友達のままでいたいよ

●● 7 変わらないもの ●●

   

祐介の手が、こんなに温かいなんて知らなかった。


「初めて、…エッチでイっちゃった…」
祐介の腕に抱かれながら、私は彼の手を握り締めていた。
「へえー」
私の顔を見て、祐介はニヤっとした。
「この前、何度もイってたけど?」
「……ウソー……だって覚えてないもん」

私にとっては『今』が、彼と結ばれた『初めて』だった。
こんな風に裸の肌の感触を味わうのだって、今が初めてなんだ。

「なんか祐介って気持ちいい……」
改めて彼の首に手を回した。
「オレもすっごい、亜美が気持ちいい」
祐介のうなじ。彼の髪。

「んん…」
唇が合わさる。
祐介のキスは優しい。
きっと柔らかいんだろうなって思ってたけど、やっぱりその通りだった。
「祐介……」
少し離れて祐介の顔を改めて見た。
目の前にいるのは確かに彼で、…ずっと友達として側にいた祐介で…。
睫毛は私よりも濃いし、女の子だったら可愛かっただろうななんてしみじみ思っちゃったりして…。
「やっぱ、ちゃんと意識のある『亜美』がいいな」
祐介は笑った。
「………」
今でもその時の自分を想像すると、すごく恥ずかしくなってくる。
「意識のない『亜美』はもっとエロエロだったけど……まああれはあれで良かったか」
「もう、言わないでよ…恥ずかしいから」
私は祐介の首筋に自分の顔を埋めた。
「かわいーな、亜美」

ギュっと、抱きしめられる。
肩を掴んでいた腕が背中に回って、そして腰をそっと撫でていく。

「あ……ん…」
祐介の右手が、私の体と彼の体の間に移動する。
私のそこに、指先が触れた。
「ヌルヌル」
祐介が私の耳元で囁く。
(やあん……)
「は……あ…」
彼の指先はその谷間を割って、私のクリトリスを撫でてきた。
「あん、……あっ…」
「固くなってる…ここ」
「あっ…」
もっとグリグリと、その部分を祐介は指先で刺激してくる。
「ふ、…うぅんっ…」
またすぐによくなってきてしまう。
さっき迎えた絶頂の欠片が、再び私の体の内部へと集まりだす。

(あっ……)

祐介の体が私に圧し掛かり、私は改めて仰向けにされる。
「うっ、うぅんっ……」
足を広げられて、クリトリスは触られたまま、祐介の指が入ってきた。
「あー、すげー、ヌルヌル……」
「やぁんっ…」
(そんな風に言わないで……)
指を入れられながらそこを触られるのって、私のツボだった。
「あっ、…あ、ああんっ……」
「ここ、舐めていい?」
あそこをユルユルと触りながら、祐介が私の耳を舐めた。
「ん、…ふぅん…」
(あぁん、…気持ちいい…)
「どうする?」
祐介は軽く私の耳をかんだ。
「はぁ……ん、…舐めて……」

ちゅっと、私の唇にキスすると祐介は体を下げていく。

「んんんっ……」

柔らかくて色っぽい祐介の唇が、私のそこに触れてる。
いつも可愛げのない言葉を私に投げてくるあの舌が、私のそこを震わせる。
「ああ、……あんっ…」
(ああ、…祐介……)
私の中の彼の指が、更に奥へと入ってくる。
「んあ、…ああっ…!」
祐介は多分、私の感じるところを知ってるんだ。
そうとしか思えないぐらい、的確に私に性感を与えてくる。

(ああん、気持ちいい……だめ…こんなのって…)

彼の唇は私のそこにビッタリと吸い付いていた。
中の指が、私の感じるスポットを速さを増してグリグリと押し擦ってくる。
その激しさが、苦しいぐらい、よかった。
舐められてる外側も、絶頂の後押しをしてしまう。
「ああん、祐介っ、…だめっ……ああっ…」

(ダメ…イっちゃう……気持ちいいっ…ああんっ…)

「ああっ、…うあぁぁんっ!」


祐介の指がそっと私の体から離れていく。
そこを舐めていた唇が、私の頬に触れた。
「イけた…?」
「……うん…」
私は頷いた。まだ息があがっていた。
「気持ち良かった…?」
優しい声で祐介が言う。私の顔を見ているのが分かる。
「…すごく……」
恥ずかしくてたまらなかったけれど、こうしていることが何だかとても嬉しい。

「オレの、入れるよ…」
「うん………入れて…」

(ああ…入ってくるっ……)
祐介の熱いのが、私の中に入ってくる。
触れ合う皮膚もそして私の体の中も、ホントに溶かされるんじゃないかと思うぐらい、いい。
「あぁ……あぁ……もぅ…」
私は祐介の肩を握り締める。
「亜美……目、開けて」
彼の言うとおり、私は目を開ける。
ずっとただの友達だったのに、今、こんなに近くに…そして私と一つになってる。
「うぅんっ……やんっ…」
こんな状況で見つめ合ってしまうと、どうしても恥ずかしくてたまらない。
「なんか……」
祐介が私を見たまま言う。
「亜美の中、…すごいいいんだけど…」
そんなこと言われると、ますます体の奥が疼いてしまう。
うなじに快感が走って、私は思わず首を振った。
「……私も…すごい感じてるよ…」
「亜美…」

