ラブで抱きしめよう

14☆ 浮気

   

朝から太郎くんはすごく優しく私を抱いてくれた。
あーやっぱりすごい好き。
太郎くんの触り心地とか、キスの仕方とか、抱きしめてくれるときの指とか、…太郎くんのあちこち、全部、すっごい大好きだなって思う。

「涼子ちゃん、大好き…」

今日の太郎くんは、大好きっていっぱい言ってくれる。
それに、いつもよりも『ちゃん』付けで呼ぶ回数が多い。
呼び捨てで呼ばれると、『彼氏』って感じがして嬉しい。
でも『ちゃん』付けされると、太郎く〜〜んっ♪って感じでそれも嬉しい。

最初すぐに出してしまった太郎くんは、その後私を指でイかせてくれて、
で、まったりしてたら、今、また私に入ってきそうな雰囲気になってる。

「何回しても、いいよ……」
私は太郎くんを抱きしめながら言った。
今日はなんだか彼は私に甘えがちだ。
「何回、できるかなぁ…」
太郎くんは笑って言った。
二人とも裸で、布団の中でイチャイチャしてた。
今まで最高で、1日7回したことがある。
まだ私がピルを飲んでいた時期で、抜かないで何度もした。
終った後、いっぱい私の中から太郎くんのが出てきてすっごいビックリしたんだっけ。
「ずーっと、してても、…いいよ…」
今度は私が太郎くんの胸に抱かれる。
「でもオレには限界が…」
「限界があって、良かったかもね」
私たちは笑ってしまう。
太郎くんが私を見る目は本当に優しくて、愛されてるってひしひしと感じた。
こんな風に思うのって、ちょっと久しぶりかも。


お昼ごはんを食べて、二人でリビングでテレビを見る。
こんな風に予定も何にもなくって、ボーっと過ごせるのってすごい贅沢な感じ。
「いいともなんて、昼間見ないよなー」
「だって太郎くん毎日学校行ってるじゃん」
暖房の効いた部屋で、コンビニで買ってきたオヤツを食べながらリモコンをいじる。
ワイドショーで、芸能人の不倫やってた。
「絶対芸能人ってさ、離婚するカップルの方が多いよね」
私は言った。
「そーだなぁ……。あんまり興味ないけどね」
太郎くんはいい加減に答えてくれる。
浮気が原因で…って、レポーターが他人の事なのに力説してる。


「私、浮気されても平気だよ」

私は太郎くんを見て言った。
「えっ…、え…、そうなの?」
太郎くんの顔色が変わる。

「ちょっとー、もしかして、……最近なんかあったりしたんじゃないの?」
私は太郎くんに言った。
「な、…なんもないって」

あからさまに焦ってる。隠せないどころじゃなくって、明らかに、変。
絶対太郎くんってウソがつけないタイプだ。
まあ、そういうトコも大好きなんだけど。
「怒らないから、言ってごらん?」
私は太郎くんの膝に両手を乗せて、下から見上げた。
「ええ……だから、何もないってば」
絶対、何もないって事はないな…この表情…。
でも本人が『何もない』って言い通すなら、ま、いっか。


「太郎くん……」
私は真顔で太郎くんに言った。
「太郎くん、私とが初めてでさ……。まだ18歳だし、もしかしたらこれから、
……私以外の女の子とそうなっちゃっても、しょうがないかもなって、私思ってるんだ。」
「涼子……」
太郎くんが困った顔になる。
「でも、私のことを好きでいてくれるなら、…私にとっての太郎くんはきっと変わらないから」
私はにっこり笑った。そして太郎くんの手を握った。
もし浮気とかされても、私は彼のことを責められない。
だって自分が今までしてきたことを考えたら、それは余りにも酷くて……。
思い出したくないぐらい、自分がバカだったなって思う。

「……改めて……。今まで、ごめんね…。太郎くん」
「え…今まで…って?」
この会話の展開に、太郎くんはピンときてないみたいだった。
「太郎くんと付き合う前のこと…。なんか、…こんな私でごめん」
「だけど、それは昔の話じゃん」
太郎くんはそう言ってくれた。優しいなぁ。
「私は……太郎くんと付き合ってる限り、…もう太郎くん以外の人とは、しない」
「涼子ちゃん…」
太郎くんは複雑な顔になる。
「ホントは、もう一生、…太郎くんだけでいいと思ってるけど」
なんかこう、改めて言うとすっごい恥ずかしくなってくる。

「涼子……」

私は太郎くんに抱きしめられた。
彼の体に腕を回しながら、私は言った。
「だって、……もう、遊びは、し尽くしたって感じだもん」
太郎くんは体を離すと、ちょっと不機嫌な顔になってた。
「涼子ちゃん………」
「なあに?」
私は全然悪気はなかった。
「太郎くん、言いたい事があるなら、…言っちゃって。
だって太郎くん……私に優しすぎだもん…」

