まだ11月なのに、街の様子はすっかりクリスマスカラーに彩られてる。
「わくわくしちゃうよ〜。彼氏と過ごすクリスマスなんて、何年ぶりかだよ」
ビルを見上げて涼子が言った。
淡い水色のマフラーがよく似合ってる。
「『彼氏』自体が久しぶりだもんねぇ」
あたしは会話に相槌をうつ。
クリスマスかぁ…
なんも関係ないんだけどね、あたしには。
というより、関係なかったはずなのに何だか寂しさが増長されてしまう。
周りが明るい分、自分の暗さが目立つというか…。
待ち合わせてるカフェに、太郎くんが来た。
涼子は太郎くんを見つけると、満面の笑顔で手をふった。
『太郎くん』は涼子の隣に行くと、グレーのダッフルコートを脱ぎながらあたしにも微笑みかける。
「久しぶり♪太郎くん」
あたしも太郎くんに声をかける。
「こんにちは、麗佳さん」
この子の『麗佳さん』っていう呼び方がなんだか好きだった。
太郎くんは冬なのにアイスコーヒーを頼むと、改めて涼子を見てにっこりした。
(ラブラブだなぁ…)
視線の絡み方が違うよ。ピンク色の光線が出てるみたい。
絶対テーブルの下で手、つないでるっぽいし。
(これが、ラブラブなんだよなぁ…)
そう考えると、やっぱり先生とあたしの関係って違うなって思う。
街を二人で、堂々と歩いてみたい。
そのとき、手なんてつなげたら、もう倒れちゃいそうに幸せ。
あたしの願望ってちっさいな…とつくづく思う。
クリスマスなんて、夢のまた夢って感じだ。
3年になってから、あたし自身もそうだけど、田崎は凄く忙しいみたいだった。
やっぱり3年の担任って大変なんだろうか。
あの夏の日以来、今週末やっと彼に会える。
こんなに長い間会わないっていうのも、やっぱりラブラブじゃあないんだなって思う。
田崎と会わない毎日が重なっていくと、自分自身がその分どんどん凹んでしまいそうになる。
学校で姿が見られるっていう事と、時々しあうメールだけで、あたしは支えられてた。
二人で会う時、あたしは田崎が拾いやすいように通りまで出て待つ。
遠くから青いBMWが見えると、あたしのドキドキが始まる。
この前、ここで待っていたときは日焼けを気にしていたのに、今日はもう指先が冷たい。
車が歩道に寄ると、あたしは車道側に回って助手席に乗り込む。
「久しぶり、せんせ」
あたしは自然に笑顔になる。
やっぱり嬉しさは隠せない。
「ホントに久しぶりだな」
田崎はジップアップの薄いフリース風の服を着ていた。白地に紺のファスナーだ。
先生は、青が似合うなって思う。
車のイメージかも知れないけど、あたしが想像する田崎の色は青だ。
田崎はすぐに車を走らせる。
「いま、ゴハン食べれる?」
田崎が聞いてくる。
「うん。大丈夫だけど…10時頃に食べたっきりだし」
今は昼の2時だった。
「オレ、今日何も食べてないんだ。とりあえず、メシ食わせて」
田崎は色んなお店を知っている。
それもデートで使いそうなところばかりだ。
先生にはあたしの知らない顔がある。
だって一人でそんなとこ行くわけないもん。
彼にお洒落なお店に連れて行ってもらって奢ってもらうのはとっても嬉しかったけれど、
よく考えてしまうと複雑な気持ちだった。
普段からもっとちゃらちゃらしてるキャラだったら、まだ良かったかもしれない。
食事をするときにする何気ない仕草。
タバコを吸う指先。
正面に座ると、一気に緊張が高まってしまう。
本当はもっと見つめたい。
堂々と視線を絡ませてみたい…
だけどやっぱりムリで、あたしは少しうつむきがちになってしまう。
会話のやりとりで視線が合うと、ギュって胸が潰れそうになる。
だって、会いたくて会いたくて、…もうこうして会えるだけで、あたしは満足かもしれない。
田崎のこと好きだって気付いてから、別に彼に抱かれるのが目的で約束しているわけじゃない。
ただ、会いたいだけ。
顔を見たいだけ。
声を聞きたいだけ。
そして、触れたくなる。
願望はどんどん大きくなって、そして欲望に押し流されてしまう。
それでもその波はあたしにとっては大事だった。
全身で彼を感じられるから…。
田崎にキスされる。
脱がされた裸の肌が、彼を求める。
「あぁっ…あぁぁんっ…」
先生の唇が、あたしのあちこちを吸う。
でも一番嬉しいのは、やっぱり唇と唇が触れ合うとき。
彼はそれを知っているのか分からないけど、あたしの唇にキスしながら下半身を愛撫する。
「んんっ…、んっ…ん…」
指が、あたしの中に入ってくる。
