那波にあちこち体を触られてた。
この部屋には2人しかいなくて、今日はきっと誰にも邪魔されない。
このまま…きっと。
「えっ、う、嘘」
那波が私のTシャツをさらに上に引っ張り上げてくる。
逆らえないまま、私は上半身裸にされてしまった。
「やだ、恥ずかしいよ」
私は思わず腕で胸を隠した。
那波を見ると、バッチリ目が合ってしまう。
この状況で。
(どうしよう…)
那波の視線が、もっと下に移る。
「………」
黙ったまま、那波は私のスカートに手をかけた。
(やだ…、うそ…)
抵抗する間も無いまま、スカートとショーツをあっという間に取られてしまう。
「やだっ、ダメっ!」
全裸になってしまう。
人前で、自分がこんな姿になるなんて、信じられなかった。
もう恥ずかしくて死にそう。
「ダメっ…、や、やっぱり…」
「ダメじゃねーよ。もう腹くくれ」
那波は私から一瞬離れると、自分もTシャツを脱いだ。
彼が脱ぐ事で、私はもっと恥ずかしくなってくる。
側にいるだけでもドキドキしちゃうのに、こんな状態に頭がついていかない。
「若林」
那波の手が、私の手を取る。
「やだ〜〜、恥ずかしい〜」
涙が出そう。
私の腕が、那波に掴まれて広げられていく。
もう本当にダメだと思ったけれど、体に力が入らない。
大好きな那波に対して、抵抗なんてできるわけなかった。
(ヤダヤダ、本気で恥ずかしいっ)
私は目を閉じて、顔をそむける。
両方の手のひらが肩の辺りに抑えつけられている。
ものすごく無防備な姿を、私は今、彼の前にさらしていた。
「んん…」
キスされた。
私の胸に触れる、彼の肌の感触。
まだ、距離が近い方が良いと思った。
自分の体を見られてしまうのが恥ずかしすぎて、くっついている事でちょっとホっとする。
(ああ…)
那波の舌が、唇を割って入ってきた。
目を閉じていると、この状況全部が信じられなくなってくる。
那波の部屋で、裸で、こうしている事、全部が嘘みたいだった。
那波のキスも。
「若林、目、開けて」
自分でも気が付かなかったけど、相当ギュっと目を閉じていたみたいだ。
目を開けるのに、こんなにも時間がかかるなんて。
那波の顔が近い。
裸の肌が、触れ合っている。
目が合うと、実感してしまう。
「もう、覚えてないなんて言うなよ」
「い、言わないよ…」
那波はちょっと目を細めると、またキスをしてきた。
唇が近づくと、自然に目を閉じてしまう。
掴まれていた左手から、彼の右手が離れた。
「んーっ…」
唇で口をふさがれて、声が出ない。
那波が、裸の私のその部分を触る。
「やっ!」
少し触れられただけで、体が大きく跳ねてしまった。
「若林、この前の時もしっかり濡れてたけど」
「もう、やだ〜…」
(そんな事言わないでよ…)
「…あぁっ!」
よく分からないけど、那波が少し指を動かしただけで、体が勝手にビクンとなってしまう。
「ダメ…、やだっ…那波っ」
「へ〜、嫌なんだ」
反対の手で頬を触られて、反射的に私は目を開けた。
ちょっと睨んでるみたいにも見えてしまう、那波の真剣な目。
顔を見ると、好きだという気持ちが高まる。
もう既に信じられないぐらいドキドキしてるのに、この鼓動は限界を超えそうだった。
(嫌じゃないけど…)
那波の目を見ると、もっと切なくなってくる。
彼の指は私のそこにあった。
指が少し動くだけで、私の足まで自然に動いてしまう。
「ダメっ…もう…」
この状況が辛い。
ドキドキして、自分の体が自分のものじゃないみたいで、どうにかなりそうだった。
那波の事が好き過ぎて、こんな事をしてるのが恥ずかしすぎて。
何もかも、全然コントロールできない。
体も心も、苦しくてたまらない。
どうしていいか分からなくて、私は唇を噛んで目を閉じていた。
ゆっくりと脚を広げられてた事にも、気付かなかった。
「ああっ…」
脚の間に、違和感を覚えた。
今度は本当に、感覚的に苦しくて、痛い。
「あっ…、うぅんっ!」
苦しくて、お腹に響く動きが、やっぱり苦しくて…。
「はぁ…あぁ…」
(ああ、終わったんだ…)
やっぱり途中からの事、あんまり覚えていない。
目を開けると、那波が私の隣にいた。
彼のベッドで、裸の私。
恥ずかしくて、タオルケットを首の方まで引っ張る。
「あ…」
近づいてきた彼が、私の髪にキスした。
まだドキドキしているけれど、運動した後の動機みたいな感じも混ざっていた。
「恥ずかしいんだけど…」
那波の目が見られなかった。
私は彼の首元に自分のおでこをくっつけた。
那波は黙って、髪を撫でてくれる。
それが心地よくて、裸の肌に触れる彼の肌の感触も気持ちが良くて、
セックスってすごくエッチな事なんだけど、こんな感じにくっついていられるのはいいなって思った。
こんな風に全てをさらしてしまうなんて、普段だったら絶対に考えられない事だ。
だけど、今、こうしてる。
やっぱり那波は私にとって特別で、特別だからこそできる特別な事。
(なんか、切ない…)
那波の胸に手を当てた。
彼のドキドキも、伝わってくる。
この時間、このひとときが、今までの経験や想像を超え過ぎてて、現実じゃないみたいな気がした。
「那波…」
顔を上げた。
すごく近くに、那波がいる。
改めて、抱きしめられてたんだなって思う。
裸の彼の、腕の中にいる。
人にきつい印象を与えてしまう彼の目だけど、今目の前の瞳には優しさを感じる。
それが嬉しい。
「私の事、好き…?」
こんな事聞くなんて、もう今更な気もする。
だけど聞きたかった。
そう言ってくれる、彼の声が聞きたかった。