一度そうなってしまうと、そうするのが当たり前みたいになった。
あの日から4日連続で彼の部屋へ行っている。
今日もそうだ。
男子と付き合った事が無いから、これが普通なのかどうか分からない。
ただ、「付き合う事」って、想像してたより不道徳的だ。
こんなに毎回、会ってる間ずっとこういうものなんだろうか。
「うーん…」
那波は私の横で爆睡してる。
夜にバイトをしてるから、昼間の彼はいつも眠たそうだった。
ベットで横になると、彼はエッチなことをするか、寝てるかのどっちかだった。
(こんなもんなのかな…)
それでも那波の寝顔が無防備過ぎて、それが普段の彼とあまりに違うから、私はちょっと嬉しくなる。
「んー…」
彼の手が動いて、無意識に私の肌に触ってくる。
そんな仕草にすごくドキドキして、1人でバカみたいにあせってしまう。
(でも幸せなのかな…)
安心しきっている那波の寝顔は可愛い。
それに私情を抜いて客観的に見ても、やっぱりカッコいいと思う。
これが自分の彼氏だと思うと、ちょっとニヤけてくる。
(好きだなあ…)
エッチしてる時よりも、今の時間の方が好き。
こうやって那波を思う存分眺めていられるこの時間が、すごく良い。
すごく贅沢な感じ。
彼を独り占めしてるーって気分になる。
(やっぱり幸せかな…)
私は改めて那波を観察する。
目つきはキツイくせに、閉じた時の睫毛の長さがすごい。
絶対私より長いと思う。
左側のこめかみから頬にかけて2つ、ほくろ。
(ヤバイ、ほくろまで好きって思う…)
私の目に映る那波の全てが好きだ。
自分とは全然形の違う、あごから鎖骨へのライン。
見ているだけでドキドキが大きくなってくる。
(あー、もうすごい好き…)
私はそーっと彼に近づいて、頬を彼の肩にくっつけて目を閉じた。
「明日土曜日だから、うちに来れねーし、どうする?」
那波はTシャツに腕を通しながら言った。
こうやって那波の家にいられるのも、彼の父親が働いてる平日だけだ。
「私、渋谷で見たいものあがるんだ。買わないかも知れないけど」
この前雑誌で見て、気になってた雑貨があった。
「じゃあ、オレそのままバイト行くから、明日は渋谷行くか」
「うん」
部屋を出て、那波が鍵を閉めるのを後ろから見てた。
この瞬間、いつも何か不思議な感じになる。
那波の家に来て、学校に来るように言ってた事を思い出す。
まさか何か月か後に、こんな状況になるなんて。
本当に信じられない事が現実になるって、あるんだ。
「ん?何?」
あんまりじっと見てたから、振り返る那波に言われた。
「え?何?」
知らんぷりして、私もそう返す。
那波は目の端だけ、少し表情を崩すと、私の手を取って歩き出した。
この自然な感じ。
(ああ…)
今の那波の表情で、もうクラクラするぐらいに私はヤラれてる。
那波の事が好き過ぎて、ちょっとの事で異常に体力を消耗してる。
「ただいまー」
「おかえりなさーい」
母がリビングから答える。
「もうご飯いつでも食べられるわよ」
私はちょっとだけ顔を出す。
「外、めちゃくちゃ暑いよ。先、シャワー浴びてくる」
部屋に荷物を置いて、風呂場へ向かう。
あの日から、シャワーを浴びる度に思う。
自分のこの肌に、那波が触れた。
那波の手も、那波の肌も、この肌に触れたんだ。
そう思うと、この自分の体でさえ今までとは違う。
触り会う、肌の温度。
思い出すと、キュンってなる。
ドキドキがよみがえる。
那波といない、1人の時間でさえ、那波ばっかりの自分になる。
彼氏ができるって、こういう事なんだろうか。
世の中の女の子はみんな、こんな気持ちを抱えて過ごしてるんだろうか。
恋するってすごい事だって、改めて思う。
自分が今まで妄想してたものとは全然違う。
もっと生々しくて、もっと重たい。
知らない感情と感覚が、自分の外と中から湧き上って来て、自分が変わってしまう。
……そして、すごい幸福感に包まれる。
(ああ〜…もう…)
那波の事を考えると、ソワソワしてしまう。
さっき別れたばかりなのに、もう会いたくてたまらない。
ここのところ毎日会ってるのに、もっと会いたい。
いつも那波の側にいたい。
