君の香り、僕の事情

●● 8 ●●

   

(え…)
深雪の顔が離れるまで、目を開けたまま茉莉はただ、前を真っ直ぐ見ていた。

(キス、された…?)

「帰ろうか」
静かにそう言うと、深雪はいつものように穏やかな感じに戻り、立ち上がった。
茉莉が茫然としていると、深雪は茉莉の手を取った。
「帰ろう」
深雪は茉莉を引っ張って立ち上がらせると、手を握ったまま歩き出す。
暗いタクシー乗り場から、明るい歩道へと進んで行く。

(手……)
茉莉は言葉が出ない。
(キスされた?…キスされた…キスされた…?)
頭の中でその5文字が埋め尽くされる。
茉莉は、ファーストキスだった。
(キスされた…)
半歩前を歩く深雪の手が、自分の手と繋がっている。
男子と手を繋いで歩くのも、初めてだった。
(キス、されたよね…)
実感は全く無かったが、茉莉のドキドキは一歩歩くたびに大きくなっている気がした。
深雪の歩みは早く、お互い何も言わないまま、茉莉の家が近づいてくる。

「これからも…」
深雪が少し歩くペースを落とす。
手を繋いだまま、茉莉の横、肩の触れる位置に来た。
「オレの時間がある時、今日みたいに一緒に帰ってもいい?」
「えっ…」
交際を断ったから、もう今までの様に深雪とは会えないと、茉莉は思っていた。
「うん…」
深雪の言葉にホっとして、茉莉は頷いた。
「昼休みも、今までどおりにしてくれる?」
「あ、うん」
(そうだ、昼休み…)
順平や樹生、総一郎、そしてつかさと一緒に、昼に部活の無い時は今では当たり前のように4組で一緒に過ごしていた。
(もうみんな、友達だもんね…)
自分の事がきっかけで、せっかくつかさもみんなと仲良くなっているのに、昼休みに気まずくなるのも嫌だった。

「放課後、部活が無い時…、オレ、また誘ってもいいかな」
「……うん」
考えるよりも早く、茉莉は頷いてしまった。
さっき付き合えないと言っておきながら、今頷くのは矛盾しているのかも知れない。
それでも、ひとつひとつこうして深雪に確認されると、それを拒否するのは不自然な気がした。
それ以上に、今夜から深雪と全くの他人になってしまう方が、おかしいと思った。そしてもしそうなってしまうのなら、茉莉にとって、それはとても辛い事だった。
男子と付き合った事のない茉莉には、「彼氏」という存在は夢のようで、遠く手の届かないものだと思っていた。
自分の都合で、また深雪を振り回してしまうんじゃないかと、茉莉はハっとする。

「みゆきくん、あの…」
「まつりがこうしてオレと一緒にいるのが、嫌じゃないんだったら…。今までどおり、このまま友達でいてよ」
(友達…)
「うん…ありがとう」
思わず『ありがとう』と、茉莉は言ってしまう。曖昧な関係のまま、それでも深雪から離れたくない自分の気持ちを彼に見透かされているような気がした。
「マジで、今までどおりでいてくれる?」
「うん…。みゆきくんは…それでいいの?」
「オレはそうしてもらった方が嬉しいから」
「……」
深雪の顔を見ていると、茉莉は胸が苦しくなる。
(私…)

「まつり」
「……」
茉莉が視線を上げた先、深雪は優しい表情をしていたが、目は真剣だった。
「オレの気持ちは、変わらないから」
「みゆきくん……」
「じゃあまた明日、学校で」
いつものように笑うと、深雪は足早に茉莉から離れて行く。
茉莉はただ、その後ろ姿を見送る。
深雪は振り返らなかった。


