初めて親に嘘をついて、つばさは外泊の準備をして冬唯の家に来た。
待ち合わせをして、お昼ご飯をコンビニで買って、彼の部屋へ入る。
(緊張しちゃうなあ……)
初めて彼の部屋へ来た時も、その次の時も、「そうなる」と覚悟していたわけではなかった。
しかし、今日は確実にそうなるだろうし、つばさもそのつもりだった。
弟と一緒に使っていたという彼の部屋は広い。
今日の冬唯はラフな格好で、パーカーにGパンというごく普通のスタイルだ。
それでもお洒落に見えてしまう彼を、つばさは少し羨ましく思う。
「あ、つけてきてくれたんだ」
つばさのネックレスを見て、嬉しそうに冬唯は言う。
「うん。これ、すごく可愛いね。冬唯くんの趣味、好き」
つばさも嬉しくて、にっこり笑った。
ベッドの端に並んで、2人は腰かけている。
冬唯の視線がネックレスからつばさの顔に移り、唇を見る。
つばさが目を閉じると、唇は自然に重なり合う。
「つばさ、いい匂い」
「あ、今日香水つけてくるの忘れちゃった」
「何もつけなくても、いい匂いするよ」
冬唯はつばさの髪を触った。
彼はよく髪を触ってくる。
つばさは、冬唯に頭を撫でられるのがすごく嬉しい。
(一緒にいると、ホントにいつも嬉しいなあ…)
無意識に見つめていると、冬唯の顔が近づいてくる。
「ん……」
唇に、柔らかい彼の唇の感触。
熱い舌が、つばさの唇を割る。
(ああ……)
深いキスをした。
肩に乗せられた冬唯の手に力が入る。
ゆっくりと、つばさは押し倒された。
「んん〜……」
つばさは下着の上に冬唯のトレーナーを着て、ベッドの中で彼にくっつく。
「あったかいし、気持ちいい」
そう言って、冬唯の首筋に自分の頬を擦った。
布団の中、彼の腕の中は暖かくてとても居心地が良い。
「あ〜、明日、マジで大阪行くの嫌だな……」
冬唯がため息をつく。
「新幹線も、すごい混んでそうだよね」
「ああ…………」
つばさを腕枕している右手で、彼女の髪を触る。
しばらく黙って、つばさの頭を撫で続けた。
「ちょっと休みの間でもあっちに行くのも嫌なのに…、高校卒業して遠距離恋愛なんてオレ、耐えられない」
冬唯は左手をつばさに回し、ギュっと抱きしめた。
「やっぱ、ちゃんと現役合格して、こっちに残らないとだよなあ」
「………」
その言葉を聞いて冬唯の顔が見えるように、つばさは彼の腕の中でモゾモゾと頭を動かして位置を変える。
つばさが驚いたように自分を見ているのに、冬唯は気付いた。
「何?どした?」
「だって………冬唯くん」
そこでつばさは一呼吸置いた。緩んだ冬唯の腕をほどいて、仰向けになる天井を見る。
「夏に…お互いの誕生日を知らなかった時、あの時、『もし来年付き合ったてたらお祝いしよう』って言ったの覚えてる?」
「うん……、そんな事言ってたな」
「『もし来年』ってあの時は言ってたのに」
改めて言葉に出して、つばさの胸がギュっとなる。
「『遠距離恋愛』とか、ずっと先の話を当たり前にしてるなんて……なんか、嬉しいなって思って」
夏にあんなにも不確かだった関係だったのに、今はこんなに繋がりを実感できる。
それがつばさにはとても嬉しかったし、一方で信じられなくもあった。
「オレ…絶対、別れないよ。つばさと」
冬唯の目は真剣だった。
「先の事は勿論分からないけどさ、でも、今のオレはそう思ってる」
「冬唯くん…」
「何か…適当な感じに聞こえるかも知れないけど、本当にそう思ってる。オレ、つばさと離れるなんて考えられない」