彼といると体力を消耗し過ぎて、帰って来るとドっと疲れてしまう。
だけどそれ以上に元気をもらってる気がする。
(早く会いたいな…)
明日会うのに、待ちきれなかった。
「なんか出掛けるのも久しぶりだな」
お昼に待ち合わせをして一緒に電車に乗って、渋谷に来た。
ここ数日間、ずっと那波の部屋で過ごしていたから、2人で街に出るのは久しぶりだった。
土曜の渋谷はすごい人で、それでも彼は良い意味で目立ってる。私の目にそう映ってしまうだけかも知れないけど。
(ああ、やっぱりカッコいいな…那波)
こうして2人で歩いているだけでも嬉しい。
結局、何をしていても那波と一緒なら嬉しいんだ。
「あ、ここ、ここ」
雑誌で調べてきたお店に行ってみる。
女子らしい可愛いステーショナリーが沢山あって、私は自然とテンションが上がった。
その場にいた那波は不機嫌そうだった。
「なんかお前の部屋にありそうなもんばっかじゃん」
「そうかな?」
「以外とベタに女だよな、お前」
「ええ〜そうかなあ」
「そうだよ」
店内は女子ばかりで、那波は居心地が悪そうだった。
おまけに、中学生みたいな集団にさっきから結構ジロジロ見られてるし。
「あの人、カッコいいよね」
「隣、やっぱり彼女なのかな」
コソコソしゃべる声が、こっちにも聞こえてくる。
確かにこの場所での彼は目立ってた。
「オレ、向こうの靴屋見てくるから、気が済むまで見とけ」
そう言うと、那波は逃げるように店の外へ向かう。
(あ…)
雑貨を見るよりも、那波と一緒にいたかった。
那波を追いかけて、私も店の外に出た。
小走りで駆け寄ると、思わず彼のTシャツの裾を掴んだ。
「あれ?もういいのか?」
急に那波が立ち止まるから、追いかけてきた勢いで甘えるみたいにくっついてしまった。
「うん…」
「せっかくだし、オレのこと気にしないで見てくれば?」
「いいの、いいの」
顔を上げると、ホントに甘えてる感じになってしまう。
こんな人通りのあるところでの思いがけない近距離で、急に恥ずかしくなってくる。
「ならいいけど」
那波の左手が私の肩に回る。
こんな密着して歩いた事なんてなかった。
自分から迫ったみたいで、すごーく恥ずかしい。
エッチしたら何か越えられるかと思ってたけど、全然だ。
今、こうして歩いてるだけでも、すごく緊張する。
彼のことを前よりもよく知ってしまったから、余計にドキドキしてしまう。
「もう今日バイト、サボろうかな」
「え?」
「サボるくせがつくと、キリがねえからサボらないようにしてたんだけど」
「サボりくせって…それ、あんたが言える?」
学校に来なかった那波を思い出して、私は思わず突っ込んだ。
「うるせーよ。…でもマジで、今日はサボろうかな…」
那波の口調が予想外に真面目だったから、私は不思議に思う。
「え?なんで?なんで今日?」
「なんで?ってお前なあ…」
私の肩をつかむ那波の手に力が入る。
至近距離の彼はちょっと照れてるみたいにも見えたし、ちょっと色っぽくも見えた。
「じゃ、オレがお前に付き合ったから、今度はお前が付き合う番」
「うん、いいよ。どこ行くの?」
エスカレーターに乗る時には、いつも通り手をつないでた。
この距離でもドキドキするのに、肩を抱かれながら密着して歩くのは悪くはないけど、ちょっと緊張し過ぎる。
私は何となくホっとしながら、彼に手を引かれてついていった。
「って、ここ!!な、何っ!」
入口に入るまで、全然気が付かなかった。
狭い通路に、部屋の写真のパネル。
(こここ、ここって…)
そう、…ここは…間違い無くラブホ。
「いーじゃん。お前初めてだろ、好きな部屋選べよ」
「そ、そそ、そういうんじゃなくて…」
そう言いつつ電気のついている部屋のパネルを見てしまう。
画面の暗い部屋がほとんどで、暗いってことは…使用中ってことで。
(こんなに昼間から、そうしてる人たちが、こ、こ、ここに…)
頭の中で、部屋の壁が透明になる。
色んな部屋で、カップルがそういう事をしているかと思うとクラクラする。
「早くしろよ」
那波の声でハッと気付くと、
私たちからちょっと離れたところでカップルが待ってた。
