意地悪な彼はホンモノじゃない

6 彼氏

   

(何が起きてるんだろう…)

自分の身に起きている事が、現実ではないような感覚。
夢の中のようにぼんやりして、体全部が変だった。

「うんっ…」

一瞬唇が離れたが、すぐにまた冬唯の息がかかる。
冬唯の舌がつばさの唇をなぞり、開かせる。
(ああ…)
口の中に、他人の舌が入って、動く。
熱いその温度。
「んぅ…」

(え!…あっ!ウソ…!!)
いつの間にか服の中に手が入っていて、胸を直に触られた。
つばさの体は強張るが、冬唯の深いキスが唇を離さない。
「んんっ…、ん…」
体に力が入らなかった。
(これ、現実…?)
彼のベッドの上で、胸を揉まれながらすごい勢いでキスされている。
(あ、やだ…こんな…)

冬唯が触れるところから、鋭い感覚がつばさの体に巡る。
服の中で、冬唯はつばさの乳首を指先で何度もなぞっていた。

「んん、…はあっ…」


お互いの息が上がってくる。
(ああ…)
何度も何度もキスをされ、その間もずっと胸を触られていた。
どのくらいの時間、そうされていたか分からない。
つばさの体からは、もうすっかり力が抜けていた。

薄目を開けると、体を少し起こした冬唯と目が合う。
こんな真剣な彼の顔を、今まで見た事が無い。
「冬唯くん……」
あまりにも現実感が無くて、名前を呼んだ。

「うん…」
冬唯は小さい声で返事をすると、つばさの首筋にキスを移す。

昨晩迷って選んだグリーンのスカートが、つばさの動きで乱れる。
冬唯は右手を伸ばしてその中を弄り、つばさのショーツに触れた。
つばさの体が跳ねる。
突然夢から覚めたように、彼に触られてぼんやりしていたつばさの意識がハッキリする。
「えっ…!?ちょ、ちょっと…冬唯くん?」
「…うん」
曖昧にうなずいて、冬唯はつばさの首を舐める。
そのまま耳を甘噛みした。

「え…、あっ!!」

冬唯の指がショーツの中に入り、直接つばさに触れた。
勿論そんな場所を触られた事の無いつばさは、驚きと恥ずかしさで、先程より大きく体が震えてしまう。
「や、…ウソ。そんなとこ…」
男女がする、その行為の事はもちろんつばさは分かっている。
しかしそれが自分の身に起こるなんて、想像すらした事が無い。
そもそも恋愛感情自体、これまで誰にも持った事が無いのだ。
そんな恋愛初心者の自分が、今、男の子に体を触られている。
(それも、あんなところを…)

「あっ!…あっ…ダメ、冬唯、くんっ…」

冬唯の指が、つばさのその部分を亀裂にそって滑る。
既に濡れていたが、つばさ自身はその事を自覚していなかった。
簡単に指を滑らせてしまう濡れたその狭間は、冬唯を興奮させる。

「はあっ…」
「冬唯く、…あっ…、うぅっ…」
冬唯はつばさのクリトリスを指先で器用に震わせる。
(ああ、やだっ、何これ…ダメ…声出ちゃう…)
グーに握りしめた手を、つばさは口に当てた。
それでも冬唯の指が動くたびに、声が漏れてしまう。
「うっ…、んんっ…やっ…」
(やだあ、恥ずかしい…)

「声、我慢しなくて平気だよ。聞かせてよ」
冬唯はつばさの耳元で言った。
耳元にかかる彼の息が熱い。
冬唯の開いている左手で、口元を押さえていたつばさの右手が外される。
先程よりも力を入れて、冬唯はその部分をさらに撫でた。
「あっ、あっ!…あ…」
ピリピリと体中に電気が走るような、未知のその感覚が怖くて、つばさは涙が出そうになる。
(や…、やだ…、これ…何…)
「ふぁっ…、あぁっ…」
ビクンと体が揺れた。
スイッチを操作されているように、冬唯の指の動きでつばさの体は反応してしまう。
「はぁっ…あ…あぁ…」
(自分の声じゃないみたい…、やだ…)

冬唯は指先を下へ滑らせ、くぼみに沿って彼女の入り口へそっと移動させていく。
そこはさらに濡れていて、吸い込むように彼の指を飲む。

「あぁ……!」
(何?…何?…この感じ…)
そこに感じる不思議な異物感。
つばさは冬唯に何をされているか、よく分からなかった。
冬唯の指はゆっくりとつばさへ入って行く。

「あー、もう、すごい可愛い…」
指を入れながら、冬唯はつばさの歪む表情を見ていた。
「や…、何…?何…?」
「指、だいぶ入ったよ。痛くない?」
(ええ…)
言われて初めて、彼の指がそこに入っている事を自覚する。
お腹の方に感じる違和感。
「痛い?大丈夫?」
冬唯は左手でつばさの髪を撫でる。
「あぁっ…」
お腹の中で、何かを動かされた感じがした。
痛くはなかった。
「い、痛くないけど…」
つばさは首を振る。