部屋に戻ると、マフラーも取らずに制服のまま茉莉はベッドに座ると、しばらくそのまま動けなかった。
(みゆきくん…)
キスされたのが現実なのかどうかも、実感が無さ過ぎて既に不確かな感じだった。
(みゆきくんに、告白されたんだよね…)
好きだと、言われたような気がする。
自分がハッキリ断った事だけは、確かに覚えている。
(だって、付き合えないもの…)
学校にいる間は部活ばかりで、帰宅すれば疲れてすぐに眠ってしまう。
休日も練習か試合があって、暇さえあればソフトボールの事ばかり考えていた。
基本的に毎日クタクタで、この生活に恋愛をプラスする事など想像もできなかった。
(だけど……)
深雪は確実に茉莉の心に入ってきていた。
昼休みのランチタイム、帰宅するまでの移動時間。
普段ならただ過ぎて行くだけのその時間が、深雪がいるだけで違ってしまう。
(キス、したよね…)
茉莉は唇を指で触ってみる。
深雪の感触は、思い出せなかった。


午前の授業が終わると、昼休み。
もう当然のように、順平と総一郎がつかさと茉莉を連れて4組へやってくる。
「総一郎、そのデカいの何?」
樹生は総一郎が持っている袋に入った大きなタッパーに気付いて言った。
「うちでリンゴを大量にもらったらしくて、友達にも食べさせてくれって親に持たされた。重かったんだぜー、みんな、食べてくれない?」
「なんだかピクニックみたい」
つかさがツインテールを揺らしながら身を乗り出して、総一郎が蓋を開けたタッパーの中身を見る。
「うわー美味しそう!私、リンゴ大好き」
茉莉が無邪気に笑う。
深雪は茉莉の笑顔を見て、安心する。
昨日の今日なので、もっとぎこちなくなるかと不安だったのだ。
深雪の前に茉莉が座るのが、当たり前のような配置になっている。
茉莉の隣にはつかさがいて、つかさを囲むように男3人。
それがいつもの並び方だ。
つかさと茉莉のその様子は、深雪たちに憧れる女子から非常に羨ましがられていた。

昨日の事があったが、深雪は特に気にせずみんなと普通に話した。
もちろん茉莉とも。
深雪と時々目が合うと、茉莉は戸惑ったような表情を見せて、そっと目をそらした。
全く昨日までと同じというわけではない。
茉莉の中の深雪も、変化したのだ。


『今日は放課後、総一郎たちと用があるから』
部活の準備をしながら、茉莉は深雪からのメールを見た。
それを見て茉莉はホっとする。
2人きりになった時、どんな顔をしていいのか分からなかったのだ。
時間が今よりずっとあったなら、深雪と一緒にいたいと思った。しかし一方で、もしもっと時間があったなら、その時間をやはり練習に当ててしまうかも知れないとも思う。
(みゆきくん…)
昨日の、告白した時の彼の照れたような顔を思い出す。
(みゆきくんの事は、好きだな…)
だけど自分の1番じゃない。
それが申し訳なくて、普通に接してくれている深雪に合わせる顔が無かった。
かと言って、バッサリと他人になれるわけじゃない。
深雪と一緒にいる時間が嬉しくて、2人で一緒に帰る事を断る事ができないのは事実だ。
(深雪くんはいいのかな…このままで…)
茉莉は分からなかった。
昨日までと変わらないように見える深雪の態度。
しかし、ハッキリと違っている『ある事』に、茉莉は気付いていた。
そしてそれに触れられなかった。


「お前、いつのまにか茉莉の事名前で呼んでるじゃん」
「ああ、分かった?」
愛想笑いを浮かべて、深雪は総一郎に答える。
「うっそ、オレ全然気が付かなかった」
順平はカバンから携帯ゲーム機を出しながら、深雪を見る。

深雪たちは総一郎の家に来ていた。
彼の家は裕福で、一戸建ての家は一般家庭よりもだいぶ大きい。
総一郎の部屋も、男4人で集まっても狭苦しい感じは無い。
「もしかして、とうとう付き合う事になったのか?」
放課後に別行動をする事が多い総一郎は、他のメンバーよりも深雪の行動を分かっていない。
そして昨日の事を、深雪はまだ誰にも話していなかった。
「昨日、告白したけど」
「おおー、やったじゃん」
樹生がニヤニヤする。