(こ、こ、この人たちも、こ、これから…)
そんな考えが頭をよぎったけど、順番を待たせてるプレッシャーで、私は適当にボタンを押した。
狭い狭いエレベーター。
いきなり那波にキスされる。
(うそ…ええ……)
彼の大胆な行動に思考がついていかない。
エレベーターを降りて、部屋まで那波に引っ張られる。
「き、今日はそういう事しないと思ったんだけど…」
ここまで来ておいて、今更だけど、私は言った。
「ここか」
那波は私の言葉を無視して、部屋のドアを開ける。
あっちこっちで、現在進行形でエッチしてる人が沢山いると思うとすごく変だった。
部屋に入るとすぐに那波に抱きしめられた。
「な、那波っ…、なんでっ…」
私は完全に流されてた。
抱きしめられるのは嬉しかったし、やっぱりドキドキするのはしょうがない。
「うーん…ガマンできなくなったから?」
そう答えると、那波はまたキスしてくる。
最近の那波は激しすぎて、いつも私はされるがままだ。
「お、お、男の子って…」
私は那波を押して、体を離した。
「何?」
そう言う那波の目が、もうヤバイ。
私を抱く時の目。
要するに、エロくなってる。
だけどそんな彼の顔も、好き。
「そ、そんなに…したくなるものなの?」
「うん」
(そ、即答…)
あまりにキッパリと言われて、ちょっと脱力した。
「もしかして、嫌?」
「え…?い、嫌って、わけじゃ…」
「ならいいだろ、来いよ」
かなり強引に手を引かれて、部屋の奥へと進む。
(う、う、うわーーーーー)
ベッドが。
まさに、ベッドのための部屋。
部屋の大部分をベッドが占めていて、ここでやってくれと言わんばかりだった。
「ちょ、ちょっと…、あの、…えーっと…」
拒むとか、そういうのじゃないけど、今の気持ちは…。
(ひ、引くよ〜…)
「やっぱちょっと先、シャワー浴びさせて。オレ汗だく」
「えっ??えっ…えっと…」
「せっかくだからラブホ部屋観察でもしてたら?」
那波はすでにTシャツを脱ぎながら、勝手にシャワーを浴びに行ってしまった。
「
もう…」
1人取り残されて、だんだんと落ち着いてくる。
(ラブホって、こうなってるんだ…)
さっきまであせってたけど、改めて部屋を見渡してみる。
ところどころ内装がポップな感じになってて、やっぱり普通のホテルとは全然違う。
何て言うか、とってつけたような空間って感じ。
「はあ……」
入口とベッドの間に、2人で座れるソファーがあって、そこの机にパンフみたいなのが置いてあった。
何となく手に取ってみる。
料理とか時間とか料金とか、そんな案内が書いてあった。
「………」
全然心の準備ができてない。
今日こんな展開になるなんて思っていなかった。
昨日の今頃も那波とベッドにいた。
一昨日の今頃も。
それからその前の日も…。
那波はシャワーからすぐに出てきた。
ズボンだけ履いて、上半身は裸。
首にタオルをかけて、私の隣に座る。
「えーっと、…私…」
「ん?」
那波は顔を傾けて、私に近づいてくる。
すぐにキスされた。
(んん……)
那波のキスは好き。
キスされちゃうと、色んな事がどうでもよくなってしまう。
今日はそんなつもりじゃなかったとか、もうちょっと街を歩きたかったとか、そんな考えも、だんだんと薄くなってしまう。
でも…。
「ちょ、ちょっと待って」
「何?」
「………」
私は那波からちょっと離れた。
離れたと言っても、本当にちょっとだったけど。
「なんか、急過ぎて…。ちょっとついていけないって言うか…」
「………」
「突然連れて来られたって感じで…」
「………」
彼は私から手を離す。
(怒っちゃった…?もしかして…)
那波は普通の状態でも機嫌が悪そうに見えるから、黙られると結構怖い感じがする。
最近あんまり感じていなかったけど、今、那波の雰囲気がちょっと固くなった。
「………」
「………」
沈黙に耐えられなくなって、私は口を開いた。
「ねえ、ちょっと何か言ってよ」
「ごめん、……マジで、嫌だった?」
那波から「ごめん」なんて台詞、気持ち悪い。
「ヤ…、嫌じゃないけど…なんか…」
「……」
