テストが終わり3月に入ると、選抜に選ばれた茉莉は、通常の学校時よりもずっと忙しくなってしまった。
深雪の方も、受験勉強に専念するため、樹生と順平と一緒に春期講習を受けたりと、お互いの時間をあまり取れないまま、春が過ぎた。
会えなくても、時々会えた時、会えない時間を取り戻す様に深雪は茉莉に甘えた。片想いの時期があったおかげで、改めて両想いになったという安心感が深雪にはあった。
春休みも終わり、新学年になる。
深雪たちの行っている高校は、2年から3年へ上がる時のクラス替えが無い。
しかし3年になると受験の影響のせいか、同じメンバーなのに教室の雰囲気はかなり違ってくる。
深雪にとっては、4月にクラスメート女子・加納に、放課後、茉莉とのキスを目撃された事件があったぐらいで、他には特に変わった事もなく、引き続き自分は勉強、茉莉は部活という感じで日々が過ぎて行っていた。
6月早々から、茉莉の方は高校での部活最後の大会があり、県大会決勝で茉莉と共に冬に大学の合宿に呼ばれていた他校の女子生徒の活躍で、惜しくも敗退してしまった。
つかさのソフトボールの現役生活は終わった。大学でも続けて行く茉莉は、引き続き時々部活には参加することにしていた。
習慣になっていた茉莉たちと深雪たちの4組でのランチも、部活が無くなった7月に入ってからも引き続き水曜日と金曜日は続けていた。
「2人で食わねえの?」
樹生たちに深雪はそう言われたが、深雪は学校で2人きりになってしまうと茉莉へキスしたい気持ちが抑えられなくなるので、今までどおり教室でみんなで昼食をとる事にしたのだ。
「茉莉、ヤバいんじゃない…」
つかさのその言葉に、順平がすぐに食いつく。
「ヤバイって、何が?」
つかさと茉莉と、総一郎と順平の4人は、3組で雑談をしていた。
深雪の提案で始まったランチだったが、それも半年以上続いているので、つかさたち3組のメンバーの仲もかなり親密になっていた。
「う〜ん、ホントにヤバイんだ」
本当に困った様子で、茉莉は言う。
「試験が」
「え〜、ヤバイのは俺もそうだって。茉莉もヤバイの?」
窓に持たれながら、順平は窓際のつかさの席にひざを乗せている。
「うん、かなり…」
茉莉は小声で言った。
「でも別にいいじゃん、茉莉は推薦で大学決まってるんだろ?」
総一郎が返す。自称169センチの茉莉と、自称170センチの総一郎だったが、茉莉の横に並ぶと、総一郎の方が少し小さく見えた。
お互いに微妙にサバを読んでいるのは明らかだ。
「決まってるけど、まず、…そ、卒業しないと…」
「うぇ〜?ってお前、そのレベルなの??」
順平でさえ引いて、思わず茉莉に向ける目がキツくなる。
「だって、全然勉強する暇とか無かったし…」
3年になり、周りが勉強をし出すと必然的に平均点が上がってくる。
そんな中、全く勉強をしていない茉莉はかなりまずい状態だった。
「なんか、3年になってから、試験のレベルも上がらない?」
「あー、上がったかもな。確かに」
総一郎が冷静に言う。
試験のレベルは上がっているのに、平均点も上がり、茉莉の方は逆に勉強をしていないので、キレイに反比例して彼女の成績はガタ落ちしていた。
「深雪に相談したら?あいつ結構賢いぜ」
順平はフフンと鼻で笑って、小さな優越感を覚える。
(やった!茉莉には負けてねえ…!)