「あっさりフラれた」

「…はあ?」
深雪の言葉に、笑顔だった3人が固まる。
(ウソだろ、深雪が…?)
(って言うか、茉莉だって深雪の事好きそうじゃん)
(マジかよ…)
『深雪』が女子から断られるという図が、3人の頭の中で全く想像ができなかった。
茉莉と深雪は実際仲が良かったし、茉莉が深雪を受け入れない理由が無いように客観的には見えた。
総一郎の部屋に男4人の沈黙が重い。

「深雪、マ…、マジで?」
口を開いたのは順平だった。
普段から深雪の事が羨ましくて、女なら誰しもが深雪の事を受け入れるものだと思っていた。だから尚更、深雪がフラれるという事がピンと来ない。
「ああ…」
深雪は特に表情も変えず、頷いた。
「し、信じられねえ…」
順平は無意識につぶやいていた。
「でもさ、まつりはオレの事全然嫌いじゃないみたいだし。だから…」
深雪は一呼吸入れて、ニヤリとした。

「オレ、全力で行く事にしたから」

「は?」
一同はきょとんとして、深雪を見つめる。
「あのなあ、そんな簡単にあきらめるワケねーだろ。マジになれる女なんて、そうそう出会えるもんじゃないだろ」
深雪は不敵な笑みを浮かべた。
決意するその眼差しは色っぽくて、男の目から見ても深雪は魅力的に映る。
「そーか、そーか。やっとお前らしくなってきたじゃん」
凹んでいるどころか、逆に闘志を燃やしている深雪を見て、樹生はニヤリと笑った。
「確かにここんとこ、ピュア過ぎて見てらんなかったもんな」
順平も安堵してため息をつく。
「オレは結構、今までもかなり深雪は全力だったと思うけどな」
総一郎が冷静に言い、深雪を茶化した。
「まあそういう事だから、これからもお前らまつりに余計な事、絶っ対言うんじゃねーよ。もうホントそれは頼む」
一同に深雪は念を押す。
「あ〜、なんだよ。落ち込んでるかと思ってちょっと焦ったのがバカバカしいぜ。早くvitaで通信やろうぜ」
樹生も黒いゲーム機を出した。
「順平が一番レベルが高いんだから、お前タンク担当しろ」
「しかし4人揃うのって、久しぶりだな」
雑談をしながらゲームをやり、深雪たちはお互いの近況を確認し合った。
深雪は茉莉にキスした事を、皆には黙っていた。


日も落ちてすっかり暗くなり、部活帰りの生徒たちで昇降口は賑やかな声に溢れる。
「今日はみゆきくんは待ってないの?」
「うん、用事があるって」
彼が待ってくれていない事の言い訳をしているような気がして、茉莉は1人で気まずい気分になる。
(やっぱり、昨日の事があるからだよね…)
どうしてもそう思ってしまう。
(でも、総一郎くんたちと盛り上がってたし、本当に遊びに行ってるから来ないだけなのかも知れないな…)
深雪に対して自意識過剰な気がして、自分が嫌になる。
今日だって、深雪が普通にしているのに自分ばかり意識している気がした。
(なんで、みゆきくん、あの時キスしたんだろう…)
そう思ったが、その答えは分かっていた。
ハッキリと「好きだ」と伝えられたのだから、キスの理由はそれしか無い。

電車では部活仲間と一緒だった。
自転車に乗ってしまうと、家までの景色はあっという間に茉莉の横を過ぎて行く。
(最近、結構ずっとみゆきくんと一緒だったんだなあ…)
改めて思う。
昨日から、深雪の事ばかり考えていた。
キスされた事も衝撃だったが、やはり深雪から告白された事が茉莉の心に響いている。
(断ったのに…)
今まで通りにしてくれると言った深雪。
(一緒に帰るって言ってくれたり、お昼ご飯や、部活が無い日誘ってくれたり…)
冷たい風に、茉莉は目を細める。
ハンドルを握る手を、ギュっと持ち直す。
(ホントは、すごく嬉しかったんだ…)
深雪に対する複雑な気持ちは、茉莉自身もうまく言葉にできない。
(でも今まで通りでいられたら、いいな…)
しばらく目をそらして、結果的には優しい深雪に甘えてしまう事になっても、このままでいたいと思っていた。



