君の香り、僕の事情

●● 15 ●●

   

(ああ、オレ、とうとうまつりと…)
深雪は授業も上の空で、彼女にもらったシャーペンをグルグルと指先で回していた。

昨日、茉莉を送って自分の部屋に戻ってからずっと、茉莉の事ばかり考えていた。
茉莉の匂い、茉莉の手触り、茉莉の表情、中の感じ…
(あ、やべ)
思い出すと、勃ってしまう。
と言うより、昨晩から勃っている状態の方が多かった。

休み時間、深雪は茉莉がいる3組へ向かった。
「つかさ、まつりは?」
廊下で女子と喋っていたつかさを見つけ、深雪は声をかける。
「トイレかな?分かんない。すぐに戻ってくると思うけど」
つかさは背が低いので、茉莉といる時と違い、深雪の視線はグっと下がる。
つかさと話していた女子が、深雪をじっと見ていた。茉莉と付き合っている事が周知されている今でも、深雪を見ると女子は色めき立つ。
「みゆきくん、いつ見てもカッコいいね」
女子の方も普通に深雪へそう言う。
「おお、サンキュー。…あ、いた」
深雪は茉莉を見つけ、階段から続く通路から出てきた彼女の方へ行く。

「まつり」
「あ!」
深雪が声をかけると、茉莉は驚いてビクンと立ち止まる。

「何、何?どした?」
意外な茉莉の反応に、深雪は言った。
「ううん、何でもないの。急に呼ばれてちょっとビックリしただけ」
そう答える茉莉の頬がみるみる染まる。

(ああ…)
深雪は察した。
昨日、厳密に言えばまだ24時間も経っていない、昨日の放課後、深雪と茉莉は初めて抱き合った。
意識している茉莉を見ると、深雪も昨日の事を思い出してドキドキしてくる。
「今日の昼休みさ」
「うん」
茉莉は顔を上げる。
普通にしようとしても、耳が赤いのは隠せなかった。


昼休み、2人で屋上へ向かう。
まだお互いを全然知らない頃、初めてちゃんと話をしたのが屋上だった。
階段を上りながら、深雪はその時の事を考えていた。
(あの頃から…)
深雪は茉莉と手を繋ぎ、一歩先を進む。
あの時も戸惑う彼女の手を引っ張り、この階段を上った。
「前、2人で授業サボったの思い出さない?」
深雪は言った。
「うん。私も今それを考えてた」
深雪を見上げて、茉莉は笑顔になる。

屋上へと続くドアを開けると、一瞬にして熱気が踊り場へ流れ込んできた。
「うわ、超あっちいな」
「暑いよ、7月だもん。屋上はさすがに行けないね」
重いドアを、深雪は閉める。
暗い階段の踊り場は、屋上の暑さが嘘のようにひんやりとして涼しい。
「ここでいっか」
茉莉と深雪は階段に並んで座る。
暑すぎる屋上へ向かう人はおらず、2人きりだ。

「初めて屋上でしゃべった時」
購買で買ったおにぎりを開けながら、深雪は話し出した。
「オレ、絶対まつりと付き合うって思ってた」
「え、そうなの?」
「うん」
深雪は自信満々に微笑む。
「そうなんだ…」
なぜか茉莉は恥ずかしくなってしまい、黙々とご飯を食べた。
元々食べるのが早い2人の食事は、あっという間に終わる。

前を向いても視野に入る茉莉の指先を、深雪は目の端で意識する。
その手から続く手首、肘までの間、そして二の腕まで、ゆっくりと視線を流す。

「みゆきくん…」

流れた視線の先に茉莉の唇があり、そして2人の目が合う。

「………」

昨日も、これまでも何度もしたキス。
唇が重なると、自然と舌が触れた。
舌で唇をなぞり、そしてまた舌で舌の熱さを感じる。
「んんっ…」
目を閉じた茉莉の感覚も、深雪と触れあう唇からさらに研ぎ澄まされていく。
深雪の手が茉莉の首を支えている。
もう一方の手が腰に回る。