茉莉の話を聞いて、勝手に勝った気になっていた。
試験が終わるまで、茉莉は部活には参加せずに、深雪に勉強を教えてもらう事になった。
そもそも、引退しているから部には行かなくてもよいのだが、茉莉の場合はスポーツ推薦で大学も決まっている以上、引き続きトレーニングは続けていかないといけない。
しかし今回の試験までは、勉強に集中するように顧問の先生からも釘を刺されてしまった。
(うわ、茉莉がオレの部屋にいるよ…)
真面目に勉強をしている茉莉を見て、深雪はニヤけてしまうのを抑えるのに必死だった。
(あー…、可愛い…)
茉莉は小さい座卓に向って、正座を崩した格好で黙々と問題を解いている。
部屋が狭いので、集中して勉強をしている間は、深雪は勉強机の方でイスに座って自分の勉強をした。
お互い壁の方を向いて、床と机で隣り合う感じの距離感。
茉莉は下を向いているので、深雪は上から茉莉の事をじっと見る事ができた。
(可愛いなあ…、それに、すげーいい匂いだし…)
3日間、ひたすら真面目に茉莉は深雪の部屋で勉強した。
キスは、帰り際にする程度。
2人きりで部屋にいる時にしてしまうと、深雪は自分が抑えられなくなる自信があった。
4日目の深雪の部屋。
その日は母親が遅く帰ってくるのを、深雪は知っていた。
今日の深雪はずっと落ち着かない。
数学の問題を終わらせ、深雪が細かいところを茉莉に教えた。
茉莉は単に勉強をする時間が無かっただけで、時間を取って説明をすればすぐに納得して次に進む事ができるぐらい賢かった。
「すごいじゃん、まつり。普通に受験勉強始めたら、結構すぐみんなに追いつけるんじゃね?」
「えー、無理だよ〜。試験が終わったらまたソフトボール始めるし」
茉莉は、シャーペンを自分のケースに戻す。
深雪の手元に置いてある、自分が誕生日にあげた黄色いシャーペンを見て、茉莉はちょっと笑顔になる。
問題の答え合わせをして、2人でベッドに背を向けて床に座っていた。
「ちょっと休憩しようか」
深雪は机に置いていた麦茶を飲んだ。
すぐ隣、肩の触れる位置に茉莉がいる。
お茶のコップを置いた右手を、左に座る茉莉の方へそのまま伸ばす。
「………」
深雪は茉莉にキスした。
もう何度目なのか分からないほど、キスをしていた。
茉莉のキスに、深雪は味を感じる。
実際は味なんか無いのだが、感じるのだ。
甘くなっていく彼女の香りと、それに合わせて脳のどこかから五感へと戻される不思議な感覚。それは舌に感じる感触であり、味覚にもなっていた。
(ああ……オレ、もう限界……)
茉莉と一緒にいる時、常に勃ってしまうのは仕方が無かった。
キスすると、それはいつも辛くなるほど固さを増してしまう。
茉莉にちょっとでもそれを触られたら、すぐに出してしまうんじゃないかと思う。
深雪は立ち上がり、ベッドに乗った。
「茉莉、こっち来て」
「えっ…」
ベッドで待つ深雪が空けるその空間を、茉莉は見る。
茉莉の視野に、自分の彼氏である深雪と、そのすぐ下にある自分を待つその空間。
(も、もしかして………)
促されるまま、茉莉はベッドへ上がる。
もう高校3年生だし、世間のカップルたちがどういう事をしているのかと言うのは、いかに奥手とは言え、さすがに茉莉も分かっていた。
しかし、分かっているのは単に知識としてだけで、実感を伴ってはいなかった。
(ううん、違う……)
深雪にキスされるたびに、くすぐったいような、逃げ出したいような、これまで感じた事の無い、体の感覚があった。
その感覚の奥にある物は、おそらくそれと繋がっている。
そして、今、自分はベッドの上、深雪のそば、この空間にいた。
この場所は、たぶんその感覚を受け留める受け皿だ。
「あっ……」
キスされると同時に、茉莉は深雪にゆっくり倒される。
背中に感じるベッドの感触と、自分のすぐ上にある深雪の気配。
(やっぱり、もしかして……)
そういう事を全く想像した事が無いわけではない、特に深雪と付き合ってからは、リアルに考えてしまう時もあった。
しかし、それはあくまで想像の世界で、現実は茉莉のイメージを大きく超えて、心臓が今にも飛び出しそうな程波打っていた。
深雪の息の熱さを、茉莉は感じる。
舌が深く入って来て、苦しい。
絡まる舌の温度が高過ぎて、飲み込んだ喉の奥から体の中へ、そして全身へと熱い何かが巡る。
