ぼくらのキスは眼鏡があたる

13 16歳のボク

   

眠れなかった。

今日、自分の聞いた彼女の言葉が信じられなくて、何度も聞き間違いじゃないかと思った。
(…………)
今度って、…明日会う約束してたよな。
じゃあさ、明日…ってことなのか?

先日行ったプールでの雛乃の姿は、ボクの想像を遥かに超えていた。
真っ白い体に、オレンジ色のビキニ。
後姿のうなじとか、初めてじっと見たおへそとか、…ただでさえ普段から悶々としているボクにとっては全てが眩しくて、正直隣にいるだけでもかなり辛かった。
何で『彼女』なのに触れないんだろうって、そればっかり考えて、そして触れたくて仕方がなかった。
こうしてベッドで目を閉じていても、その姿は鮮やかに思い出されてくる。
学校での大人しそうな森川さん。
だけど二人きりの雛乃は、充分に魅力的な女の子だ。
気のせいじゃないと思うけど、確実に以前よりも可愛くなってると思う。

『あのね、今度……エッチする…』

(………)
あの雛乃の口から、そんな言葉が出てくるなんて全く考えもしてなかった。
ボクは寝返りを打った。
とにかく眠ろう。
明日、とにかく明日だ。

眠れない長い夜だった。


「おはよー」
待ち合わせをしてたのは10時だったのに、二人とも早く来てしまった。
ボクは平静を保ってるつもりで、彼女に笑顔を向ける。
「おはよう、海都…」
昨日見た雛乃は髪の毛を結っていなくて、真直ぐでサラサラのスタイルだった。
今日の彼女も、そうだった。
相変わらず銀縁の眼鏡をしてたけど、柔らかそうなロングスカートをはいたそのファッションと何となく合っていて違和感はなかった。
というか、ボクはそれどころじゃなかった。
彼女と視線が合っただけで、心臓がバクバクしてくる。
自分の全て、皮膚という薄皮を隔てた中身が全部下心になってるんじゃないかと思う。
そんな自分は認めたくなかったけど、だけどそうなんだからどうしょうもない。

他のことが全く考えられない ―――

しばらくどうしていいか分からずに立ち止まったまま、彼女もバツが悪そうにしていた。
ボクは意を決する。
結局、今日何もできなくても……ボクが猛烈に雛乃を抱きたくてそればっかり考えてしまうっていう欲望は絶対消せないと思った。
「あのさー…雛乃…」
「…」
雛乃が顔を上げる。
「き、…昨日言ったことってさ……」
『あれは冗談だよ』なんて言われたら、多分ボクは死ぬほど凹んだと思う。
だけど彼女はマジメな女の子で、あんまり軽々しい発言はしない。
「うん」
雛乃が普通に頷く。
その響きはどこか毅然としていた。
ボクらはお互いに何が言いたいのか充分に分かっていた。
(ホントに、…ホントに?)
これ以上言葉が見付からなくて、ボクは雛乃の手を引いて歩き出した。


後ろ手に閉めたドアの重さが、現実の世界からボクらを切り離した。

「………」

ここは女の子ウケがいいと仲間の間でも折り紙つきのホテル。
あんまり評判が良かったから、雛乃を好きになるだいぶ前、適当な関係の女の子とボクも来たことがあった。
部屋の間取りはゆったりしていて、全体が濃いウッド調でまとめられていた。
ベッドの周りもお上品で、普通に高級ホテルとして通用するんじゃないかと思うぐらいだ。普通のホテルと大きく違うのは、木目のドアの向こうには必要以上に大きなバスルームがあるってこと、それとテレビがやたらにデカい。

部屋に入って、雛乃はキョロキョロしている。
ボクはそんな後姿を見ているだけでたまらなくなる。
ラブホテルで二人きりなんて、こうしていてもまだ信じられない。

「………」

ボクは後ろから雛乃を抱きしめた。
彼女の体が固くなる。
緊張しているのが伝わってくる。
だけどもしかするとボクの緊張は彼女以上かもしれない。
雛乃の髪の匂いに、ボクはクラクラしてくる。