深くて甘いキスに、茉莉の体に昨日の官能が蘇る。
それは深雪も同じだった。

「まつり…すげー好き…」
「私も、大好き」
座ったまま、ギュっと抱きしめあう。
深雪は茉莉のおでこにキスした。

「まつりと、初めてここでしゃべった時さ」
少し体を離して、深雪は茉莉の手を握る。
「その時から、オレ。ほとんど今と同じぐらいまつりの事好きだった」
「ホントに?」
「うん……変だろ」
深雪は笑った。
自分でもおかしいと思ったからだ。
「でも、ひとめ惚れとかじゃないんだよ」

「………」
愛しさがあふれ出てくるような優しい眼差しを向けられて、彼の気持ちが自然に伝わって来る。
茉莉は胸が熱くなる。

「好きになったとかじゃなくて…」
深雪は目を細めた。
目の前にいる茉莉の存在がすごく尊いもので、絶対に大切にしたいと思う。
「好きな人に、出会ったって感じ…」
確かめるように、深雪は言葉にした。

「分かりにくいけど、何かストンって。オレの知らない感情とか、最初からまつりが全部持って、突然オレの前に現れた感じ」
「…そんな」
「何か、オレ、…重いかな」
「ううん」
茉莉は首を振る。
手に重なる深雪の手が温かい。
そのぬくもりから、制服を着ているのに深雪の肌の質感を感じた。
昨日の、深雪の肌の感触を、全身で思い出す。

「今日はまつりの家で勉強しよう」
「うちで?」
「うん。だってオレ絶対襲っちゃって勉強にならない自信があるから」
「……」
さっきからずっと昨日の深雪の事ばかり頭にあった茉莉は、真っ赤になってしまう。

「ん……」

また唇が触れた。
「もー、マジ、…好き…」
深雪が茉莉の耳元でささやく。
そのまま、深雪は茉莉の耳にキスする。
茉莉の腰に回していた深雪の手が、彼女のシャツを弄り、その中へ伸びる。

「あっ……」
素肌に深雪の手が触れ、茉莉は声を出した。
「ちょっとだけ」
深雪の手はさらに上に上がり、ブラジャーをずらす。
「あっ…、えっ?…」
学校の中で、こんな感じになっている事に茉莉は戸惑う。

「あっ…!」
茉莉の胸に、直に深雪が触れた。
「あ…、えぇ…っ」
困惑する茉莉をよそに、深雪の手は彼女に触れ続ける。

(やだ……、そんな…こんなとこで)

屋上へと続く階段はひんやりとしていた。
それでもこの空間は音が響いてしまう。
茉莉は気が気ではなかった。
(ああ……)
触れる深雪の手の動きが優しくて、嫌でも昨日の事を思い出してしまう。
(昨日……、すごく気持ち良かった……)

「うぅっ……」
深雪の指が、茉莉の乳首に触れる。
声が出てしまいそうになるのを、堪えた。
「はぁっ……」
茉莉は吐息を漏らす。
深雪の息も荒くなっていた。
(ああ、みゆきくんも、興奮してるんだ……)
そう実感すると、茉莉自身も余計に興奮してしまう。

(ああ……)
じんわりと、自分の中から溢れていくのが分かった。
「うっ……」
耳を舐められ、乳首を弄られながら胸を揉まれている。
深雪のもう一方の手は茉莉の背中に回され、しっかりと支えられていた。
自分に対して、いつも大切なものを扱うように接してくれる彼の行動の全てが嬉しくてたまらない。

「みゆきくん……大好き……」

「絶対、オレの方が好きだよ」
深雪は、誰にも見せた事のない優しい眼差しを茉莉に向けた。
彼女のシャツから手を出すと、ギュっと茉莉を抱きしめる。

 
「絶対」
「私も負けないよ」
茉莉は笑うと、自分から深雪にキスした。

彼女の柔らかい唇が自分の唇にフワリと重なる。
茉莉の意外な行動に、深雪はドキドキしてしまう。
「おっ」
ドキドキし過ぎて、深雪は一瞬怯んだ。

でも次の瞬間、
もっと笑顔になって、茉莉へとキスを返した。
 

 

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