ラブで抱きしめよう
ぼくらのキスは眼鏡があたる

まさに新学期

   
走って教室に入ったら、授業開始5分前だった。
思ってたよりも余裕があった。
(くそ、歩いてきたら良かった……)
教室に着いて時計を見て、まず思ったのはそれだ。
今朝、新学期だっていうのに、絶対間に合わないだろって時間に目が覚めてしまった。
走ったせいで、汗ダクになってた。
大慌てで出てきたから、髪もグシャグシャだ。
ボクは自分の席へ向かう。

「おはよう…」
あーもう、すげー可愛いその声にボクは全身で反応する。
「おはよっ!!」
そう答えながら、ボクは自分の席に座った。

そうなんだよな。
隣の席には、ボクの彼女、“森川さん”がいる。
朝から鼻息が荒くなる。

そもそも昨晩、明日から学校だと思ったら妙に興奮して眠れなかったんだった。
小学生の遠足前か、と思うけど、実際ホントに寝られなかった。
…隣を見る。
雛乃と目があって、彼女も笑い返してくれる。
(うー…これこれ、…これが学校でやりたかった…!)
ボクはすごい笑顔になりそうなところを、グっとこらえる。

「今日、来ないかと思ったよ…」
雛乃が小さい声で遠慮がちにボクに言った。
「いや…まじで遅刻するかと思った、…ヤバかったよ。初日なのに」
ボクはホントに焦って家を出てて、改めて今、自分の服装を見直した。
一応変なところはなさそうだ。とりあえずほっとする。
「良かった、間に合ったね」
ボクを見て笑顔を向けてくれる彼女。
(くー……たまらん…)

さすがに新学期、教師は時間どおりに教室に入ってきた。
ずっと彼女を見てるわけにもいかず、ボクは仕方なく前を向いた。
席が前すぎて、正面を見ると黒板の端を見てしまう。
ボクは少し横を向いて、教師を見るふりをして視野に入った雛乃の気配を感じることにした。
(制服、なんだよな…)
当たり前なんだけど。
――― 夏休み、毎日のように会ってた。
だから久しぶりに見る雛乃の制服姿が、恥ずかしくも ありきたりな表現をすれば、『輝いて』見えた。
…休みの間、本当に幸せだった。
だけどこうして学校で彼女に会えるっていうのも、また違った幸せを感じる。
ちょっと、他人行儀な感じ。
だけど1学期のときとは明らかに違うボクたちの関係。

「海都」
「おー稜二」
夏休みは毎日 雛乃と一緒にいても、稜二とは家が近いから時々会ってた。
「帰り、みんなで久々に行くべーって言ってるんだけど、お前行ける?」
「あー…んー…」
ボクはちょっと考える。
昨日も一緒にいたけど、やっぱり今日の彼女とも一緒にいたい。
それに今日はなんって言っても久しぶりの制服姿だし。
「今日は、やめとく……」
「そうか」
稜二の視線の先には、雛乃がいた。

「ちょっと可愛くなったな、森川」
稜二らしくない突っ込みに、ボクは驚く。
「そう思う?」
「ああ……、なんとなく雰囲気がな。…実は前から思ってたけど、モエ度アップしたって感じ」
そう言ってボクをいやらしい目で見る。
「なんだよ、モエ度って」
いや分かるんだけど。確かに彼女は萌え系だ。
「海で会ったときも、森川、すごい浮いてた」
「…そうかな」
ボクは何て捉えていいのか分からずに曖昧に頷いた。
「なんか…あの子って、男のツボに入ってくるタイプじゃね?
ぶっちゃけ私服見てビックリしたぜー、かなり可愛かった」
稜二の言い方には、悪い意味は含まれてないみたいだった。
「マジでそう思ってんのかよ」
ボクは言った。
「新学期に入ったら、ライバル出現したりして」
稜二がニヤついてボクを見る。
こいつが彼女に手を出すところを想像して、一瞬本気でイヤになる。
「…お前、やめろよ……」
ボクはちょっとヤツを睨んだ。
「オレー?オレは玲衣一筋だから」
そう言うと稜二は他の仲間の方へ行ってしまった。

「よく言うよ……」
ボクは稜二の普段の行動を思い出して、思わずつぶやいた。


授業のない始業の日。勿論普段よりも早く学校が終わる。
「うち、寄れる?」
「うん、大丈夫」
ボクらはボクの家まで手をつないで歩いた。
途中のコンビニで飲み物を買っていく。

「学校、始まったなあ」
ボクは自分の勉強机の付属イスに座った。
「そうだね…夏休み、早かったね…」
雛乃はベッドに腰掛けてる。
夏の間、毎日のように抱き合ったベッド。
昨日も裸の雛乃がここにいた。
今日は、制服姿で座ってる。
眼鏡で、髪を耳の両脇で二つに縛っている。