那波はタオルで顔をゴシゴシ拭く。
「若林が……」
「?」
「…お前が…」
顔にあてたタオルを押さえたまま、那波が私を見た。
じっと見られると、やっぱりドキドキしてくる。
「って、お前に言っても分かんねーか」
那波は立ち上がって、小さい冷蔵庫みたいな自販機の方に行ってしまう。
「な、何?何よ、言ってよ」
「嫌だ」
お金を入れてコーラを取ると、私から少し距離を置いて座った。
「飲む?」
「いい…だから、何よ。気になるじゃん」
那波はコーラをひと口飲んでからテーブル置くと、急に私に近づいてくる。
「………」
「………」
キスの続きが始まる。
那波に触られると、ダメ。
私だって嫌じゃない。
嫌どころか、逆。
だって、すごい好きだし…。
「オレって求め過ぎ?」
「えっ?」
(急に聞かれても…)
「わ、分かんないよ…」
那波から、『求める』って言葉が出て来た事に、不覚にも一瞬萌えてしまった。
「お前はどうなの?」
「えっ?わ、私…???」
「うん」
「………」
そんな事聞かれても困る。
こんな恋愛経験の無い私に、その質問に答えさせるのは無茶だ。
「あっ」
那波の手が私の足を触った。
そう思った次の時には、もうスカートの中に手があった。
「えっ…やっ」
那波の指がショーツの間から、私に触る。
「やだっ…」
「なんで濡れてんの?」
「やっ…、知らないっ…」
「濡れてんの、自分で分かんねえの?」
「わ、分かんないってば…」
ウソだ。那波の指が、私のその間を滑ってるのは分かる。
彼の指を、私が濡らしちゃってるのは分かる。
「ほら」
那波がその指を私の目の前に持ってきた。
濡れてる彼の指を、見てしまった。
「ヤダっ…」
「ヤダって、お前が濡らしたんだけど」
「やめて〜…恥ずかしいから…」
本当に恥ずかしくて、もう逃げたい。
逃げたいのに、私は那波にベッドまで連れて行かれる。
押し倒されて、あっと言う間にショーツを取られた。
「ちょっと…やぁっ…」
彼の指が私をなぞる。
「あぁっ…、やっ…」
那波がちょっとだけ指を入れて、すぐに抜く。
その時、自分でもハッキリ分かるぐらい、溢れてしまった。
「すげー濡れてくるんだけど」
(そんな事言わないで…)
「ダメっ…、恥ずかしいっ…、ヤダッ…」
そう言ってるのに、さっきから全然抵抗になってない。
「これって、お前もオレとやりたいんじゃないの?」
「やっ…、も…」
「ほら」
那波に腕を掴まれる。引っ張られたその先に、彼の…。
「やあんっ、那波っ」
手で、しっかりと那波のものを触ってしまった。
思ってたよりずっと大きくて、固くて、生々しい感触。
「お前が濡れてんのと一緒」
「やぁんっ…」
那波が手を放してくれないから、私の手の中の感触の生々しさが凄すぎて…。
(男の子ってこんな風になっちゃうんだ)
「だめ、何か…やだ、恥ずかしいっ」
「ちゃんと触ってみろよ、お前のせいでこんなになってんだから」
「………」
那波がこんなになっているっていう…この感触で私も余計に興奮してくる。
「こんなに…なっちゃうの?」
(こんなのが、入っちゃうの?)
那波を見ると、少し苦しそうな顔の彼と目が合う。
その表情のあまりの色っぽさに、私の興奮も高まってしまう。
「お前のせいで、さっきからずっとこんなになってんの」
「………」
男の子って大変、って普通に思ってしまった。
もう抵抗をする気にもなれなくて、いつの間にかお互い全裸。
「ちょっと、舐めてみる?」
「ええっ??う、う、うそでしょう???」
「その反応、ちょっと失礼じゃね?……別に、嫌ならいいけど。オレはお前の舐めるの嫌じゃないけどな」
「ええ……」
そう言われちゃうと、断れない。
正直言うと嫌じゃないけど、だけど、こんな事した事ないし、これってスゴイ事なのでは…。
(もう…)
勇気を出してちょっと舐めてみる。
何をどうしていいのか全然分からない。
私のこれまでの人生の中で、エロい情報なんて全然仕入れてこなかった。
エッチな写真ですら、全然見た事が無いのに。
「な、何したらいいのか分かんないよ…」
「適当に触って、適当にくわえたりしてよ」
(『くわえる』って!!!)