次の日の昼休みはソフト部の昼錬があり、茉莉たちは深雪たちと合流していなかった。
「そう言えばもう来月クリスマスじゃん、樹生なんか予定あんの?」
姿勢をダラっと崩した順平が言う。
「どーするかまだ決めてねえ」
「何、そのオレは選び放題〜みたいな言い方」
「お前こそ、クリスマスに暇人はオレ一択みたいな感じじゃんかよ」
樹生がブスっとして順平を睨む。
総一郎は我関せずと言った様子で、携帯で彼女とラインをしていた。

「オレも今のとこ予定無いけど?」
深雪はニコニコして会話に入っていく。
「そーかー…、って、いいの?オレたちと遊んじゃって」
「順平、オレが遊べるなんてまだ返事してないんだけど」
樹生はそう言いつつ、深雪の様子を伺う。
(フラれたって言ってたけど…)
順平も同じように、口にはしなかったが深雪の事が気になっていた。

クリスマスの話をする深雪たちの会話を、教室に残っている女子たちが聞き耳を立てる。
(みゆきくんたち、クリスマス誘い合ってるんだけど…)
(まさか樹生くんたちも、彼女いないのかな?)
(ウソ!勿体ない〜〜!思い切って誘ってみようかな)
見守る女子たちがザワついた。
深雪たちは外見の派手な集団だ。
誰もに受けがいい深雪を除いても、ガタイも良く迫力のある男らしい樹生も、女子生徒にはかなりモテていた。
順平はあごヒゲを生やしている強面な外見に反して、フレンドリーな軽いノリで親しまれていたし、総一郎は可愛い系で相変わらず一部女子から根強い人気があった。

(クリスマスか…)
去年のクリスマスはまだ順平にも樹生にも彼女がいて、深雪は年末にはアルバイトをしていた。
高校に入ってから特定の彼女を作っていない深雪は、クリスマスという特別な意味付けのあるその日を、過ごしたいと思う相手がいなかった。
もちろん、色んな女子から声をかけられた。
断る理由を考えるのも面倒くさくて、本当にアルバイトの予定を入れたのだ。
(まつりは…どうするんだろう)
深雪は茉莉にメッセージを打つ。
(まあ、オレと1日過ごしてくれるっていう奇跡は無理かもな…)


昼錬が終わり、着替えると茉莉は携帯を見た。
最近練習がある昼休みの終わりには、携帯をチェックするのが習慣になっている。
茉莉はいつも、ドキドキしながら携帯の画面を開く。
(みゆきくん…)
深雪から、今日は一緒に帰ろうとメッセージが来ていた。
それを見ると茉莉はほっとしてしまう。
「どうしたの?茉莉、ニヤニヤして」
部活のメンバーから声をかけられる。
「ニヤニヤしてた?」
「してたよ、何かいい事あった?」
(いい事……)
深雪の事を考えると嬉しくて、そして告白を断ってしまった先日の事を思い出して、胸が苦しくなる。
しかしこうしてメールをもらうと、やっぱり嬉しさの方が上回ってしまう。
「いい事、か…」
茉莉はつかさ達と教室へ戻った。