キスしあう。
肩を抱きしめあったまま、繋がったその部分にお互いを感じる。
「ん…ん…」
祐介の舌が私の舌と重なり合う。
ゆっくりと動き始める彼のせいで、私はまたよくなってしまう。

(ああ…ホントにすごい気持ちいい…)

唇が離れて、祐介の動きが一瞬止まる。
「ハア…そんなに締めんなよ…」
眉間に皺を寄せた彼の表情が、私の奥を更に敏感にさせてしまう。
(ああん……)
自分の中に入っている彼の存在をはっきりと感じた。
確かに私の中は、彼のものをギュっと掴んでいた。
祐介はまた顔をしかめる。
「……おい、…わざと、締めてんの?」
「だって……しょうがないじゃんっ…」
そんなとこ、自分でコントロールできなかった。

「ハア……」
祐介はため息をつくと、また動き出した。
「ああっ、ああんっ!…ああっ!」
どうしてだか分からないけれど、すごく感じていた。
(なんで…こんなに、感じちゃうの…)
「うあ、…あぁ、…あぁんっ!」
自分も苦しくなるぐらいに、彼を抱きしめていた。
彼と擦れあう部分が、祐介に動かれる度に突き抜けるような快感を私に巻き起こす。
(ああん、だめ…すごくいい…)
「あぁっ、もっ、…ダメっ…ああんっ…」
「すごい、…キツい……亜美」
祐介の吐く息が、私の耳にかかる。
彼も感じているのが分かる。
そして私は余計に興奮してしまう。
(ああ、もう、ホントにダメ……)
自分の中、全部が感じるための触覚になってしまった気がした。
祐介が動く度に、体が変になってしまいそう。

「あ……ダメダメっ、…ああっ、あぁっ…イっちゃう…」

私はまた、あっという間に祐介にイかされてしまった。
ただ震えながら、私は夢中で彼を抱きしめていた。



そんな関係になってから、1ヶ月経った。
私は祐介の部屋のベッドの中、裸で彼の背中にぴったりとくっついている。
あれから、会えば必ずエッチしていた。
「ねえ、…祐介…」
「んー?」
祐介は背中越しに答えた。
「なぁんか、私たち、エッチばっかりしてない?」
「……そう言えばそうかもな…」
そう言いながら祐介は体を起こしながら、私の方へ向き直った。
「こんなんばっかじゃ、…亜美は不満?」
珍しくマジメな顔の彼に、今更に私はドキっとしてしまう。
あんまりタイプじゃないと思ってたのに、こうなってしまえば祐介の全てが好きだ。
「ううん、全然不満じゃないよ……っていうかさ…」
むしろこんな状況に、溺れてしまいそうな自分が怖かった。
「っていうか、何?」
祐介の手が私の耳に触る。
「……くすぐったいよ」
「……はは」
ちょっと微笑むと、祐介は私の髪を撫でた。

何気ない仕草とか、彼はすごく優しい。
どうして今まで気がつかなかったんだろう。
…どうして今まで気がつかない振りができたんだろう。
触れてしまえば、離れたくなくなる。
離したくなかった。
今ホントに、そう思う。
きっとこれからだってそうだ。

「で、何?」
彫りの深い目で見つめられると、いつもドキドキしてしまう。
「…なんか…ハマりすぎて、…ヤバイよ…」
私は彼から目をそらしながら、答えた。
祐介は満面の笑みになって、私を抱きしめる。
「いいじゃん、ハマってよ」
「だって……」
(だって体力がもたないし…)
祐介とのエッチはすごく良くって、私は彼とする度にイってしまうようになってた。
彼にちょっと触られるだけで、条件反射みたいに濡れちゃうし。
…というか、側にいるだけでも…体は彼を求めて反応してしまう。

「だって、私、ホントに変になっちゃいそうだもん。」

本気でそう思った。
祐介といると、体中の水分が抜けてしまうんじゃないかと思うぐらい。
本当に体がおかしくなってると思う。
少なくとも、今までの私じゃなかった。
「亜美ーーー」
祐介は笑顔で、私の髪をくしゃくしゃ撫でた。
「いいよ、変になっても」
そう言って、私の上に体を重ねてくる。
私の頬は彼の両手に挟まれて、今にもキスされそう。

「っていうか、変にしようか?」

祐介は思いっきり笑って、ワクワクした顔で私を見た。
その顔がかなりエッチなのにちょっと可愛くて、私はまたキュンとなる。
「やーだー……」
私は、いっそこのドキドキから逃げ出したいぐらいなのに。
それぐらい、心から体から、全然普通の状態じゃなかった。
私の裸の肌がつま先から頭まで全部、彼と触れ合う事を期待してる。
…快感に包まれることを、期待してる。
(もう、やばいってば…)

