「敦志〜〜〜〜」
私は敦志の首に裸のままでギューっと抱きついた。
「んだよ、いてえよ」
敦志は嫌がるような声を出したけれど、別に私を振りほどこうともせずに背中を撫でてくれる。
夏休みの昼間は両親が仕事に出てるから、私の部屋でこうしててもいつもよりもずっとリラックスできた。
私は腕を緩めて、敦志の顔を覗き込む。
「なーんか、幸せーー」
私のその言葉で、敦志の眉がピクっと動く。
「………まあ、そうかもな…」
そのまま、敦志は私にキスした。
私の体の上に乗るような形になって、頬や首筋を両手で触ってくれる。
(ああー…やっぱり幸せだぁ……)
なんだか最近はすごく気持ちがよくなってて、イクとか、もうどうでもいいやとか思い始めてた。
普段は相変わらず割と無愛想な敦志も、二人きりになると前よりもずっとあからさまに優しくなってくれてる気がした。
「もうすぐ夏休みも終わっちゃうねー…」
敦志の行ってる予備校の前で待ち合わせた。
夕方はまだまだ暑かったけれど、確実に日の長さはピークの時期を過ぎてた。
歩きながら、私は敦志の腕に自分の腕を回す。
「受験、大変だねー」
「同級生とは思えない一言だな」
敦志は半分呆れながら、私を見た。
「だって私は大学受験なんてしないもん」
私は彼に寄り添って前を向いた。
なんだか自分ばっかりお気楽で、この違いに少し距離を感じてなんだか寂しいような気がした。
敦志の歩みが緩む。
「もうすぐ、ホントに学校が始まるだろ?」
「うん」
(あ……)
敦志の手が何気なく、そっと私の手を握る。
こういう一瞬に、いまだにドキドキしてしまう。
(嬉しい…)
普段冷たい分、敦志がこういうことをしてくれると嬉しさ倍増してしまう。
いつも思うけど、やっぱりずるい。
「たまには1日中一緒にいようぜ」
「………」
沈黙してる私を、敦志は怪訝そうに覗き込んでくる。
「何だよ?ダメなの?」
「ううん………もちろん平気」
…嬉しすぎて、言葉に詰った。
そしてそれを悟られるのが恥ずかしくて、私は無意味にムっとしてしまった。
付き合ってもうだいぶ経つし、エッチも何回もしてるのに、いちいちこんな小さなことでこんなに嬉しくなってしまう自分が何だか悔しい。
ただ、デートの約束をしてる、それだけなのに。
その日は早い時間から、敦志と会った。
うちに誰もいないから、デートはうちでゆっくりと二人きりっていうのでも良かったんだけど、私たちは街へ出た。
ショーウインドウはもうすっかり秋だった。
ガンガンに冷房が効いたフロアを、二人でブラブラと歩いた。
「なぁんか、寒くなってきた…」
私は毎度のことながら薄着で、足元も素足にミュールだった。
この靴だと、長い時間ウロウロするのは辛い。
「お前、真夏って感じだもんな」
確かに。
敦志の言葉に私は頷いた。
彼はチラっと私の胸元を見て、そして言った。
「それじゃ、ちょっと休憩するか」
「休憩って、…こういう休憩?」
私たちは、ラブホテルに入っていた。
「まあ、いいじゃん」
敦志は立ったまま私を抱き寄せてくる。
「まあ、いいけど……」
敦志とするのは大好きだ。
とにかく、敦志と密着するのが大好き。
そして、敦志のことがやっぱり大好き。
抱きしめられるだけで、私の頭の中では敦志への色んな大好きがぐるぐる回る。
気が付くとピンクのシーツに押し倒されて、…キスされて…、
「はあ、…はぁ………」
最近は割と丁寧に敦志は愛撫をしてくれていたけれど、今日はあっという間に1回目が終わった。
「あー……」
もう普通の彼に戻っている敦志が、私の横で仰向けになる。
「すっげー、したかった……」
「ええ…?」
率直な言葉に、私は思わず笑ってしまった。
「街中で、果凛、すごい可愛かった」
「…えー??」
敦志にそんなことを言われると、嬉しいけどすごく恥ずかしい。
「学校でも可愛いけどさ、やっぱ外でも目立つな、すげえよお前」
