意地悪な彼はホンモノじゃない

22 課外授業

   

「今日、参考書見て帰ってもい?」
「うん」
立ち上がってカバンを取り、教室を出る。
そしてつばさは少し前を歩く冬唯について行く。
今ではこうしてほとんど毎日のように、つばさは冬唯と一緒に帰っていた。

「あ〜、もう寒いね。私もマフラーしてこようかな」
11月に入り、街の女子高生たちはもう冬のスタイルだ。
本屋に寄った後、2人は喫茶コーナーの端で軽くお茶していた。
「確かに急に寒くなってきたな。今週末、課外授業だよな、泊まりだっけ」
窓越しに見える人々は、皆すっかり冬の装いだった。
「あ〜、寒そう!行くのめんどいね。荷物の用意するのが超めんどいよ」
「環境について考える、だっけ…。結構ガッツリレポート書かされるんだよな」
「あ〜……」
つばさは本当に面倒そうに、嫌な顔をしてため息をつく。
しかし次の瞬間思い出したように、表情が明るくなる。

「ねえ、代休あるじゃん」
「あるね」
冬唯はスマホでカレンダーを見た。
「その日、テーマパーク行かない?平日だし、休みの日よりは空いてるよね」
「つばさ、行きたかったの?」
つばさはあまりそういう所に興味が無いと冬唯は思っていたので、その提案は意外だった。
「うん。漠然と、彼氏ができたら行ってみたいって思ってた。もしかして、冬唯くんはそういうとこ苦手?」
「ううん、いいよ、全然。つばさの行きたいとこだったらどこでも付き合うよ」
冬唯の口調は優しかった。
つばさを見る目も。

(なんか、優しくなったなあ……冬唯くん)

頻繁に一緒に過ごすようになってから、すごく彼に甘やかされているとつばさは思った。
それが嬉しくて、くすぐったい。
(私も、優しくしたいな……)
しかしそれをどう行動に移していいのか分からなくて、つばさはいつも冬唯に嬉しい気持ちをもらってばかりの様な気がした。



課外授業当日。
リサイクルセンターを見学した後、環境についてのレポートを翌日1日かけて書き、さらに夜に発表するという内容の、2泊の学習予定だ。
1日目の夜はまだゆったりしていて、生徒たちは修学旅行のような雰囲気だった。

「大浴場が思ったより良くて、ビックリしたね」
部屋に帰って、つばさ達はまったりしていた。
今日子と涼香と同じ3人部屋だったので、すごくリラックスできて、つばさはこの課外授業を思ったより楽しめていた。
「結構な人数泊まれるみたいだから、お風呂も広いのかもね。なんかラッキーだよね」
涼香は丁寧に髪の手入れをしている。
「ねえ、何つけてるの?オイル?ベタっとしない?」
つばさは興味津々で聞いた。
「私、髪が多いからちょうどいいけど〜。つばさも少量つけるぐらいだったら大丈夫じゃない?」
「ホント?涼香いつもすごい髪キレイだもんね」
つばさは改めて涼香の髪を見る。
今日子も涼香のオイルのボトルを読んだ。
「使ってみる?いいよ〜」
涼香がボトルのふたを開けて、つばさに差し出す。



コン、コン ――
それぞれが持って来ていたコスメを試したり、女子トークをしていると、ドアのノックの音がした。

今日子が出ると、そこには冬唯が立っていた。
「あ、片倉〜」
「よう、国分」
私服の冬唯を間近で見て、いつもそうだが人の彼氏なのに今日子はちょっとドキっとしてしまった。
「つばさでしょ?…つばさ〜!彼氏!」
「え、冬唯くん?」
部屋まで冬唯が来た事に、つばさはちょっとビックリする。
「つばさ、携帯見た?さっきから送ってんだけど、全然既読つかないから…」
「え、あ、ごめん!財布と一緒に貴重品入れに入れっぱなしだった」
つばさは慌てて、部屋の備付の貴重品入れにパスワードを入れて携帯を取り出した。