「『やー』じゃないくせに」
深く強く何度も何度も、祐介にキスされる。
全部触られたい。
全部触れ合いたい。
私の想いに応えるように、祐介は私に触ってくれる。
手で指で、舌で…そして彼自身で、私は愛撫を繰り返される。

(もう、ホントに変になるってば……)

(ああ…)
音を立てて愛される。
私は溢れてくるものを自分では止められなかった。
自分が出してしまう恥ずかしい音を、それ以上に恥ずかしいぐらいに声をあげながら、ただ聞くしかない。

(こんな風になっちゃうなんて…)

一度達すると、その後はもう戻れなかった。
彼の動きが全て私へと続く快感になって、絶頂がどこからどこまでなのか、もうハッキリと分からなくなってしまう。
(ああ、だめ……良すぎちゃうう…)
体も心もトロトロになっていく。
それでもひっきりなしに体中を貫く強い快感で、私の体は何度も震えた。


「亜美、……超、愛してる…」

感覚が真っ白になってるその最中、祐介の声だけがやけに澄んで私の心に落ちた。


「そういえばさ」
祐介はベッドの端に座って、タバコの煙を吐く。
「亜美…酔っ払っても、もうおかしくならないな」
「ああ…」
そういえばそうだった。
「そうだね、ホントだ」
私は横になってぐったりしながら、祐介の背中を見てた。
「…なんだったんだろな、アレ…、欲求不満か?」
黒い灰皿を手に持って、タバコをつぶしながら祐介は振り返る。
私はちょっと考えて、言った。
「多分だけど……」
「うん」
祐介の動作が止まる。

「私、祐介とすっごいヤりたかったんじゃないかなぁ」

「ええ」
意外にも、彼は驚いた顔をした。
私はそんな祐介を見て、ちょっと笑ってしまう。
「うん。…きっとそうだよ」
タオルケットを胸まで引っ張りながら、私は体を起こした。
「祐介とだけは絶対そうなっちゃいけないって、思い込み過ぎてたのかも」
「………」
祐介は立ち上がって灰皿をテーブルに戻しに行くと、ベッドへとまた帰ってくる。
「オレもそう思ってた。ずっと」
彼は深く座りなおして、私と目が合うとニコっとした。

「こんなに体の相性がいいなんて、想像もしてなかった」
笑いながら祐介は、私に手を伸ばしてくる。
「……んっ」
軽くキスされた。
私も、祐介とは相性がいいと思う。
「さすがに、腹減ったな」
祐介はTシャツをかぶる。
「祐介、たまには何か作ってよ」
私は裸のままタオルケットにくるまれた状態で、膝を立てて座っていた。
彼はズボンを履きかけた状態で、私のキャミソールを掴んで投げてくる。
「それはオレのセリフだろ……こんな可愛いの、してたっけ?全然見てなかった」
しみじみとブラジャーを見ると、それをまた私の方へ投げた。
私はショーツを探して慌てて履くと、祐介が投げた上着類を順番に着た。
彼は完全に着替え終わって、部屋の鏡を見ながら髪を直してた。

「買い物行く?…一緒に何か作るか?」
「うん、そうしよう♪」

私はキャミソールにショーツの姿で、ベッドから降りた。
「おお、その格好いいな」
またやらしい目で、祐介は私の下半身に目をやる。
「何よその目つき……何回すれば気が済むわけ?」
そう言いながらも、私も笑ってしまう。
スカートを履きかけてるのに、祐介が後ろから抱きしめてくる。
「じゃあ、食後に」
「…バカ…」
彼に振り向いた私は、またキスされた。


恋人関係になってしまったら、大事な何かを失ってしまうような気がしてた。
だけど、こんなに何度も体を重ねているのに、結局は何も変わってないと思う。
むしろ変な緊張感がなくなって、自然に一緒にいられるようになった。
お互い、前よりも優しくなれてる気がする。

「良かったね……」
近所のスーパーへ向かいながら、私たちは手を繋いで歩いた。
「何が?」
祐介はエッチした後のせいなのか、なぜかこざっぱりしてた。
こうして歩いていると、彼との距離は前よりもずっと近くなったなと実感する。
「色々と……」
そう言って、私は含み笑いをした。
祐介も私につられて、ニヤリとする。
「そうだな」

 
彼と一緒にいると、なんだか空気さえ気持ちがいい感じがする。
私は繋いだ手に力を入れて、肩がつくぐらいに側に寄った。

「祐介が、祐介のままで良かった」

「なんだそれ」
祐介は私の頭に顔を寄せた。
私の髪に触れる彼の表情が、緩んでいるのが分かった。


〜友達のままでいたいよ。〜
終わり 

 

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