「言っても、……いいの?」
「うん……」
私はドキドキした。何言われるんだろう。


「オレ、涼子が浮気するの、…多分耐えられない」


太郎くんはマジメな目で私を見る。私は答えた。
「……キライになっちゃう?」
そんな事しないけど、私はちょっと嫌われるのを想像して悲しくなった。
太郎くんは首を振った。
「キライになんか、…なるわけないだろ」
「良かった……って、浮気なんてしないよ。私」
太郎くん以外の人とするセックスがどんなにしょうもないかって、
私にはもう充分に分かってる。
もしも誰かとそうなってしまうとき……
それは太郎くん以外の人を好きになったときかもしれない。
そんな事、これからあるんだろうか。

私はちょっと太郎くんにキスした。
「太郎くん……」
私は太郎くんの髪を触って言った。
「好きだよ…大好き……」

「オレも…大好きだよ、…涼子…」

すごーく切なそうな目で、私を見る太郎くん。
だけど私は太郎くんに言う。
「太郎くんが私の事、今大好きでいてくれるの、…よく分かるけどさ…
でも、私、未来の太郎くんはやっぱり縛れないよ」

「なんで……そんな事言うの?」
太郎くんは悲しそうに私を見た。

だけど私は笑顔を返した。
「私……太郎くんに出会えて、良かったもん。すごく…。多分これから何があっても、絶対太郎くんのことキライになることなんてないよ」
「涼子ちゃん…」
「でもさ、ホント太郎くんのこと好きだから……余計に…誰よりも…
太郎くんには幸せになって欲しいもん。…だからさ……」
だから太郎くんには、そのとき一番好きだと思える人と付き合ってほしい。
それが、ずっと私であるってこと、…全然自信がなかった。
ホントは想像するだけで、唇が震えて涙が出そうになるぐらい、辛いことだ。
太郎くんを失ってしまったら、私はどうなってしまうんだろう。
でも、…太郎くんは私よりも年下で、…まだ高校生で、これから大学に行ったり就職したりして、きっと出会いは無限にある。
今、私のことを好きだからと言って、これから先ずっとそうなのかは分からない。
それが…分かってるから、もしかしたらって考えるとすごく切ない。

「何言ってんの?涼子…」
「太郎くん……」
私は言いながら、涙目になっちゃってたことに気がついた。
「なんかさー、…もう、これじゃないとダメって感じなんだけど」
太郎くんはそう言いながら、私の髪を撫でる。
「オレこそ、頼りなくってこんなんだし…。先のこと考えると、すっごい不安だけど…」
私の髪を撫でていた指が、私の頬に移る。
「やっぱり、涼子じゃないと、…ヤだよ」
「太郎くん……」
太郎くんは私を抱きしめた。
「涼子みたいに、大人な考え方、……多分オレは一生できないと思うよ。
オレは涼子を一人占めしたいもん…。今も、…これからも…」
「…………」
あまりに嬉しくって、私は言葉に詰まってしまう。
大好きだから不安過ぎて、その保険みたいに
私は太郎くんを失ってしまっても大丈夫でいられる自分でいないと、っていつも考えてる。
その考え方って「大人」とかじゃなくって、本当は自分に自信がないって事からきてる。
だけど私は、一生自分に自信なんて持てそうになかった。

ずっと愛され続けていられる自信を持つなんて、ムリだよ。…だけど。

「涼子ちゃんのことが、大好きなんだよ」
「太郎くん…」

なんかもう、あんまり考えなくってもいいもかなぁって思ってきた。
なんでこんなに好き合ってるのに、こんなにも切なくなっちゃうんだろう。
大好きで、両想いでいるのに、
……どうしてこんなに不安になっちゃうんだろう。

「全然、上手く伝えられないな…」
太郎くんが言った。
私は答える。
「伝わってるよ……もう充分過ぎるくらいに」
「そうかなぁ……」
「うん…」
私は太郎くんに抱きついた。
「やっぱさぁ、文系じゃないのかも…。オレ……。
最近、ホントに自分の表現力のなさを感じるんだけど…」
「なんだか、受験生だね。太郎くん」
「…だって受験生だもん」
太郎くんが私の手を引いて立ち上がった。

「涼子の部屋、行こう」



言葉で伝えきれない分も、私たちはキスし合う。
抱きしめあう。
自分の感覚が全て、愛を伝えるためにあるんだって思う。


彼のことが好き。

それだけのことで、私の全てが変わる。

 

ラブで抱きしめよう
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