「……ええー…」
敦志が私に可愛いって言ってくれることは少ない。
だから急にこんなに何度も言われると、恥ずかしさを通り越して何だか引いてしまう。
「スタイルもいいしさ……」
敦志は体を起こす。
「あっ……」
背中にキスされた。
私はくすぐったくてゾクっとして、小さく震えてしまう。
「……すごい、可愛い」
「ちょっ……やっ……、あぁんっ」
背中を上から下へと舐められて、思わず私は体をよじった。
「逃げんなよ」
敦志が私の腰を掴む。
その力はとても強くて、彼が本気になったら私は絶対に逃げられないだろうなと思う。
そして、なぜかすごく興奮してきた。
「あっ、……あぁんっ」
腰を引っ張られて持ち上がったお尻に、敦志の唇が触れた。
「あぁんんっ……」
くすぐったい。
そして自分のその部分が、敦志の方に向いてしまっているのが恥ずかしい。
「きゃっ……、ああっ!」
唐突にそこを敦志が舐めてくる。
後ろ向きでお尻を突き上げている格好が、私は恥ずかしくてたまらなかった。
「やん、…あんっ…」
(ああん、気持ちいい…)
恥ずかしければ恥ずかしいほど、どうしてだか気持ちがよくなってしまう。
(私、Mかも……)
実はちょっと思っていた。
「はぁ、あぁん!」
敦志の唇が離れると、今度は彼の指が、私の突起に触れた。
「あっ、やん、はぁんっ……」
お尻の方まで手のひらをくっつけてくるように、彼の大きな手全体が私の性器を包んで、そして小刻みに揺すってくる。
(ああん、これ、いいかも……)
「あぁっ、…気持ちいいっ……」
「これが…?」
敦志の指がクリトリスを、そして私のその部分全体を弾く。
「ああ、ああんっ、…あぁぁんっ…」
(なんか、すごく、……いい…)
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
だんだん何をされているのか分からなくなってくる。
あそこが揺すられるたび、まだ何も入ってないそこが欲しくてたまらない。
「ああん、敦志っ、……ああんっ!」
(もしかして……)
イっちゃうかも、と思った時、急に体が震えた。
「ああーん!あああっ!」
触られていない背中やうなじが、静電気が走ったみたいにくすぐったくなる。
その部分がやけに鋭敏になって、もう触れられるだけでビクビクしてしまう。
「はあ、……はぁ…はぁ…」
「果凛……」
敦志の呼びかけに返事をする元気もなかった。
私はうつ伏せで突っ伏したまま、ただ息を切らしていた。
「もしかして、イけた?」
「……………」
私はちょっと返事に困る。
「多分…?……よ、よく、わかんない…」
本当によく分からなかった。
イクって……こんな、あっけないものなの?
(気持ち良かったけど……)
体が勝手にビクビクなってしまった、って感じ。
「……敦志〜……」
私はぐったりしたまま、隣にいる敦志の方へ手を伸ばした。
敦志は私の手をギュっと握るとすぐに離して、すぐにまた体を起こす。
「やんっ……」
敦志は後ろからまた私の腰を引っ張って、私を四つん這い崩れの姿勢に戻した。
「果凛、いつもよりもすごい濡れてる」
「えっ」
「触ってみ」
「えっ、ちょっと……」
敦志が手を伸ばして、私の手を強引に私の足の間へと引っ張った。
そして私が自分のそこを自分で触るように、私の手の上から手で押し付けてくる。
「あっ…やだっ…」
敦志が言ったとおり、そこは本当にヌルヌルだった。
自分の感覚で予想してた以上に、濡れてた。
(こんなに出ちゃうなんて……)
「果凛、指」
「えっ、何……」
敦志に手をグっと掴まれる。
彼が何をしようとしているのか理解できないうちに、私の指は敦志の指と一緒に自分の穴へ入れられてしまった。
「やだ……やぁっ……」
自分のそこに、自分の指が入った。
「ほら、すごいだろ……」
「あんっ!」
敦志の指が、私の指と一緒にもっと奥に入ってくる。