(こんな風に、冬唯くんが言ってくれるなんて…)
今、気持ちが繋がっていても、漠然とした不安は心の片隅にあった。
それでも目の前にある冬唯の表情や、体で感じる温かさはつばさの今の現実である事は確かだ。
(嬉しいな……)
つばさも冬唯に腕を回して、ギュっと抱きついた。
冬唯もそれに応えて抱きしめ返す。
「あ〜、」
「ん?」
「すげー勃ってきちゃった」
「え〜…」
そう言うつばさの腰を、冬唯はわざと当たるように自分に引き寄せる。
「ヤバい、ねえ、オレつばさの事すごい好きなんだけど」
「うん、私も……」
つばさの言葉は、途中で冬唯の唇にふさがれた。
(あっ……)
冬唯の手が、ショーツに入ってくる。
さっきまでそうしていたそこには余韻が残っていて、彼の指をヌルヌルと滑らせてしまう。
「はぁっ……あっ…」
「すごい濡れてる」
「やっ、違っ…んっ…」
敏感なところを弾いた冬唯の指が、粘液を纏ってさらに下へ動く。
「あ、あっ」
つばさのそこは、冬唯の指を簡単に受け入れてしまう。
冬唯は一度奥まで指を入れると、すぐに引き抜いた。
その指を見て、言った。
「やっぱり、すごい濡れてる」
トレーナーを着たまま、下着だけを脱がされる。
冬唯のそれが当たったと思ったすぐ後、そこを割って彼のものが体内に入ってきた。
「あ、あぁんっ……」
(ああ、気持ちいい……)
ムズムズしていたつばさの体の中が、冬唯の猛りで満たされる。
「今日、時間あるし……ゆーっくりしよ」
動かさずに、冬唯はつばさを抱きしめたまま、限界まで自分を入れ込む。
「あぁぁっ……」
(冬唯くんが、奥に……)
つばさの体がブルっと震えた。
それと同時に体内で冬唯を締め付ける。
「はぁっ、つばさの中、すごい気持ちいい……」
冬唯の色っぽい息が、つばさの耳元にかかる。
「はぁっ……あ……」
(動いてないのに、私もすごい気持ちいいよぉ…)
自然につばさの息も上がってくる。
「……つばさも気持ちいい?」
「ん……」
つばさはコクコクと頷いた。
「かーわいい…、じゃあつばさオレの上に来て」
冬唯は一旦つばさから自分のものを抜く。
自ら仰向けになると、つばさを引っ張って自分の上に乗せた。
「何か、は、恥ずかしい…」
足を開いて冬唯にまたがっている事が、はしたなく思えてつばさは余計に恥ずかしくなってしまう。
トレーナーを着ていたので、その分だけそれでも少しマシだ。
(エッチするのって……、ホント恥ずかしい…)
初めての時のように、されるがままただ目を閉じて終わっていたあの行為とは、今はもう全く違う。
お互いがお互いを確認し合っていくようだと、つばさは思う。
「つばさ…早く」
冬唯は自分のものを掴み、つばさのそこへ当てた。
「ここ?」
「あっ!!」
濡れているつばさのその部分に、腰を上げた冬唯の固い性器が簡単に挿入されてしまう。
「んんっ……」
冬唯からもため息が漏れ、つばさの腰を自分へと押し込んだ。
「ああっ……!!」
上になっているので自分自身の体重がかかり、奥まで冬唯のものがしっかりと入ってしまう。
(あ、や……だめ。これだけで気持ちいいよ…)
「はあ、はあっ……」
「つばさ…」
冬唯はつばさのトレーナーを脱がし、彼女を全裸にした。
首に、クリスマスにあげたネックレスが光っている。
「さっきも思ったけど、裸にネックレスだけって、……エロくていいね」
冬唯は自分の上に乗ったつばさの体をまじまじと見た。
「やだ、恥ずかしいよっ…」
「………」
手を伸ばして、つばさの胸を触った。
「あぁっ……」