(…………)

雛乃とそうなってから、ボクは自分がおかしくなったんじゃないかと思うぐらい彼女を見ると欲情してしまう。
自分ではそれを全然止めることができなかった。
軽く、病気なんじゃないかと思ったりする。

「なんか、学校で会うと恥ずかしくない?」
足でイスを回しながら、ボクは言った。
「うん、……なんだかすごく恥ずかしいね」
雛乃はそう言って上目遣いでボクを見てくる。
ボクの方が位置的に上にいるから、雛乃の目線はどうしても上目になる。
それが余計に可愛く見えてしまう。
「制服の雛乃、すごい新鮮」
ボクはちょっと笑って、イスから降りた。
「…海都の制服だって、新鮮だよ」
そう言って恥ずかしそうに笑う雛乃。
(うー……可愛い……)
この真面目そうな容姿が、一層ボクの下心をそそる。

ベッドに腰掛けてる雛乃の前に、ボクは床に膝をついて向かい合った。

「………」
「…」

キスする。
軽く合わさった唇が、角度を変えるたびに少しずつ深くなっていく。
「……ん…」
唇が離れた一瞬、雛乃の口から吐息が漏れる。
それが色っぽくて、ボクはまたすぐに彼女の唇を塞いだ。
鼻筋に当たる固い感触、……ボクらのキスは眼鏡があたる。
ボクはその硬質なフレームを、彼女から外す瞬間が好きだ。
でも今日はこのままでいたい。

「雛乃」
ボクはキスを止めて、体を離して彼女を見た。
キスした後の彼女の表情は、ボクの欲情を2倍にも3倍にも膨れ上がらせる。
彼女は一体どこまでボクの気持ちを高ぶらせてしまうんだろうか。

ボクは彼女の制服のシャツのボタンを外していく。
胸の下まで外したところで、シャツの前を開く。
薄いピンク色のブラが現れる。
「……」
雛乃が少し顔を背けた。
体をベッドに預けようと、体重が移動しかかる。
「そのまま、座ったままでいて」
ボクは言った。
「………」
ずらしかけていた腕を、雛乃はもう一度伸ばして姿勢を直した。
ボクは彼女のシャツの中から手を入れて、ブラのホックを外す。
緩んだブラジャーを、雛乃の胸が見えるようにずらし上げる。
「………」
雛乃は下を向く。
眼鏡が少しずれる。
ボクは彼女の乳房が完全に見えるぐらいにシャツを開いて、そして触れた。
「……海都…」
小さな声で彼女がつぶやく。
「うん……」
ボクも頷いたけど、ボクの両手の中には彼女の乳房があった。

「はぁ……」
雛乃の歪む顔。
普段の彼女はどう見ても優等生なのに、ボクだけに見せるその官能の表情。
この顔も、すごく好きだった。
彼女の柔らかい乳房を、体を起こしたままの形で触るのも良かった。
乳首が固くなってくるのが分かる。
ボクは顔を埋めて、その先を口に入れた。
「ああんっ…ん、あぁっ…」
倒れこみそうになる彼女の背中を、ボクは抑える。
舌先を雛乃の乳首にあてたまま、ボクは言った。
「寝ないで」
「……あぁ、…だって…」
雛乃は再び腕に力を入れて、自分で体を起こす。
ボクは彼女の乳房を口に含み、乳首の先端を舌でなぞる。
「あぁんっ……海都っ…」

雛乃は体重をボクにかけてきて、両手でボクの肩を掴んだ。
ボクは右手を移動させて、彼女のスカートの中に手を入れる。

「やぁっ……あんっ…」

雛乃のショーツを横からずらして、ボクは指で彼女のその部分に触れた。
彼女はいつもすごく濡れていて、今日も既にそこはヌルヌルだった。
(かわいい……)
その潤った感触が、またボクの芯を熱くさせる。
早くしたくてたまらなかった。
(………)
ボクは彼女にキスして、そしてその場所に指を入れた。
「んん……」
唇を塞がれてくぐもった声の雛乃。
ボクはさらに深く指を進める。
ボクの肩を掴む雛乃の手に力が入る。

「ああっ、あぁんっ、は、…あぁっ…」

雛乃とこうなってみて知ったんだけど、彼女はかなり感じ易い子だった。
それを雛乃は恥ずかしがってたけど、そんなとこも余計にボクを燃えさせるだけだった。
可愛いところが、彼女にはたくさんある。