改めてエッチな事をしてるんだなって思う。
この状態があまりにもエッチ過ぎて、軽くパニックになってきた。
(こんな事しちゃうなんて…うわーん、どうしよう、でもしないと…)
だけどしてあげたい気持ちも、ちょっとだけあった。
那波の事が好きだから、那波を喜ばせてあげるような事はしたい。
でも恥ずかしい。
(ああ…もう…!)
「んん…」
目をつぶって、思い切って那波のそれを口に入れた。
多分、先の方だけだけど、生々しい感触を口の中に感じる。
丸くて、さっき触った時は固いと思ったのに、柔らかい。
私は無意識に、その感触を確かめるように、それを口の中で舐めた。
「やっべー、……すげー気持ちいいんだけど」
(ほんと?)
そう言われて、ちょっとホっとする。
こんな状態でそんな風に考えるのもおかしいんだけど。
「ほんとに?」
私は口を離して言った。
恥ずかしくて死にそうだったけど、那波を見上げた。
「お前はホントに可愛いな」
そう言って髪を撫でてくれる。
その流れで、私はまた彼を口に含む。
「うん…、マジでもうヤバイ」
那波に促されて、私は体の向きを変える。
(ああ……)
彼の指が、私に入ってくる。
私の口には、彼の…。
(やだっ…、気持ちいい…)
思わず口を離してしまう。
「ダメ、続けて」
那波に言われるままに、また私は彼を口に入れた。
(あっ…、あっ…)
指が奥を触るから、思わず体がビクンと反応してしまう。
「はあっ…、ああっ…」
声が出てしまう。息が上がってくる。
「だめっ…、ああんっ…」
那波の指が抜ける。
「オレも、もう限界」
頭を枕に乗せられて、しっかり抱き合える形になる。
「ああっ…、ああんっ!」
さっきまで私の口の中にあった那波のものが、私の中に入ってくる。
あんなに大きくて、入れるのは無理だよって思ってたのに、こんなにも簡単に自分に入ってしまうのが不思議だった。
それも、すごく濡らしちゃってたから、まるで待ってたみたいに那波をすぐに奥まで受け入れてしまう。
(ああ…どうしよう…気持ちいい…)
私は首を振る。
体の中から、うなじの方まで震えるようなこの感じ。
「やっ…ああっ…」
「お前、今日すごい濡れてる」
「ちがっ……、あっ、ああんっ…!」
那波が動く。体の中、奥まで、赤いものに貫かれるイメージ。
苦しいぐらいいっぱいなのに、それでも私の中は那波への思いで溢れる。
「那波…、大好きっ…」
私は彼にしがみついた。
「オレも好きだよ…」
耳元で、小さい声。
普段は絶対そんな事言わないのに、こういう時は言ってくれる。
だけど絞り出すみたいな彼の声は本気で、それが嬉しい。
那波の動きが早くなる。
途切れ途切れになる、声。
混ざる息。
両手を那波の方へ引っ張られて、繋がったその場所がもっと深くなる。
(ああ……那波っ…)
奥に届く彼の動きに、私の体もうねる。
手がしびれてくる。
押しつけられる彼の胸、私は彼の背中に手を回す。
那波もギュっと抱きしめてくれる。
普段の緊張とか、妙な恥ずかしさとか、今は無かった。
一番素直なままでいられるこの瞬間が愛しい。
彼に手を伸ばすと、恥ずかしそうにちょっと笑顔を返してくれた。
見た事のない那波の顔。
気持ちが持てる限界まで好きだと思ってたのに、それを超えてもっと好きになってしまう。
今、この瞬間でもまた那波を深く好きになってる。
こんな時間が続いたら、私は今日よりももっと那波を好きになってしまうんだろう。
限界と思っていたこの気持ちの果ては無くて、きっと、もっと…。
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2014/12/25 up
Happy Christmas!!!
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