ラブで抱きしめよう

10−3☆ 迷い

   
「藤田くん……好きなの……」

そんなにしっかり見ないでくれって、オレは言いたかった。
動物みたいな瞳には、真剣さが感じられる。
こんなに至近距離で堀内の顔を初めて見た。
普段から化粧をしてないせいか、肌なんてツルツルだ。
唇が何か言いたそうに開いては、迷って閉じる。
本人は絶対気がついてないけど、その姿は男を誘惑してるみたいだった。

(絶対やばいって……)

気付いてた。
堀内が浴室からこの部屋に戻ってきた時から、オレは欲情してた。

さっきまで本気で帰ろうと思っていた決心が、足元から崩れる。
手を伸ばして、触れてしまったら、…多分もう戻れない。

…それ以上に、この状況で、「帰る」なんて言う方がすごい度胸だ。
「………堀内……」
どうしよう…もう、………。


オレが手を出す前に、堀内の手がオレの頬に触れる。
堀内が目を閉じた。

「………」

迷った気持ちのまま、オレは堀内の唇に触れた。
 

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