雛乃のことを知れば知るほど、ボクは彼女に夢中になってしまう。

ボクは左手で、彼女のスカートをショーツが見えるところまで捲り上げた。
体を少し離して雛乃を見ると、すごくいやらしかった。
「はぁっ、…あぁっ……あぁっ…」
眼鏡をして髪を二つに束ねて、制服を着たままの『優等生の森川さん』なのに、
開いたシャツからは乳房が丸見えで、そしてショーツの脇からボクに指を入れられてる。
「んっ、…あぁんっ……はぁっ、…あ、あっ…」
雛乃の口からはひっきりなしに小さく声が漏れてた。
(エッチだなぁ……)
心の底から思ってしまう。
ボクがスケベなのは勿論だけど、森川さんのエッチさが、もう本当にすごいエッチだ。
“前から思ってたけど、モエ度アップ…”
こんなときに昼間の稜二の言葉を思い出した。
(確かに…萌え度はすごい…)
ボクの右手の中指は全部彼女に入った状態だというのに、そんなことを考えてしまった。
熱く、すごく濡れた雛乃の中……。
おまけにそこは、一本しか入っていないボクの指をギュウギュウ締めてくる。
ボクは彼女のもっと奥、上の方を擦った。
「あぁんっ!、…あ、あぁっ…!」
彼女がボクの指に合わせて体を震わせる。
(もうダメだ……)
ボクは彼女のショーツを取った。


「う、あぁぁぁんっ!」

ギュっと雛乃がボクに抱きついてくる。
雛乃をベッドの縁に座らせたまま、足を開かせてボクは彼女に入っていった。
ボクが動くと、彼女はさらにボクにしがみついてくる。
「あっ…、ダメっ…海都…あぁっ…」
完全にずれてしまった雛乃の眼鏡を、ボクは外してやる。
「ダメ…?…どっか痛い…?」
半分本気で心配して、ボクは言った。
雛乃は首を振った。
「ううん……。あ、…あんっ…だ、…ダメじゃ、ないっ…」
ちょっとだけ目を開けた雛乃と目が合う。
(もうすげー可愛すぎ!)
ボクは更にしっかりと、彼女に自分を入れ込む。

「きゃっ…あっ、あっ、やぁんっ…」

ボクは思うがまま彼女を揺さぶった。
雛乃はいわゆる“上つき”ってタイプだった。
だからこういう態勢で、やりやすい。
ボクは下を見た。雛乃とつながっている部分が少し見えた。
エッチしてるとき、いつも目をつぶっている雛乃。
ボクは動きを緩めた。

「雛乃」
「あ……うぅん…」
雛乃は眉間に皺をよせて、完全に官能の顔だった。
その顔がまたすごいエロいってボクは思う。
「見て」
「………」
雛乃は薄目をあけてボクを見た。
その顔は一瞬前のエロさを超えた。
「こっちも」
ボクは雛乃の頭を後ろから軽く押して、下を向くように促した。
「見て」
ボクは言った。

「あっ…やだっ…」
雛乃が真っ赤になって、声をあげる。
ボクは少し腰を引いて、彼女の中から自分のそれを抜けないぐらいギリギリのところまで出した。
雛乃から溢れてたものが、ボクのものを汚していた。
ボクはまたゆっくりと彼女に入っていく。

「やぁっ……海都…やっ…」
雛乃はすぐに目を閉じて、ボクにしがみついてきた。
「…雛乃……」
ボクももうすごく興奮していて、ガマンの限界にきてた。
「あっ、…あっ…あ、あ、あっ…!」
雛乃の出す声が小刻みになる。
ボクは夢中だった。


「……はぁ、…はぁ…」
雛乃はベッドに倒れこんでいた。
まだ目を閉じたままだった。
その間にボクは色々後始末をして、Tシャツに着替えて雛乃の横に座った。
「……」
ボクは黙って彼女の髪を撫でた。
ちょっと乱れてしまっている。
制服でグッタリしている雛乃はすごく色っぽい。
「……エッチだなぁ…」
ボクは思わず声に出してしまう。
「……それは海都の方……」
雛乃がやっと目を開けて言った。
体をボクの方へ向ける。
彼女の表情は、まだぼんやりしていた。

「もう……」
そう言ってボクの手に触れる雛乃。
ボクは彼女に向かって笑顔になる。雛乃もボクにつられるようにして笑ってくれた。
「…なんだか、すごく感じちゃった……」
ポソっと雛乃が言った。
彼女のこういう風に素直なところ、ボクは大好きだ。

ボクも寝転がって、彼女を抱きしめた。

「なんだか、自分がこわいよ……海都…」
雛乃はボクにしがみついて言う。
「ボクもこわいよ」
ボクは体を起こして、両手で雛乃の頬を挟んだ。

「…学校で襲っちゃうんじゃないかって」


「もぅ……」
何か言いかけた雛乃を無視して、ボクはすぐに唇を塞いだ。
 

 
 
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