深雪は深すぎるキスをしている事に気付き、顔の横で震える茉莉の手を、そっと握った。
唇を離すと再び、茉莉にキスする。
ゆっくりと、できる限りの柔らかさで。
深雪もまた緊張していた。
しかし自分の唇に触れる茉莉の感触に、もう自分を抑える事はできないと思った。
そうでなければ、どうにかなってしまいそうだ。
キスしながら、茉莉の制服のボタンを外す。
全部外してしまうと、唇を離さずに茉莉の胸へと手を入れた。
「!…」
一瞬茉莉がビクンとなる。
深雪の手の中に、茉莉の小ぶりな乳房の感触があった。
冷たいその体温に、自分の手がどれだけ熱くなっているかを深雪は知る。
「少し起きて…」
深雪は左手で茉莉の背中を支えると、制服を脱がせた。
そのままブラジャーも外す。
「や…、恥ずかしいっ……」
上半身裸になった茉莉は、思わず前を隠し、両手で自分の顔を覆った。
深雪は手を伸ばしてカーテンを引き、部屋を少し暗くする。
「うんっ……」
深雪が茉莉の耳元へキスすると、茉莉が声を出す。
聞いた事のないその甘い響きに、深雪の興奮がもっと高まってしまう。
耳から首へ、そして鎖骨へ。
そのまま手の中にある、乳房へと深雪の唇が移動する。
茉莉は抵抗しなかった。
心の準備は全くできていなかったが、深雪を拒むという選択肢は全く無かった。
むしろ求められて、本能的な喜びさえ感じていた。
(好き…みゆきくん、好き…)
ドキドキしている茉莉の、その胸の先端へ、深雪の唇が触れる。
(ああっ……)
信じられなかった。
いつもそばにいてくれる、優しい深雪のその唇が、今自分の乳首を包んでいる。
「あっ…、やんっ……」
声が出てしまう。今自分に起きている事全てが信じられなくて、茉莉は首を振る。
「まつり…」
「みゆきくん…」
茉莉が薄く目を開けると、目の前の深雪も上半身裸だった。
お互いの生の肩が、裸という事を強く意識させる。
抱きしめられて胸が重なると、本当に裸なんだと実感してしまう。
(うわ……、なんかどうしようっ…)
ドキドキし過ぎて、壊れてしまうんじゃないかと茉莉は思う。
「オレね…」
深雪の切なそうなその声に、茉莉の胸もギュっとなる。
「すごい好きなんだ、まつりの事…」
「みゆきくん…」
「オレ、震えてんの…」
絡めた指先、いつの間にか先程までの茉莉の震えは収まり、深雪の指が本当に震えているのが分かる。
「……」
肌で感じる深雪の感触に、彼の自分への想いを感じる。
茉莉の胸の中、奥の方がもっと熱くなる。
心臓が燃えて、飛び出して、散って、自分が自分でなくなりそうだ。
「抱くね…」
深雪は茉莉の耳元でそう言った。
深雪自身が、夢中で、自分で何をしたらいいのか一瞬分からなくなる。
ただ茉莉の香りを感じて、茉莉の肌を触った。
茉莉の体を触る手が、下へと広がり、深雪は茉莉のスカートも下着も脱がせた。
そこへ触れると、深雪が想像した以上に、その場所は濡れていた。
「あっ!…うあっ!!」
亀裂に沿って指を動かしただけで、茉莉は体をひねって避ける。
「ごめん、痛かった?」
深雪は、茉莉に触れる手を、そんなに強くは動かしていなかった。
濡れているその場所から、上の方へと、ただ指を滑らせただけだ。
茉莉は眉間に皺を寄せて、言う。
「大丈夫、痛くないけど…」
(初めてだからかな)
深雪はそう思って、再び茉莉のそこへ指を伸ばす。
「あっ!あっ、やっ、…ダメっ…」
茉莉の体が跳ねる。
「強すぎちゃう?痛い?」
「痛くないけど、…なんか…」
「?」
「なんか、ビクッとしちゃう…」
「そっか…」
女の子のこんな反応は初めてで、深雪も戸惑ってしまう。
茉莉は全裸の自分が恥ずかしくて、その上恥ずかしいその部分を深雪に触られているこの状況全てがすでにイッパイイッパイだった。
「ゆっくり触ってみるね」
深雪は、やっと触れるぐらいの柔らかさで、茉莉の亀裂の間に触れる。
そしてそっと指を動かしてクリトリスのあたりを触った。
「あぁ…、はぁっ…」
体を小刻みに震わせて、茉莉の口から吐息が漏れる。
力を入れないようにして、深雪はその部分を何度も撫でる。
「あ……んっ…んっ…」
きつく目を閉じた茉莉の表情は、痛いとか苦しいとか、そういうものではなかった。
(もしかして、感じてる…?)