「私達、お土産見たりその辺回るから、2人でいたら?」
涼香も立ち上がる。
「え、あ、ちょっと…?」
つばさが慌てているのを、2人は全く意に介さない。
「じゃあ、消灯前ぐらいに帰って来るから、ごゆっくりね〜♪」
今日子も移動用の小さいバッグを取りに部屋に戻ると、涼香と一緒にすぐに部屋を出てしまった。


部屋に、冬唯とつばさが取り残される。

「3人部屋って1人ずつちゃんとベッドなんだな、ゆったりしてていいな」
冬唯がグルっと部屋を見回して言った。
つばさは冬唯の私服は見慣れていたが、部屋に2人きりになると緊張してしまう。
「冬唯くんたちの部屋は?」
「オレら和室大部屋だから。男8人ひと部屋って、すげ〜ムサ苦しいよ。なんか異常に狭い感じするし」
「え〜、そうなんだ」
つばさは笑った。
自分のベッドのところにまだコスメを広げていて、慌ててそれをしまう。
「つばさ、そこで寝るの?」
「うん」
一番入口に近い、壁にくっついたベッドにつばさは座っていた。

冬唯はつばさから離れて、窓際のテレビの前にある2人掛けのソファーに座った。
「こっちおいでよ」
「うん……」
2人きりというシチュエーションに、学校行事だというのにすごく恥ずかしくなってくる。
今更ながらに全開にしていたカーテンが気になった。
「べ、別に意識してるとか、そういうんじゃないから!!」
言い訳をして余計恥ずかしくなりながらも、つばさはカーテンを閉めた。
そして冬唯の隣に座る。

「なんか、この部屋すげー女っぽい匂いするんだけど」
冬唯は自分たちの部屋との違いに、改めて感心する。
「さっきまで、みんなで色々化粧品試してたから…」
「ふーん……」
すぐそこにいるつばさからも、女子っぽい匂いがする。
シャンプーをしたばかりに見える髪からも、すごくいい匂いがしていた。
上下スエット姿の、風呂上がりのつばさを意識して、冬唯もドキドキしてくる。

「大浴場の温泉入った?」
「うん、入った!女子風呂が思ったより大きくてテンション上がったよ」
冬唯の下心にも無頓着に、つばさは無邪気に言った。
「つばさも、すごいいい匂いする」
冬唯はつばさの髪へ顔を寄せる。
「髪、サラッサラじゃない?」
そして髪に触れた。

「……」
つばさは彼のあまりの近さに、さっきからドキドキしていたのに、もう今では心臓が出そうなくらいに胸が鳴っていた。
「……サ、サラサラかな?」
「うん、すげー触りたくなる……」

冬唯の唇が、そうなるのが当然のように、静かにつばさの唇に重なる。

(ああ……)
何度キスしても、毎回つばさは緊張して、そして猛烈にドキドキしてしまう。
(あ、舌……)
冬唯の舌が、つばさの舌に触れた。
「んんっ…」
深いキスに、未だにつばさは慣れない。

「………」

冬唯の唇が、つばさの頬に移る。
そこから首筋へ。

(あん……くすぐったい……)

しかし、くすぐったさとも違う震えが、つばさの背中に電流の様に伝わる。
冬唯はつばさの耳の下を押さえながら、反対側の耳を舐めた。
「あっ……」
彼の息がかかって、つばさは思わず声が出てしまう。
「…つばさ、超可愛い……」
耳元でささやく冬唯の声が、つばさの耳の奥、頭の後ろ側までゾクゾク響いた。
「あんっ……!」
今度は大きな声を出してしまった。。
息とともに、舌がつばさの耳に触れている。
ゾワっとする感じが、色っぽい波長でつばさの足先まで伝わっていく。

「やっ……、ちょっとっ……」

思わずつばさは冬唯を押し退けて体を引いた。
以前の事もあるので、つばさの否定的な動きに冬唯は敏感だった。
「ごめん、……嫌だった…?」
「違う……そうじゃないけど」
つばさは彼を見た。
「は、……、恥ずかしいから……」