放課後、部活が終わり茉莉は深雪との待ち合わせ場所へ向かう。
玄関だと目立ち過ぎるので、校門を出て生徒達の流れと反対の方向に進んだ道路の角で、深雪は待っていた。
(もう、寒いのに…)
そんなところに深雪を待たせている事も、茉莉はすごく申し訳ない事だと思う。
それが分かっていても、茉莉はうまく言い出せない。
普段の自分なら、平気で言える事も深雪の前ではなぜか戸惑ってしまう。
「待っちゃったよね…?寒いのに、ごめん…」
本当に申し訳なくて、茉莉の開口一番に出た言葉がこれだった。
「全然!辛かったら学校で待つから平気だよ」
深雪は茉莉に笑顔を返す。
それを見て、茉莉はキュンとしてしまう。
いつも深雪には気をつかってもらっていると思う。

肩を並べて2人で歩く。
深雪に声をかけられてから、こうして何回一緒に歩いただろう。
何をしゃべっていいのか分からなくなっていた茉莉だったが、深雪が自然に会話を進めてくれる。
普通の緊張とは違う種類の緊張感を、深雪といる時には茉莉はいつも感じていた。
それは嫌な感覚ではなく、名残惜しくなるような、甘い感じ。
(みゆきくんは、いつも優しいな…)
居心地が良すぎて、普段は強気でいるのに、そうでは無い自分になってしまう。

電車に乗る距離は短くて、あっと言う間に最寄駅に着く。
当たり前のように、深雪が茉莉の自転車を押してくれる。
冬の空気は冷えて澄んでいて、白い息越しに見上げる空の星はいつもより数多い気がした。

「まつり」

「えっ…?」
名前を呼ばれるだけで、茉莉の動悸が早まる。
普段、普通に色々な人から名前で呼ばれているのに、深雪の口から出る自分の名前の響きは、特別過ぎた。
「大丈夫?」
「何が…?」
「風邪ひいた?今日寒かったもんな」
「………えっ?具合悪く見える?」
「なんか、顔が赤い気がする」
深雪にそう指摘されて、茉莉はますます赤くなってしまう。
「ええ、そうかな…?」
「うん、赤い」

深雪の顔が茉莉に近づいてくる。
(ええっ…)
茉莉は先日のキスを思い出して、一瞬身構えてしまう。
深雪の手が伸びて来て、茉莉のおでこに触れた。
「やっぱ、熱いよ」
深雪の声が近い。
手で触れられたおでこへと、血が集まってくるようだと茉莉は思った。
「熱くないから、平気だから…」
そう言って深雪を見上げた。
思った以上に近くにあった深雪の顔、彼の唇に目がいってしまった。
柔らかい彼の茶色い髪が、茉莉の前髪に触れた気がした。

「熱いよ」
深雪は微笑むと、おでこにあった手を茉莉の頭に乗せ、髪を触った。

(ヤバイ…)
顔が火照る。
茉莉は自分でも分かるほど、首筋まで熱くなっていた。
「えっと…、風邪って言うか、疲れてるのかも。今日は帰ったらすぐ寝るよ」
熱くなっているのを誤魔化すように、茉莉は何とかそう言った。

「オレ、チャリこぐから、まつり後ろに乗って」
深雪はそれまで押していた自転車にまたがった。
「え…」
「寒いし、早く帰ってゆっくり休んだ方がいいよ、乗って」
「あ…うん」
深雪に促されて、茉莉は後ろに乗る。
「ちゃんと掴まって。どこ掴んでくれてもいいぜ」
「うん……」
茉莉は深雪のコートの生地だけを掴む。


深雪は黙って自転車を走らせる。
(みゆきくん……)
普段は自分で自転車をこいで進むこの道。
後ろの席から流れる景色を見るのは不思議な気分だった。
目の前の深雪の背中は、遠目で見るよりもずっと大きく感じる。
(私、すごいドキドキしてる……)

今日の深雪は何か違う。
落ち着いていて、なぜか余裕がある。

(告白したのはみゆきくんなのに、まるで私が告白したみたい…)

抑えようとしても、ドキドキは止まらなかった。
頬が熱くなる。
ただ一緒に帰っているだけなのに、こんな風になってしまうのが茉莉には信じられなかった。


 

ラブで抱きしめよう
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