あたしの中、前の方に向かって彼の指に力が入る。
そこ、中で感じるところだ。
「んっ…、めっ……、あぁぁっ…」
ぐちゅぐちゅと音が聞こえる。
そんな風に、音、立てないで…
「はぁっ、あ、…あぁっ…」
恥ずかしい声を上からも下からも出しながら、あたしは先生の愛撫を受ける。
「やぁっ、…あ、…だ、だめっ…」
田崎の指の動きが激しくなる。
あたしは彼の肩を握る。
いつも思う。この感覚にどうして体が耐えられるのか。
もう中身からバラバラにされてしまいそう。
そんなところを、そんな風にされたら…
「あぁっ、あ!…あぁぁぁんっ!」
指でいかされたすぐ後なのに、田崎はあたしの唇に深くキスする。
「はぁ…ん、…んん…」
口の中を貪られるような、激しいキス。
頭がぼうっとする。
あたしの胸に彼の手が触れるたび、体がビクビクする。
「あぁ…」
先生があたしの乳首を口に含む。
あたしの体はそれだけで跳ねてしまう。
「やっ…、今は、…ダメっ、せんせ…」
あたしの言葉を無視して、田崎の手があたしの脚を割る。
「いやぁっ…、ダメ、…だ、だめぇっ!」
逃げようとする腰をしっかりと抑えられて、彼の頭が下に下がっていく。
彼の唇があたしの感じる場所に触れた。
「あぁっ、…あぁんっ!」
ただでさえ、そこは弱いのに、いったばかりだから更に敏感になってる。
田崎はあたしの小さな粒を舌で強く押しながら、頭を動かして上下に撫でていく。
「はぁぁぁんっ、だ、だめぇっ…、せ、せんせぇっ…」
思わず先生の頭を脚で挟んでしまう。
彼は力を入れて、あたしの両足を腕で抑えつける。
(いきそう、…いっちゃいそう…)
ちょっとされただけなのに、あたしの体は止められない。
「いやぁっ、…せんせっ、…あっ、あ、ま、また…はぁぁんっ」
田崎にしっかり抑えられているのが、まるで強引にされているみたいであたしはますます興奮してしまう。
(もうだめ…、だめ…)
「あぁんっ、せんせっ…、いっちゃうぅっ!」
自分の体が変わってしまう。
あたしを感じやすくさせたのは、先生だ。
田崎はいつもあたしを休ませながらしてくれるのに。
今日の彼は違ってた。
どうして?久しぶりだから?
あたしが再び達したすぐ後に、田崎はあたしに入ってきた。
「あぁぁんっ!あぁ、…はぁっ、…んあぁぁっ!」
みっともないぐらい、大きな声を出してると思う。
だけど止められない。
田崎はあたしの腰を持ち上げて、更に奥へと入ってくる。
「だ、だめっ、……せんせっ…そんな…うぁ…や、あぁっ…」
激しく突いてくる。
腰から下の感覚が、おかしくなってしまいそう。
「梶野…」
「いやっ…、だめ、……あぁ、あぁっ!」
先生は動くのを一旦止めると、あたしに被いかぶさってくる。
「…辛いか?」
一瞬なんの事か分からなかった。
あたし自身の、気持ちのことを聞かれたのかと思った。
だけど違うんだと、この行為のことだと、すぐに理解する。
「………」
あたしは黙って首を振った。
「…あぁ…」
吐息混じりの先生の、声。
彼が気持ちよくなった声はぞくっとする程色っぽくって、
その声を聞いたあたしはたまらなくなる。
「あ…あぁんっ!」
彼が動く。
あたしを抱きしめるような形のままで、彼が奥まで入ってくる。
また、激しい動きであたしを責める。
「だめっ、…だ、だめっ…、あ、あ、あ、…」
あたしは先生に抱かれる人形みたいに、ただひたすらにその動きを受けとめる。
指とか、舌とかとは全然別格の快感が、あそこを中心として全身に湧き上がっていく。
首筋が、痺れる。
息がとまりそう。
固く閉じたまぶた、その黒い視界が白くなっていく。
「あぁっ、…、あ、…うあぁぁんっ、…あぁぁっ!」
あたしは田崎にしがみつく。
「あぁんっ、……好きっ…!」
思わず声に出して叫んでいた。
言葉に出してしまった。もう戻せない。
だけどそんな事を考える余裕も、快楽に流されて自分ごと失われていく。
「あぁっ、あっ、あっ、…あぁっ!」
充分に感じさせられたすぐ後、彼のものがあたしの体を心ごと貫く。
足が震える。
本当に体がおかしくなりそう。
先生が、すごく固い。
それが、速さを増してあたしを責める。
『いく』を超えてしまいそう。
こんな感覚、今まで知らなかった。
涙が出そう。
「好きだよ………、…麗佳」
激しい行為の中、小さな、声。
あたしの空耳…?
これは現実…?
確かめることもできないまま、
あたしは経験したことのない大きな快感に堕ちた――――