「恥ずかしいの?」
「恥ずかしいよ……」
「ふうん……」
冬唯の目が楽しみを見つけたように輝く。
そんな気配を察して、つばさはさらに身を引いた。

「もう〜!私もやってあげる!」
「えっ?えっ?」
「今冬唯くんがした事!ホントにすごい恥ずかしいんだから!」
「えっ、何?」
いい雰囲気だったのにつばさが半分怒っているので、冬唯は戸惑ってしまう。
つばさが寄って行くと、無意識に抱きしめようとして、冬唯の手が伸びてくる。
「だめ!冬唯くんから触っちゃ!」
「え〜〜〜」
「ダメ!とにかくじっとしてて」
つばさは両手で、座った冬唯の体の横にある両手をそれぞれ掴む。
つばさから抱きしめられるような気がして、冬唯は思わず緊張した。さっきキスしている時もドキドキしていたが、もっとドキドキしてくる。

つばさは冬唯の唇のすぐ横にキスした。
「キスしてくんないの?」
冬唯の声がまるで拗ねるみたいで、つばさはキュンとしてしまう。
「今はしない!」
「オレ、つばさからキスしてもらうの大好きなんだけど」
「じゃ……、じゃ、それはまた後で」
冬唯をドキドキさせたいのに、つばさの方がドキドキさせられている。
「もう、黙っててよ」
つばさは冬唯の頬にキスした。
「………」

つい先程自分がされた様に、今度は冬唯の首筋にキスする。
(うっ……)
冬唯の首筋がブルっと震えた。
(これ、やべえ……)
つばさの息が首にかかる事で、自分がこんなにも興奮するのは予想外だった。
この部屋で2人きりになった時から既に、冬唯はもう興奮していたのだが、だんだんとその度合は洒落にならないものになっていく。

「冬唯くん……」
「うぅっ……」
耳元でささやかれて、思わず冬唯の息が上がる。
つばさに握られている両手が、さらに冬唯の興奮を高める。

つばさの舌が、冬唯の耳を舐め、甘く噛んだ。
「あぁっ!……」
冬唯は体がビクンとなってしまい、思わず声を出してしまった。
その声が結構大きくて、恥ずかしくなってくる。

「…ストップ!ストップ!お前、ヤバいって!!」

冬唯はつばさの手を振りほどいた。
自分でも赤面しているのが分かる。
「冬唯くん、真っ赤だよ」
先程の冬唯のように、今度はつばさの目が楽しそうだった。

「う、うるせぇ……」
力なくそう言うと、冬唯は思わず右手で口元を隠した。
「ね?恥ずかしいでしょ?」
「…………」
確かにかなり恥ずかしかった。
恥ずかしいと言うより、興奮度がもうマックスに近い。
そうなると嫌でもそこに並んでいるベッドが気になってしまう。

つばさは冬唯の反応が可愛くて、逆に自分をいつもからかっている彼の気持ちが分かった気がした。

「…………何か飲み物とか無い?」
冬唯は財布と携帯しか持って来ていなかった。
「お風呂の後に開けちゃった、私の飲みかけのお茶でもいい?」
「いいよ」
冬唯は頭を抱えた。
この興奮し過ぎている状態を少しでも冷まさないと、ここで今にも襲いかかってしまいそうだった。
(この状況、軽く拷問かよ……)

つばさは冷えたお茶を持ってきた。
「何この部屋、冷蔵庫まであんの?」
「え、冬唯くんたちのとこ、無いの?」
「無いよ。すげー男女差別」
冬唯はつばさの飲みかけのお茶を飲む。
思ったより喉が乾いていて、ゴクゴク飲んでしまう。
「全部飲んじゃってもいいよ〜」
「ごめんな、後で一緒に買いに行こう」
冬唯はペットボトルを飲み干した。

ひと息ついたが、つばさが隣にいる限り冬唯の興奮は収まらない。
もうすでにそうならないと収まらないところまで来ていたからだ。
(はあ……)
冬唯はつばさを見た。
つばさも冬唯の視線に気づき、見返してくる。
(こうやって目が合うだけで…)
冬唯はつばさのおでこへ、自分のおでこを近づける。
その動きに合わせて、つばさも自然に目を閉じた。