指先を下へと移動させると、先程よりも明らかに濡れていた。
力を入れ過ぎないように、深雪は茉莉の亀裂に少し指を埋めた。
その上の方、小さく膨らんだその部分を、さらに細かい動きで撫でる。
「あ……、あ…あっ…あっ…」
茉莉の体が動く。
茉莉の手が、深雪の左肩を掴む。
既に深雪の体は猛烈に興奮していたが、今は茉莉への愛撫へと集中した。
茉莉の反応に、深雪は早く彼女へ入りたくてたまらなくなる。
(すごい敏感なんだ…)
ほんの少し触れているだけなのに、茉莉はもう息を切らしている。
(可愛すぎるだろ…)
我慢できなくなり、深雪は茉莉へとゆっくりと指を入れて行く。
「痛くない…?」
「だいじょ、ぶ…」
深雪の肩を握る茉莉の手に、さらに力が入る。
(中、すごい濡れてる…)
深雪は茉莉の中を探る。
茉莉の中は、深雪の中指をギュっと締めてくる。
(ああ、ここに……入りたい…)
深雪ももう限界だった。
制服のズボンを脱ぎ、下着も取る。
いつ何があってもいいように用意していた、ベッドの脇に隠しているゴムを出して、装着した。
(やっとこれを使う日が来たぜ…)
ベッドで裸の状態で横たわる茉莉の姿を見て、これが現実である事に深雪はホっとする。
深雪は茉莉の足を開かせる。
「えっ……」
(こんなに、足、開くの…?)
茉莉は驚いて、思わず目を開けた。
全裸の自分の足が開かれて、その間に全裸の彼がいる。
(恥ずかしい…!!)
本当にエッチしちゃうんだと、今更ながらに茉莉は思う。
もう止められないし、正直少し怖い。
そしてそれ以上に、自分ではほとんど意識した事の無かった自分の体が、思っていたよりずっと女だった事、そして深雪が自分とは全く違う男の体だった事に戸惑ってしまう。
茉莉のひざを左手で押さえ、右手は自分のものを持ち茉莉のそこへ当てた。濡らすために、亀裂に沿ってそれを上下に動かす。
「あっ、ああんっ!」
茉莉がビクンと体を揺らす。
(クリ、すげー敏感なんだな…)
深雪はさらに自分のもので茉莉のそこを弾いた。
「やっ…、あっ…」
(ああ、もう、可愛すぎ…たまんねー…)
茉莉の入り口に、深雪は自分の先を付ける。
そこを右手で支えながら、腰で体重を茉莉へかけた。
「あっ……ああんっ!!」
先が入る。
茉莉は苦しそうに、体を引き上げて深雪から逃れようとする。
深雪の目に映るそんな茉莉の姿でさえ、深雪の興奮を高めてしまう。
(まつりと……)
少し入った自分のものと、それを受け入れている茉莉のそこ、繋がったその部分を見てしまうと、深雪は何も考えられなくなってくる。
(ああ…まつり…!)
