ラバーズ(Lovers) |
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今日もサボらずに、大学へ行った。 その間も彼女のことが気になって仕方がなかった。 ボクは出会ってから、四六時中彼女のことを考えっぱなしなんじゃないだろうかと思う。 アルバイトをしていても、彼女のことが頭から離れる時はなかった。 「ごゆっくりどうぞ」 ボクは漫画喫茶の受付に立ち、客のリストをパソコンに打ち込んでいた。 自動ドアが開き、人影が近付いてくる気配にボクは声を出しかけた。 「いらっしゃいま……」 入ってきたのは、彼女。杏菜だった。 「ど、ど、ど、どうしたの?」 「んーーー?ヒマだったし。来ちゃった」 彼女は幾何学的な柄模様の短いスカートの下に足元が切れた黒いタイツみたいなのをはいて、華奢な脚をよりいっそう華奢に見せていた。 髪の毛を耳の上で留めていて、今日のその髪型もボクの好みバッチリだった。 「え、え、…えっと…」 まるっきりの不意打ちで、ボクは思わずどもってしまう。 「とりあえず、受付してよ」 にっこりと彼女は笑った。 こうして外で改めて客観的に見る彼女は、やっぱりすっごい可愛い。 「優哉、何時に終わるの?」 ここは24時間営業の店だ。 「えっと、11時……」 「じゃあ、それまで。…終わったら一緒に帰ろ♪」 突然の彼女の来訪にボクはドギマギして、上の空で受付を済ませた。 横で見ていた他のアルバイト店員が、ボクに声をかけてくる。 「誰?…筧の知り合い?」 「……はあ、まあ、…」 「まさか、彼女?」 怪訝な顔でボクをじっと見つめる。 彼は髪を茶髪に染めていて、こんなところでバイトするよりもホストなんかしていた方が似合うタイプだ。 そしてボクは彼が苦手だった。 「いえ…違いますけど……」 「だよなあ、…すげえ、可愛いもんなあ。あれが筧の彼女だったら、世も末だよな」 「………」 (何だよ、世も末って) こいつは何様のつもりか知らないが、ボクを上から目線で見ていた。 まさか彼女とボクが一緒に住んでいるなんて、考えもしていないだろう。 ボクは心の中でちょっと優越感に浸って、ほくそ笑んだ。 彼女は個室には行かずカフェ仕様になっている席に着いて、ここの美味くないコーヒーを飲みながら雑誌を読んでいた。 小さい彼女の存在感は、この場所ではとても大きかった。 深夜の漫画喫茶で一人で過ごしている可愛い女の子の姿は目立つし、すごく場違いな感じだ。 バイトが終わり、ロッカーに荷物を取りに行ってから彼女の席に向かう。 「………」 彼女があまりにも真剣な顔だったから、ボクはなかなか声がかけられない。 何を読んでいるんだろうと思ってそっと覗き込むと、占いのページだった。 「ああ、…優哉か。びっくりした」 「……終わったよ、バイト」 「じゃあ、行こうか」 彼女は雑誌を戻して来ると、待っていたボクに腕をからめてきた。 (………) すごいドキドキしてくる。 彼女は、そうするのが当たり前みたいに涼しい顔をしていた。 「何か買って帰ろう〜〜〜。なんか、お腹すいちゃった」 ボクは彼女に引っ張られるまま、店の出口へ向かう。 さっきのホスト風の奴が、そんなボクらの姿に驚いていた。 「ど、どうしたの?急に来て……」 深夜に腕を組んで歩くボクたちは、どう見てもそういう関係に見えるだろう。 「だーって、ヒマなんだもん。お迎えに来ちゃった♪」 「お迎え……」 あまりにも耳慣れないその響きに、ボクは心の底からジーンとしてくる。 彼女といると嬉しいことばかりあるような気がする。 今のボクの生活は、離れている時でさえ完全に彼女中心だった。 コンビニに寄ったりしていていて、部屋に着いた時はもう12時近かった。 さすがにここのところ熟睡できていないせいか、ボクは眠くなり始めていた。 家に着くなり、ボクはシャワーを浴びた。 部屋に戻ると、彼女は部屋着に着替えていてキッチンで歯を磨いていた。 そんな姿を見ると、本当に一緒に暮らしているんだって実感する。 …だけどやっぱり夢みたいだ。 今、目を閉じて再び開いたら彼女はいなかった、なんてことがあっても全然不思議じゃない。 「寝ようか……」 「…う、うん…」 こうして二人揃ってベッドに入る、なんていうのは初めてだった。 これから一緒に暮らしていくつもりだったら、寝るところは別々にした方が精神衛生上いいかもしれないと、ボクは本気で考えた。 電気を消すと、部屋はオレンジ色の小さな電球が作る薄い灯りだけになる。 ドキドキが一気に高まってしまう。 ボクは先にベッドに入った。 そしてすぐに彼女に背を向ける。 彼女がベッドの縁に座る気配がする。 夜は本当に困る、とボクは真剣に思う。 「優哉……?」 「!」 彼女がボクの肩に手をかけたから、ボクはすごくびっくりして思わずビクンとなってしまった。 「ねえ…」 振り返ると、彼女の顔がボクのすぐ近くにあった。 「な、な、な、な……何?」 「優哉って、……優しいね」 「えっ……?ええっ??」 急にそんなことを言われても。 薄い灯りの下で間近に見る彼女の顔は、ものすごく色っぽかった。 