(指が、入ってるなんて…)

恥ずかしすぎて、つばさは固く目を閉じた。
冬唯を見る事ができない。
内臓に触れられているような生々しい感覚が、自分の内から起きているのが信じられなかった。
(このまま…もしかして…)
つばさがそう思っていた時だった。

「入れさせて…。ねえ、いい?」

冬唯の声に、つばさは目を開けた。
自分の上にいる冬唯は完全に男の顔をしていて、そしてその表情は、思わずつばさの首筋が震えてしまうぐらいに色っぽかった。
キレイな顔が、野生の動物のように見えた。
「オレの事…好き?」
つばさをしっかりと見つめ、冬唯は言った。
その声までもが、あまりにも色っぽい。
これ以上無理な位、ずっとドキドキしていたのに、つばさの胸は更に大きく波打つ。

(ああ、…冬唯くん……好き…)
彼が好きだと思っていた数時間前よりもずっと強く、もっと異性として彼を好きだと思った。
それは理屈じゃなかった。
ほとんど本能だった。

「……」
つばさは小さく頷いた。


(ああ……これ、ウソでしょう…)
冬唯が準備をしている数秒、時間がスローになったようにつばさは冷静な気持ちを取り戻していた。
(このまま、多分冬唯くんとしちゃうんだ…)
ショーツを脱がされて、下半身があらわになっているであろう自分の姿を想像すると、恥ずかしくてこの場から消えたくなる。
つばさは目を閉じていた。

(初体験……、もう、しちゃうんだ…)

膝に、冬唯の手がかかる。
冬唯の手に力が入って、足を開かれる。
(やだ……、ホントに恥ずかしい…)
顔から火が出そうだった。
意識せずに、自分の目を手で隠していた。

「あ……」
つばさの性器に、何かが当たる。
感触はよく分からなかったが、それが何なのかは勿論想像できる。
(しちゃうんだ…私…)

冬唯はつばさのそこに、自分のモノを上下に滑らせた。
開かせたつばさの足の間、その部分を見ながら下向きに体重をかけてその場所を探す。
濡れていても入口は小さくて、固い。
何度か往復させているうちに、ふっと入る瞬間があった。
冬唯はそこへ自らのモノを挿し込む。

「うあっ…!」

(やっ…、何っ…何っ…)

跳ねるつばさの足を押さえ、冬唯は少しずつつばさの中へ入って行く。
だがすぐに、内部で固い、まるで拒絶されるような感覚を感じた。
しかしつばさのそこへ入りかけている自分のモノを見ると、冬唯は理性が飛ぶ程興奮してしまう。
迷えなかった。
一気に体重をかける。

「ああっ!!いたぁいっ…!痛っ…!!」

今まで味わった事のない強い痛みが、つばさの体の内を貫く。
まさに、貫かれるという言葉どおりだった。
(痛…!ああっ……どうしよう…すごく痛いよ…)
痛みから逃れようと、つばさは体をよじった。
「上に逃げないで…。ごめん、つばさ…」
冬唯に押さえられ、さらに痛みが増してしまう。
「ああっ……、ああんっ…」
(すごい、痛い……こんなに痛いんだ…)
冬唯に抱きしめられていた事さえ、気付かなかった。
無意識に、彼の背中に手を回し、肩をギュっと掴んでいた。
2人とも上半身は、服を着たままだった。

「ごめん、辛いよな…。でも今止められない…ごめん…」
冬唯は深いところまで、完全につばさの中へ自分を押しこむ。
そして動いた。
「ああっ…、ああんっ、ああっ…」
痛すぎて、何をされているのかつばさは分からなかった。
ただ冬唯にしがみついた。
もう声を我慢する事など、考えられなかった。


終わった時、つばさの頬は涙でぐっしょりだった。
「…大丈夫…?」
つばさの涙を拭きながら、冬唯は困ったような顔でつばさをただ撫でた。
抜け殻みたいになったつばさは、冬唯にされるがまま、ぼーっとしていた。
「……大丈夫」
何とかそれだけ言った。
下半身には布団がかけられているが、スカートの下はまだ裸のままだ。

「なんか、ごめん。…すごい泣かせた」
冬唯は本当に申し訳なさそうな声を出した。
「だって痛かったから」
「うん…」
冬唯はつばさを抱きしめた。
つばさも冬唯に抱き寄せられるまま、顔を彼の胸に埋める。
服を着たままだったので、セックスをしたという実感は、つばさの中でそんなに湧かなかった。
それでも下半身に残る違和感と、頬がひりひりするくらい出た涙の跡が、その行為が現実だった事の証になっていた。


その日の冬唯は優しかった。
彼の部屋でお互いの家族の話や、冬唯の昔の写真などを見てゆっくり過ごした。
帰りも早い時間に、つばさの家まで送り届けてくれた。




一晩眠って目覚めると、昨日の事が信じられなかった。
「でも、酷い顔…」
あの時に沢山泣いたせいで、起きたつばさの目は腫れていた。
目の周りを冷やすと少しマシになる。
(冬唯くんにどんな顔して会えばいいんだろ…)
考えても、通学の時間はどんどん迫ってくる。