― キスまでは、いつも自然にしていた。

最近では、そのままいつ抱き合ってもおかしくない雰囲気になっていた。
それは現実に、事実だ。

「ギュってしたいから、オレの上、乗って」
「上?」
「うん、つばさが1回立って……」

冬唯に促されるまま、つばさは冬唯の膝に足を開いてまたがる格好になる。
「ねえ、これ、すごい恥ずかしいよ」
「いいじゃん。つばさはオレの彼女なんだから」
冬唯は自分の膝に乗ったつばさを抱きしめた。
つばさの顔の位置が、冬唯よりも少し高い位置になる。
つばさも冬唯の首に手を伸ばし、冬唯はつばさの腰に手を回した。

冬唯がギュっと抱きしめるので、2人は密着する。

つばさの腰に回している手を、冬唯はもっと下げてお尻を掴んで自分の方へ寄せた。
(あっ……)
その密着度合に、つばさはドキドキしてどうしていいか分からなくなる。
強い力で抱き寄せられて、身動きが取れなかった。

(こ、これって……)
冬唯の固さを感じた。
つばさの全身が熱くなってしまう。
またがって彼に座っているので、彼のものが当たっている場所はまさに自分の股間のその部分だった。
位置を変えようとしても、冬唯の手がしっかりつばさの腰に回っている。

「えっと…、冬唯くん……っ」
つばさは冬唯の両肩に手をずらして、上半身を少し離す。
「あ、当たってるんだけど…思い切り……」
「しょうがないじゃん」
冬唯は開き直った。

「あっ……」
また冬唯は小さく声を出してしまった。
「っ…、上でモジモジすんなよ」
「だ、だ、だって……だって…」
冬唯の固く大きくなったそれが、つばさに当たっている。
布地を挟んで、お互いの性器同士が密着しているのだ。
つばさが恥ずかしがって動くと、冬唯のそこを擦ってしまう。
余計に恥ずかしくなって、つばさはまた動いてしまった。

「はあ……」
冬唯はため息をついた。
(この体勢……ヤバイしキツい…さすがにここじゃヤれないし…)
「なあ、つばさ」
「んん?」
離れればこの状態から逃れられるのに、つばさもそれをできないでいた。
冬唯とくっついているのはやっぱり幸せで、今は2人きりだ。

「これ、お前の中に入った事あるよ」
その言葉と共に、つばさの下でそれは固さを増した。
「うん……そうだね」
2人の間で、あの日の事は無かった事のように今日までスルーされてきたが、つばさもあの時の事を時々思い出していた。
(冬唯くんの、私のに当たってる……)
自分の性器に当たる彼の固い性器の存在を、今、ハッキリと感じてしまう。
今自分の真下にある彼のものが、あの日、確かに自分の中へ入ったのだ。

冬唯の力が緩む。
それに合わせて、彼のものから下りるように、つばさは腰を引いた。
お互いの熱い部分の重なりが無くなって、つばさは少しホっとする。

「あの時、…何か強引にしちゃって、ごめんな」
ずっとひっかかっていたその事を、冬唯はやっと言葉にした。
「ずっと、悪かったなって…思ってた」
「ううん」
つばさは首を大きく横に振った。
「あの時…、辛かっただろ?」
冬唯はつばさの髪を撫でた。
あの時の罪悪感を思い出して、冬唯の興奮は少し落ち着いてくる。
「辛くなかったよ」
まっすぐ、つばさは冬唯を見た。
「すごく痛そうだったし…、無理させただろ」
あの時のつばさの姿が、冬唯の脳裏によみがえる。
単なる自分の性的欲求に、無垢で大事なつばさを簡単に巻き込んでしまった事を、今でも後悔していた。

つばさはきょとんとして、冬唯に笑顔を向けた。
「無理してないよ?…初めてって、普通痛いものなんでしょ?」
「つばさ…」
いつも通りのつばさの反応に、冬唯が今まで抱えてきた思いが少し軽くなるような気がした。