「いいんだよ……」 「な、…な、…何が???」 ボクは完全にビビって、体を引くあまり背中が完全に壁にくっついていた。 もうこれ以上逃げ場がない。 「いいのに、……しても」 「し…………」 さすがにその意味は分かる。 だけどボクはこんな時どうしていいのか分からなかったし、女の子をくみし抱く、なんて想像の中だけで、とても実行できそうになかった。 「分かってるでしょ?……優哉は、私としたくないの?」 「えっ…えっ…えっ…えっと…」 ボクはしどろもどろになる。 いつの間にか彼女はボクに密着していて、今にも馬乗りになりそうな勢いだった。 「別に、ガマンしなくてもいいのに」 彼女の指先がボクの胸にかかる。 「ちょ、ちょっと……!」 ボクは彼女を押しのけて、その勢いで自分も飛び起きた。 「優哉…?」 「あ、あ、あのさぁ……」 呂律の回りきっていない舌で、ボクは懸命に言った。 「だ、だ、だめだよ、そういうの!」 「…?…」 彼女はきょとんとしつつ、ボクを凝視している。 「そんな風に、…するの、……やめなよ!」 「……」 「そういう事って、好きな人としないと!…『別に』…なんて、そういうのちょっと変だよ!」 ボクはなぜかムキになって、軽く怒鳴ってしまった。 彼女に対して、ビビっていたっていうのもある。 だけど、今ボクが言ったことは本当に思っていることだった。 「優哉……」 一瞬だけど、彼女はすごく悲しそうな顔をした。 ボクは悪いことを言ってしまったのかと思って、即座に後悔し始めた。 だけど、こうすることしかできない。 「優哉」 「………!」 彼女はボクに抱きついてきた。 ベッドの上で座った姿勢で、ボクは彼女に強くハグされた。 さっき怒鳴った時の変な高ぶりと押し迫ってくる強烈な興奮とで、ボクは変になりそうだ。 「…ありがとね……」 「……杏菜」 ボクは無意識に彼女へと手を回そうとしていた。 「あ」 彼女は体を離した。 ボクは伸ばしかけた手を、あわててひっこめる。 「初めて、名前で呼んでくれたよ?」 「………あ」 そう言えばそうだ。 女の子の名前を口に出すのも恥ずかしいボクが、女の子を抱けるわけなんてなかった。 物事は、段階を踏んでいかないと…。 「優哉……」 「あっ…」 と思ったときには、ボクは彼女に押し倒されていた。 「ちょ、…ちょ…ちょっと……」 「優哉の言ってくれたこと、嬉しいよ…」 そう言いながらも、彼女はいまや完全にボクの上に乗っかっていた。 「だ、…だから…ちょ、ちょっと…」 (うっ!) スエットのズボンの上から、ボクの局部に暖かいものが触れた。 …彼女の手だ。 「ななな、何す……」 「じゃあ、エッチはしないでおく」 彼女の体が、いつの間にか下の方にずれいていた。 「えっ……あ、杏菜っ」 抗おうとしたなら、抵抗できたはずだ。 それなのにボクは完全に固まってしまって、彼女にされるがままだった。 「ええっ……」 彼女はボクのズボンを、トランクスごと下ろした。 ボクのそこも完全に固まっていて、解放されたそれは空中で呼吸をするかのごとく勢いよくそそり立った。 「ぁああっ…!」 女の子みたいな情けない声を出してしまった。 彼女はご飯を食べる時みたいに口を開けて、ボクのそれをしっかりと咥えていた。 「ああ、……あっ…」 あまりの衝撃で、何をされているのか頭がついていかない。 ただその場所がニュルニュルしていて、猛烈に気持ちが良かった。 「だ、…だめだよっ…杏菜っ…あっ…」 21年間の人生で、自分の手以外のものがそこに触れたことはなかった。 なのになのになのに、 今、か、かかかか、彼女の口が……。 「あぁぁっ!」 あっ、 という間にボクは噴射してしまった。 しっかりと彼女の口に咥えられた状態で。 「はあ、はあ、はあ………」 ボクはまるで犯されたみたいな状態で、全身の力が抜けて放心した。 彼女がゴソゴソしている間も、目を閉じたまま全く動けなかった。 「よいしょっと」 ズボンが戻される。 「…………」 こんな事をされて戸惑っていた。 それに速攻で果てたこともとても情けなく、そして彼女の口の中で出したことも申し訳なく、ボクは何て言っていいのか分からない。 暫く沈黙していると、彼女は寄り添ってきた。 近づいてきた彼女は、ボクの耳元でそっと言った。 「可愛かったよ、優哉」 「………」 「おやすみぃ」 そしてボクの頬に軽くチュっとすると、ボクの左肩に頭を付けて眠りの体勢に入ってしまった。 「@%×◎☆………」 思わずボクは言葉にならないため息をついた。 童貞でいて、キスさえもしたことのないボクの、今夜のこの体験は信じがたいものだ。 なんてことをされてしまったのだろう…。 杏菜、…ボクが言ったことの意図は理解してくれなかったのだろうか。 言いたいことは色々あったのに、横にくっついて眠る彼女の存在はあまりに心地が良かった。 数日間溜め込んでいた欲望が少し開放されて、ボクの体も安心して彼女の安らぎの中に引き込まれる。 (杏菜………) いつの間にか、ボクも彼女の体に腕を回していた。 |
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