指先で乳首を撫でると、つばさの体がビクンとなる。
そして体内で冬唯をグっと締めた。
(つばさの裸、可愛い……あー、ヤバイ、すげー気持ちいい)
「ねえ、オレにキスしてよ」
「……うん…」
つばさの視線が冬唯の胸元から彼の顔へと移る。
その表情が色っぽくて、冬唯はさらに興奮してしまう。
「んん……」
つばさは冬唯にキスした。
冬唯の腕がつばさの背中へと回る。
ギュっと抱きしめあうと、さらに2人の裸の体が密着した。
キスだけでも興奮するのに、繋がったその部分でお互いの存在を深く実感する事ができる。
(ああ、気持ちいいよぅ……冬唯くん……)
つばさは無意識に腰が動いていた。
冬唯の手がつばさの背中を撫で、彼もまた自然に、ゆっくりと腰を動かしていた。
(つばさの中、濡れてるのが分かる……)
「んっ……」
つばさのお尻を掴み、その内部の感触を確認するように、ゆっくりと下から上へと動いた。
「あっ……あぁっ…」
彼女の切なそうな声と息遣いを耳元で聞き、冬唯はたまらなくなってくる。
「動きたいから、オレが上になるね。…1回抜くよ」
その言葉を聞いたつばさの眉間が一瞬動いたのを、冬唯は見逃さなかった。
「え、抜きたくないの…?」
冬唯はつばさの髪を撫で、彼女の表情を伺う。
つばさは顔を見られるのが恥ずかしくてたまらない。
(だって、今抜いたら……)
冬唯の大きさを、体の中で感じる。
ゆっくりと突かれて、その動きで自分から出たものが彼を滑らせている事を実感してしまう。
感覚がリアル過ぎて、頭の中で、その音が聞こえそうな気がした。
実際に、冬唯の動きに合わせて、つばさのそこはクチャクチャと音を立てていた。
「………だって、冬唯くんの事、多分汚しちゃう……」
そう言って、つばさは下唇を噛んだ。
その姿に冬唯はキュンとしてしまう。
「ホント、可愛い、つばさ……」
首筋に手を回し、冬唯はまたつばさにキスする。
沢山キスをした後、つばさの腰を抱いて、繋がったままゆっくりと体の位置を入れ替える。
「はあっ…あ、……はぁっ…」
冬唯の息遣いも荒くなる。
「あっ……、ああんっ…!」
(冬唯くんが、中に……)
浅いところを擦られ、そしてまた深いところを突かれる。
足をしっかりと掴まれて、奥の敏感な場所を冬唯の先端で何度も刺激された。
(やあっ、…激しい……)
「あっ、あっ……あっ…」
「はぁ、はぁっ…」
冬唯の動きは止まらず、奥にあるそれはもっと奥を求めて、速さを増してつばさを攻める。
「あぁっ…ヤバい、オレ、もうイキそう…」
「…うんっ…」
つばさが頷くのと同時に、冬唯の唇がつばさの唇を塞ぐ。
「んぅっ……」
冬唯の舌を噛んでしまわないように、つばさは懸命に息を飲んだ。
つばさが目覚めた時、もう外はすっかり暗くなっていた。
「あ」
目を開けると、すぐに冬唯と目が合う。
「おはよ……」
「おはよう」
冬唯が優しい笑顔を返す。
「何時……?だいぶ寝ちゃったよね」
寝ぼけ眼で、つばさは携帯を探す。
今日ここに来てから、お昼ご飯を挟んで既に何度も体を繋げていた。
冬唯のトレーナーをずっと借りているのだが、もうつばさは下着もつけていない。
「いいな、つばさがオレのベッドにいるのって」
冬唯がニコニコして言うので、つばさもつられて微笑んだ。「うふふ」
「今日一緒に眠れるなんて、嬉し過ぎる」
そう言って、冬唯はつばさのおでこにキスする。
それに応えて、つばさも冬唯の頬にキスした。
「何、可愛い事してくれてんの」