「私……、冬唯くんがあの後変わった気がして、私、何か変だったのかなって…思って」
彼を見るつばさの瞳が揺れた。

「えっ……」
つばさにそんな風に思わせていたとは考えもしていなくて、冬唯はハっとする。
「つばさが変とか全然無いし!むしろ逆だし…」
つばさへ抱いていた罪悪感が、方向を転換して自分へとまた向かってくる。


「ごめん…………!」

冬唯はつばさをギュっと抱きしめた。
(冬唯くん……)
頭を苦しいぐらい寄せられて、つばさの胸もギュっとなる。

つばさを抱き寄せたまま、冬唯は言った。
「ごめんな、…ホントオレって馬鹿だ。ホント、色々…ごめん…」
言いたい事は沢山あったが、今整理はできなかった。
肉体的だけではなく、精神的にも辛い思いをつばさにさせていたんだろうと気付くと、自分の馬鹿さに押しつぶされそうだった。
「ごめんな……」
冬唯の声がかすれる。

「私こそ……」
つばさが顔を上げた。
「何か色々よく分かってなくて……」
「つばさは何も悪くないし」
顔を上げたつばさの頭ごと、また冬唯は強く抱き寄せた。
つばさの髪のいい匂いで、余計に彼女が愛しくなってしまう。

(なんでこんなに好きになっちゃったんだろ、オレ)

冬唯はため息をついた。
「はあ………なんか、オレ…恥ずいけど、つばさの事すごい好き」
「それって、恥ずかしい事なの?」
ドキドキし過ぎて、つばさは思わず可愛げの無い突っ込みをしてしまう。

「………」
「………」
「恥ずかしくないけど………やっぱ恥ずい」
そう言う冬唯は、また真っ赤になっていた。
これまでに女子から散々チヤホヤされていても、つばさの前では冬唯もただの恋する男子だ。
そんな彼を見て、つばさも切なくなってしまう。

(冬唯くん……)
キュンとするってこういう事なんだと、つばさはまた実感する。
彼と一緒にいると、今まで自分の中に無かった感情が沢山生まれてくる。
(男の子を好きになるって、こういう事なんだ…)
目の前にいる冬唯は、つばさにとってたった1人の、異性として意識する男子だった。

「冬唯くん、大好き」
「うん、オレも」
こんな風に心から誰かの事を好きだと自分が口に出す日が来るなんて、冬唯は全く想像もしていなかった。
今の自分の素直さに、冬唯自身も戸惑う。
それでもつばさの前なら、本当の自分の気持ちをさらけ出してもいいと思った。
(つばさ……)
抱きしめた腕の中にいる彼女が、可愛くてたまらない。
つばさの肩と頭に回していた両手を、冬唯は腰へと下げる。
少しお互いの体が離れると、またキスをした。

「………」
冬唯は腕に力を入れて、再びつばさに近づく。

(あ、冬唯くん……)

キスしながら、また自分が冬唯の固さに乗せられて行くのを感じた。
(また、触っちゃう……)
冬唯のその熱さと感触が、自分のそこに伝わる。
もちろん彼にも、自分の熱さが伝わっているだろう。
(ここに……)
さっき言われた、『入った事がある』という言葉を思い出して、つばさはまたモジモジして無意識にそこを擦ってしまう。

「はぁっ…」

唇が離れて、冬唯とまっすぐに目が合う。
冬唯も下半身が触れているこの感じを、分かっているはずだと思う。
彼の目が眩しいものを見るように、つばさの瞳を覗き込む。
一瞬伏せられたまつ毛が長くて、つばさはその美しさに引き寄せられてしまう気がした。

冬唯の指がつばさの頬をゆっくりと撫でる。
視線が、その指とともにつばさの頬を撫ぜる様に、一緒に動いた。


「今度は、……めっちゃ優しくするから」
そういう彼の表情は、今までつばさが見た中で一番色っぽかった。


 

 
 

ラブで抱きしめよう
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