深雪は茉莉に覆いかぶさると、ギュっと彼女を抱いた。
ゆっくりしようとか、優しくしようとか、そんな風に考えていたのに、それも一瞬で飛んだ。
(ああ、まつりの中に、やっと……)
濡れて熱い感触が、深雪のその部分を包む。
擦れるたびに、経験した事のないような快感が、腰から首へ、脳へと抜ける。
「うっ…、はあっ…、はぁっ…あっ…」
声が出てしまう。
深雪の理性は完全に消えた。
「ああん……、あっ…、ああんっ!」
茉莉も自分に何が起きているのか、分からなくなっていた。
(痛い……痛いけど…)
その痛みが、深雪が入ってきた事によるものだという実感は無かった。
ただ抱きしめられて、ただ痛かった。
深雪にキスされる。
痛みで声をあげてしまいそうな口を、彼に塞がれる。
(みゆきくん…みゆきくん…)
茉莉は腕を彼の背中へ回し、深雪の肩をギュっと掴んだ。
「あっ…、うああんっ…」
目を開けられなかった。茉莉は深雪のキスを受け留めるのが精一杯だった。
(いっぱい出た……)
コンドームを取って、深雪は思う。
それに付いている血を見て、茉莉の痛みを想像すると本当に悪い事をしてしまった気になる。
「…痛かったよね…」
深雪はタオルケットをかけて横になっている茉莉の隣へ行く。
「うん、痛かった…。すごい血が出ててビックリしちゃった」
「マジ?大丈夫?」
「このままだと布団汚しちゃうから、着替えるね。ちょっとだけ外で待っててもらってもいい?」
「うん」
深雪はTシャツを着て、部屋着になると、茉莉に呼ばれるまで廊下で待った。
深雪が部屋に戻ると、茉莉はもう制服をキチンと着ていて、ベッドに腰掛けていた。
「タオル敷いててくれたんだね」
「ああ、うん…」
する気満々だったのがバレて、深雪は思わず目をそらしてしまう。
そのまま茉莉の横へ座った。
「なんか……、ごめんな、」
深雪は言った。
「勉強しに来たのに、襲っちゃったりして」
「うん、襲われちゃった!」
そう答える茉莉の声は明るく、いつもの爽やかな彼女だった。
「でも何か、すごく嬉しいんだ…」
茉莉はそう言って、深雪の肩にもたれかかる。
「ホントに?無理してないか?」
深雪は茉莉からそう言われるとは全く思っていなかったので、逆に気を遣われたんじゃないかと思う。
「ううん…。嬉しい…。何か、ホントに嬉しかったよ…みゆきくん、優しかったし…」
そこまで言うと、茉莉は真っ赤になる。
そんな彼女を見て、深雪はキュンとしてしまう。
「そう言ってくれるのが、今オレ最高に嬉しい…マジでヤバイくらい」
茉莉が可愛すぎて、深雪は涙が出そうになった。
(やばい…オレ、抱く前よりもっと好きになってる…)
「しないから、…抱きしめていい?」
深雪は座っている茉莉を抱きしめると、そのまま先程繋がったベッドへと茉莉を押し倒した。
ベッドの上で服のまま、ゴロゴロとただ抱き合って、何度もキスをした。
(みゆきくんとデートすると…)
この部屋へ来て、今日、何回キスをしたのだろう。
今までのデートの中でも、今日は最高回数になったと思う。
(次の日、唇、カサカサになっちゃうんだよね)
そんな事ですら、茉莉は嬉しかった。
カサカサの唇で、昨日した深雪のキスを思い出せるからだ。
「みゆきくん……」
そう言って深雪を見つめる茉莉の表情は、今までのどんな瞬間よりも色っぽかった。
(今までだって可愛いのに…)
深雪は茉莉の頬を触る。
(もっと可愛くなりそうで、ヤバイ…)
「好きだよ…マジで…大好き、まつり」
「うん、私も大好き……あっ」
茉莉が深雪の肩を見て、固まる。
「何?」
「ここ、赤くなってる」
茉莉は指を指した。
はだけたTシャツの深雪の左肩、手のひら大くらいの赤みがあった。
「ああ、これ…」
深雪は茉莉が握ったものだと説明した。
「うそ、やだ……も〜…」
自分の右手の握力が、男子並みに強い事を茉莉は思い出す。
「ごめんね、こんなになるなんて、…痛かったでしょ?」
Tシャツの肩の隙間から、茉莉は深雪の赤くなった肩をそっと撫でる。
「ううん、まつりの痛みと比べたら、何でもないよ」
深雪も茉莉の髪を撫でた。
「う〜、でもゴメン…あたし怪力なのに…どうしよう、アザになっちゃったら」
「いいよ、幾らでも、まつりの跡、オレに残して」
深雪は笑うと、茉莉を自分の上の乗せて、ギュっと抱きしめた。
2016/6/23