照れた冬唯の表情は本当に嬉しそうで、つばさも一緒に嬉しくて胸が締めつけられる。
「なんか、今日だってエッチいっぱいしてるのに…」
つばさは冬唯のTシャツの胸の辺りを触りながら言う。
「…おでこにキスだけで、すごいドキドキしちゃう」
「うん、オレもだよ」
頷いて、冬唯は再びつばさのおでこにキスした。
「あとで、一緒にお風呂入ろうぜ」
「えぇ…」
「え?嫌なの?」
冬唯はつばさのその反応を予想していなかった。
「だって、恥ずかしいよ」
「今更?つばさのぜーんぶ、見…」
「ヤダ!もう〜、言わないで!!」
真っ赤になってつばさは両手で冬唯の口をふさいだ。
「じゃあ言わないから、入ろ」
「……ずるいよ、もう……」
そんな反応が可愛くて、冬唯はつばさを抱きしめる。
つばさも冬唯の背中に手を回し、2人は抱きしめあう。
「なんだか、不思議……」
「ん、何が?」
冬唯は体を少し離す。
「私にとって冬唯くんって……、もちろん他の男子とは違うけど」
つばさは冬唯の胸に、温かさを感じた。
「うん」
「冬唯くんは他の友達とかとも違ってて…、何て言うか、親しい女友達とかにも言ったり見せたりできないような…素の自分でいられるって言うか」
「……」
冬唯はつばさの言葉に嬉しくなって、思わず頬が緩む。
「何か、私、すごく冬唯くんに頼ってる気がする」
つばさは一呼吸置いて、言葉を続けた。
「今まで男の子と付き合った事が無いから、全然分かんないんだけど、自分にとって…こんなに近い存在の人がいるのって…今でも信じられないよ」
「つばさにとって……、オレって近い存在?」
つばさの頬を触りながら、冬唯は優しい目で彼女を見つめた。
そんな冬唯の瞳を見るだけで、つばさはまた苦しい程動悸が激しくなる。
「うん……すごくドキドキしちゃうのに、すごく安心する…変だけど、何か…いつも側にいないと落ち着かないの」
「そうか、そうか」
冬唯は大事なものに触れるように、つばさの頬を撫で続ける。
普段誰にも見せない、切なさと優しさの混ざった笑顔だった。
「冬唯くん、大好き」
「うん、オレも」
「ホントに、すごい好きだよ」
「オレもだよ」
冬唯はつばさに軽くキスすると、再び抱き寄せた。
「あ〜、ホントに離れたくないし、明日帰りたくねえな…」
「……」
(私も、離れたくないな…)
つばさは、冬唯の感触を確かめるように、彼の首に顔をくっつけた。
(大好き……、ホントに)
冬唯の事を考えると、喉が詰まってちょっと泣きそうになってくる。
「冬唯くんと、付き合えて良かった」
「うん」
「こんな風に冬を迎えるなんて、春には全然思ってなかったよ」
「オレもだよ」
「良かった……、冬唯くん何か、すごくありがとう」
つばさは顔を上げて、冬唯を見て微笑んだ。
その目が少し潤んでいて、冬唯もまたドキドキしてしまう。
「いや、オレの方こそ、だよ……」
冬唯がギュっと抱きしめると、つばさのトレーナーが上がって、手が素肌の腰に触れた。
少し手を下げると、すぐに裸のお尻だった。
「今日は、いっぱいイチャつこ」
そう言う冬唯の目はもう熱を帯びている。
「うん……」
頷きながらつばさは、冬唯になら何でも許せてしまうのが、やっぱり不思議だと思う。
そんな人が自分にとって本当に現れた事が、こうして彼の腕の中にいる今でも信じられない。
(すごく大切で、嬉しい……)
幸せな気持ちで満たされながらも、明日から離れなくてはならないのが辛い。
つばさにとって、冬唯はもう何よりも大切な存在になっていた。
2018/12/31