「だ、だめっ……やぁんっ……」
(やだ、エッチすぎる……)
自分の中の感覚以上に、自分の指へと伝わる敦志の指とそしてそれを包む自分自身の内部の感触が、鮮明に伝わってくる。
そこはすごく濡れていて、熱かった。
「狭くて柔らかくて、熱いだろ…」
「う……、あぁん……」
「果凛、すごい…」
(恥ずかしい……)
だけど拒否できなかった。
私は敦志にされるまま、彼と一緒に自分自身へ指を入れ続けた。
この状況に私は、ものすごく興奮してしまう。
「……ああっ!ああっ!ん、ああっ!」
敦志が私に入ってきただけで、いつもの倍以上にすごく感じてしまった。
「ああ、ああっ、あー、…ああーっ…」
いつも家で声を我慢しているから、ここでは自然に声が大きくなってしまう。
(すごいすごい、ああ、気持ちいい…)
―― とろける、っていうのはこんな感じなのかも、と思う。
私は体の力が抜けてしまう。
潰れそうになる私の腰を敦志はしっかりと自分の方へ引き寄せて、激しく突く。
すごく興奮しているのに不思議とリラックスして、私は完全に敦志に身をまかせる。
(敦志、…ああ、敦志……)
心の中で何度も敦志の名前を呼んだ。
まるで『気持ちいい』という言葉の代わりみたいに。
「ああん、ああ、ああっ、…はぁ、あぁぁっ……」
ものすごく気持ちが良かった。
(ああ、敦志っ、敦志…敦志…)
大きくて固い敦志が、後ろから激しく私の中へ突き上げてくる。
「うぁ、あんっ……あぁんっ…」
(ああ、敦志、……敦志、…もっと…)
あまりに気持ちが良くて、どのくらいそうしていたのか分からなかった。
そして相変わらず『イク』っていう感覚もよく分からなかったけれど、私はただひたすらに快感に呑まれていた。
「うわっ」
「………?」
敦志が私の中から自分のものを抜いた時、彼が声を上げたから私は朦朧としつつ振り返った。
「果凛、すごいぞ……」
(あ……)
自分でも、足の間からボトボトっと液体がこぼれてきたのが分かった。
「やだ……もぅ……」
私は思わず枕を引き寄せて、それに顔を埋めた。
「うー、すげー…」
多分、敦志は私のそこを見てるんだと思った。
それが分かっていて、そして恥ずかしかったけれど、私は動けずに彼にされるがままでいた。
「…はぁ…」
恥ずかしさよりも、ダルくて重いのが勝っていた。
(動けない……)
このままラブホのベッドに体ごと沈んでいってしまいそうな気がした。
しばらくすると私が放心している間に、後始末をしてくれた敦志が隣に来た。
「大丈夫か、果凛」
敦志の心配そうな声。
私はやっと体を横に向けて、敦志の方を見た。
「………ダメ」
「…そうか」
敦志はそう言うと私にキスしてくる。
私はマグロみたいに、彼のキスをただ受けとめる。
まさにされるがまま。
「ふぅん、…んっ……」
敦志のキスはだんだんと激しくなってくる。
優しいのも好きだけど、こういう感じ、求められてるーって感じで、私は嫌いじゃなかった。
(えっ……)
さっきほとんど触られていなかった乳房に、敦志の両手が触れる。
(うそぉ……)
いつのまにか私の体は仰向けにされて、敦志の体重が乗っている。
お腹のあたり、……確かに固いものを感じる。
(ええ、マジで…?)
「あっ、…えっ…?あん…」
まださっきの余韻が全く消えていなくて、体の力が抜けたままの私。
気のせいじゃなくて、体中が柔らかくなっていた。
「うぅ、…ん…」
おっぱいをぐるぐると回すように揉み解されながら、いつのまにか私の体はうねり出していた。
足を広げられる。
私のそこはさっきからドロドロのままだった。
「んあぁぁっ………」
今日、最高にエロい声を上げてしまった。
彼がまた私に挿入したのだ。
(もう、死んじゃうかも……)
その日は、もう、どこからどこまでが1回のエッチだか分からなくなった。
『変になる』っていうのはこういう事なんだって、私は本当に思った。