「おはよー!」
朝から元気な今日子が、つばさに声をかける。
「おはよう〜」
つばさはゆっくりと自分の席にカバンを置く。
「何よ、どうした?物憂げ〜」
「月曜から今日子のテンションが高過ぎ。あ、髪型変えてる!」
重いショートだった今日子の髪が、スッキリと短くなっていた。
「うん、だってもう6月になるじゃん。夏じゃん〜」
「顔が小さいから、ショート似合うよね。めちゃ可愛い!」
友人のイメチェンを見て、つばさの気が逸れる。

(そっか…、もう6月…、でもまだ6月なんだよね)
ゴールデンウィークには「彼氏が欲しい」と言っていたのに、6月になる前に、初体験まで終わってしまった。

(ああ…急展開過ぎて…)

先輩と付き合っていて、経験のある今日子に相談しようかとも思ったが、やはりそのお相手が同じクラスなのは気まずい。
「おはよ」
冬唯が登校してきて、いつも通りにつばさに声をかける。
一緒にいる今日子にも少し笑顔を見せて、彼は自分の席へ行った。

「相変わらず、キッラキラしてんなぁ〜」
今日子は冬唯に向けて、麗しい物を見るような視線を送る。
「で、冬唯くんとはその後どうよ?」
「えっ…」
友達に、本当は言いたい事、聞きたい事が沢山あった。
つばさは言葉を飲み込む。
「どうって…。まあ、まあ…だよ…」
話を適当に流し、つばさも自分の席へ戻った。


授業が始まると、昨日の事を思い出してしまう。
(冬唯くん…いい匂いしたなあ…)
何度も何度もしたキス。
つい、自分の唇を指で触ってしまった。
(冬唯くんの匂い…好きだなあ…)
キスをされて、沢山体を触られた。
そしてその先も。
その相手が、今、同じ教室にいて、斜め後ろを振り返ったら見えてしまう。
(……)
色々な事を想像してしまい、つばさはモヤモヤしてくる。
(なんか、冬唯くんエッチだったよなぁ…)
「はあ…」
思わず大きなため息をついた。



その日の放課後も、冬唯と一緒に帰った。
二人で歩くだけでも、昨日までよりもずっと恥ずかしかった。
普段は何気ない会話をしているのに、今日は何となく話も途切れがちだった。

「今日…体、大丈夫だった?」
電車を降りてつばさの家までの帰り道で、冬唯は言った。

「うん…なんかちょっとまだ血が出てるけど」
「そっか…、…痛い思いさせてゴメンな」
そういう冬唯の表情は、いつもより固い。
学校にいる時は友達も一緒にいたので普段どおりの彼だったが、つばさと二人でいる今の冬唯は、どこかぎこちなかった。
いつもスマートな彼とは違っている。

何となく不安になって、つばさは冬唯の手を反射的にキュっと握ってしまう。
それに気づいた冬唯が、つばさを見た。
つばさも彼を見上げる。

整った顔。そんな彼の美しい唇が、昨日自分の唇に何度も触れた。
触れたのは唇だけじゃなくて、冬唯の舌はつばさの口の中まで入っていた。

(入ったと言えば舌だけじゃなくて…)

また変な想像をして、冬唯と目を合わせたまま、つばさは真っ赤になってしまう。
慌てて目をそらして、下を向いた。
いつもの彼なら、そんなつばさに対して軽く突っ込んだり笑ったりする感じだった。
でも今日の彼は、つばさの反応に対して、特に何も示さない。

静かに二人で並んで歩いて、駅から遠くないつばさの家の近くまであっという間に来てしまう。
道路の角の自販機のところで女子中学生が話していて、時折つばさたちの方へ視線を向ける。

「じゃあ、また明日学校で」
「うん、明日ね」

去って行く冬唯の姿を、つばさは少しの間だが見送った。
先週、家まで送ってくれた時は毎回キスされていた。
それに慣れてしまったのか、何だかとても寂しい。

一昨日と今日では、明らかに二人の間に流れる空気感が違っていた。
先週は戸惑うぐらいラブラブな雰囲気で、どこかフワフワした感じがあった。
(でも今日は…)
つばさも恥ずかしくて、いつもどおりに全然話せなかった。
(冬唯くんはどうなんだろう…)
女の子に慣れていそうな彼が、つばさの様に恥ずかしいとか気まずいとか、そんな事はないだろうと思う。

(もしかして、何か変だったのかな…)

初めての交際、初めての彼。
何もかもが初めてで、つばさは自分に自信が全く無かった。
(明日…また会えるし…)
今日の冬唯だって、決して冷たいわけではなかった。
それどころか、歩きながらもつばさの事を気遣ってくれたのはよく分かった。
(早く、会いたいな…)

今、別れたばかりなのに、つばさは明日の事ばかり考えてしまった。
 

 
 

ラブで抱きしめよう
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