテルで、二人きりで、全裸で……
また上に乗ってこようとする亜美は、大胆に足を広げてオレに向かってくる。
オレは我に返った。少しだけ。
蚊の鳴くような小声で、オレは懇願した。
「せ、せめてコンドームを………」
今夜ほど自分をダメな奴だと思ったことはなかった。