しばらくギュっとして、そしてボクは向き合ってまた雛乃を抱きしめた。
「あのさー…」
雛乃の頭を自分の肩に押し付けるように撫でながら、ボクは言った。
「…ホントに、いいのかなぁ……」
「……」
ボクの両肩に手を当てていた彼女が、ゆっくりと顔を上げた。
雛乃は真っ赤で、ボクを上目で見た。
何か言いたそうに開きかけた唇に、ボクは自分の唇を押し付けた。


ベッドの上。
ボクは雛乃に夢中でキスしていた。
こんな風に我を忘れるぐらい、キスしたことって今までにない。

顔をずらしたボクの鼻に、彼女の眼鏡が当たる。
ボクは手を伸ばして、それを外した。
化粧気のほとんどない雛乃の素顔。
ベッドの上に散る彼女の髪でさえ、ボクを誘っているような気がしてくる。

「雛乃……」

ずっと目を閉じたままの雛乃の服を、ボクは脱がした。
「………」
水色の下着姿になった彼女の真っ白い体を見て、ボクは目眩がしそうになる。
ボクは彼女の体に手を伸ばした。
まるで触れてはいけないものに手をつけようとしているような気がして、ここまできて躊躇してしまう。
改めて自分のヘタレさに気付く。

雛乃は、全てがキレイすぎた。

初々しさがボクの頭の中で突き抜けて、神々しささえ感じた。
固く目を閉じて横を向く彼女の背中に、ボクはゆっくりと手を廻した。
「………」
ブラのホックを外すと、ボクはそっと雛乃の腕からそれを抜いた。
「…はぁ……」
ボクは思わずため息が出た。
白い体。
白い胸。
そしてその先にある優しい色の乳首。
前に雛乃に触ったとき、ボクはまったく彼女の姿を見ていない。
服を着ているときよりも、実際の雛乃は少し胸が大きい。
それでも巨乳とかそんなんじゃなくて、乳房さえ雛乃の美しさのバランスを保ってるみたいだ。
「………」

ボクは触れた。

「……っ…」
雛乃の体が少し動く。
ボクはゆっくりと彼女の両方の乳房を動かした。
「………」
キスをする。
両手に柔らかな彼女のぬくもりを感じながら、舌で雛乃の唇の柔らかさも確かめる。
素晴らしい女の子だ、と、ボクは改めて思う。
今までの経験なんて、一体何の意味があったんだろう。
無意味だったとは思わないけれど、雛乃の前では全てが色褪せる。

薄目を開けて雛乃を見ると、彼女は眉間に皺を寄せていた。
「はぁっ……」
唇が離れると雛乃からため息が漏れる。
ボクは彼女の両方の胸の先を指先で触った。
「……んんっ……」

ボクは雛乃の乳首に口をつけた。

「あぁっ」
雛乃は少し体をひねる。
彼女は自分の手を口にあてていた。
ボクは口の中で、雛乃の乳首を舌で転がす。
「…は、……はぁっ…」
かわいい声が頭の上で聞こえた。
雛乃の体が少し反る。
柔らかな感触に、ボクはたまらなくなる。
早くボクのものにしたい。

ボクは彼女のショーツも脱がした。
裸の雛乃。
真っ白な足の付け根に、ボクは手を伸ばす。
「………」
ボクはまた彼女の唇にキスした。
キスしながら、雛乃の薄い肉を指で割る。
既に彼女は充分に潤ってた。
それがボクの体を余計に熱くさせる。
指先に感じる固くなった小さな塊を、ボクは丁寧に撫でた。
「はぁっ、……あっ…」
雛乃が小さな声を出す。
唇を噛み締めている。
「大丈夫だから…」
ボクは言った。
「声、……出しても…誰も聞こえないし」

雛乃は薄目を開けてボクを見た。

その目つきがものすごく色っぽくて、ボクは一瞬射抜かれ、固まってしまう。
「海都……」
雛乃のかすれた声。
声も仕草も、表情も、体も……彼女の全てが愛しくてたまらない。

ボクは指先での愛撫を繰り返した。
「あぁ、…あっ、あっ……」
雛乃が体をよじる。
ボクは彼女の耳を噛んだ。
指先に雛乃の愛液が絡んで、ボクは興奮してますます彼女への愛撫を急いだ。
「あ、あぁっ、…んんんっ…」
ボクから逃れるように体を動かす雛乃。
それでもしっかりと彼女の濡れた肉に挟まれたボクの指は離れない。

(イかせられるかな……)
ボクは自ら激しく興奮しながらも、雛乃の反応を見ていた。
探るように、ボクは指先でその突起を撫で続けた。
「あっ!…イヤっ!……やぁぁっ!」
雛乃の体が唐突に大きく跳ねる。

「やぁぁっ……あんっ!!」

雛乃がボクの腕に手を伸ばした。
「ダメ……もう、ダメっ…」
ボクは彼女から手を離した。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
肩で大きく息をして、雛乃はぐったりとしていた。

「雛乃…」

ボクは彼女を抱きしめた。
裸の雛乃を抱きしめて初めて気付いたけど、ボクの方は全く服を脱いでいなかった。
ぐったりしている彼女の額にちょっとキスして、ボクも服を脱いだ。


「やんっ」
再び雛乃に触れると、ビクンと大きく震える。
ボクの指が触れた彼女のそこは、もうたっぷり過ぎるぐらいに濡れていた。
突起に指がかすめると、また彼女の体が震えた。
指を滑らすとすぐ下に、ボクが待ち望んだ雛乃のその部分がある。
こんなにもちゃんと濡れてるから、何とかなりそうだなとボクは思う。
ボクはキッチリと準備していた。
もう入っていくだけだ。

何か言葉をかけたほうが良かったのかも知れない。
だけど裸の彼女の足を割ってしまうと、ボクはもう何も考えられなかった。



「あっ、あぁぁあんっ!」


ボクは自分の先を、雛乃に少しだけ入れた。
彼女のそこはキツいけど滑らかで、初めてなのにボクを受け入れてくれているような気がした。
ボクはそのまま彼女に覆い被さり、抱きしめた。

「大丈夫……?」
小さな声でボクは言った。
「…ん……」
苦しそうな顔で頷く雛乃。
ボクの肩に、雛乃も腕を廻してくる。

「すっごい、好きだよ……」
心からボクは言った。
「うん、……私も…」
雛乃がギュっとボクに抱きついてくる。


――― なんて愛しいんだろう。

ボクも雛乃の体を強く抱きしめ返すと、深く彼女へと腰を沈めた。
「んんっ……あぁぁっ!」
雛乃がボクの肩を強く掴む。
しっかりと繋がったその場所。
雛乃の中はすごく狭くて痛いほどだったけど、彼女の痛みから比べればそれは小さなものだろうと思う。

ボクは動いた。
雛乃が痛いぐらいにボクの唇を吸う。
痛みさえ、ただひたすらにボクを興奮させる。

可愛くて可愛くて良くて、可愛くて可愛すぎて、良すぎて…

汗が流れる。
固く抱きしめあった上半身。
ボクは無我夢中なまま、彼女の中で果てた。


「はぁ、あぁ……」
体を離して、辛そうな彼女を見る。
「……うん…」
早々にボクは雛乃の中から自分を抜いた。
コンドームに血が付いて一緒に出てくる。
(痛そ……)
彼女にすっごく悪い事をしてしまったような気がした。
ボクはひととおり後始末をしてしまうと、雛乃の横へ寝転んだ。

「大丈夫……?」
ボクは彼女の髪を触った。
「うん……」
体をボクの方へ向けて、雛乃が目を開ける。
こうして素のままの彼女の顔、すっごく可愛いじゃんって改めて思う。
クラスのやつらとか、街を歩いてる男とか、…とにかく皆の目が節穴でホントに良かった。
目の前の雛乃。
小さいペットみたいにくるんとした可愛い目。
「……恥ずかしいね…」
そういって雛乃は照れながら笑った。

(可愛すぎる……)

ひととおりのことが終わった直後だっていうのに、ボクはまたドキドキしてくる。
「もう、やばいって……」
ボクは裸で、裸の雛乃をギュっと抱きしめた。

欲望の炎はそんなに簡単には鎮まらなかった。
(もーホントにヤバイって……)
16歳のボクは、すぐに復活してた。

 

ラブで抱きしめよう
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