ラブで抱きしめよう |
15☆ 高校3年の冬 |
予備校に行けば、イヤでも堀内に会う。 どんな顔をすればいいのか……特にオレはかなり後悔もしてたし、 やらなかったというか、できなかったというか、微妙に男のプライドなんかもあったりして、結構重たい気分で教室に入った。 「藤田くんっ」 すぐに堀内はオレに声をかけてくる。笑顔だ。 「あぁ、お〜…」 オレはビビってちょっと引いて堀内に返事をした。 堀内はオレに少し近付くと、小さい声で言った。 「おとといは、ごめんね…。でも、ワガママ聞いてくれて、ホントに感謝してる」 「オレこそ、…悪かったよ…」 堀内はオレの反応なんておかまいなしに、すっきりした笑顔を見せると須賀の方へ去っていった。 二人は何か話して、すぐに何だか盛り上ってた。 なんだか、オレばっかり悩んだみたいでちょっと気が抜けた。 オレとしては、堀内には悪いけど今回の件で余計に涼子ちゃんが大事だっていうの、再確認してしまった。 それから、涼子ちゃんと会えて話せたことで何だか凄く前向きな気持ちになれてた。 それから1週間が過ぎ、1月も終ろうとなると さすがに学校の雰囲気も受験前って感じになってきた。 「なあ、太郎」 教室で、珍しく昼休みに須賀と二人になる。 「お前、堀内と何かあっただろ?」 「なんで…?」 須賀には隠せるわけないなと思ってたけど、一応聞いてみる。 「堀内、妙に吹っ切れた感じだし、…… お前はお前で、なんだか前より元気になった感じがするんだけど」 さすが鋭いな、とオレは思う。 「何かあったと言えばあったし…でもなかったと言えばなかったし…」 オレは曖昧に答える。 須賀は笑った。 「なんだそれ。まあ、何となく分かるけどな、そういうの」 組んでる足を更にだらしなく組み替えて、須賀がオレを見る。 「太郎はあんまり気が付いてなかったかもしれないけどさ」 「うん?」 「堀内って、結構いいヤツだぜ」 須賀がこんなこと言うなんて意外だった。 「それはオレも何となく、分かるよ…」 そうなんだろうな。オレもちょっと堀内に好意はあった。 あれ以来、堀内のオレに対する態度は別人みたいにアッサリした。 今まではちょっとオドオドって感じもあったのに、今はホントに普通だ。 オレは堀内の視野から出た、って感じがする。 きっと彼女なりに精一杯吹っ切ったんだろうけど、…オレには気を使わせないようにしようっていう気配りとかも、すごく感じられる。 女って強いな、って改めて思う。 涼子ちゃんにも思うけど、やっぱり女には敵わない。 男は女の手の上で転がされるものなんだろなって、実感して思う。 一通り試験が終る。やれるだけやったような気はする。 滑り止めで受けていた大学は、ボチボチ合格してた。 とりあえず一安心だ。 オレは学校に行ったり行かなかったりして、涼子ちゃんと会った。 「明日、…一緒に発表見に行く?」 明日は第一志望の合格発表だった。 郵送でも送られてくるけど、やっぱり結果はすぐに気になる。 「ええ?一緒に行ってもいいの?」 「いいよ……。まあ、落ちててもさ、他の大学が受かってるし。 ……落ちてたらちょっと凹んでカッコ悪いかも知れないけどさ…」 「大丈夫だよ、きっと」 涼子ちゃんはオレの肩に両手を置いて、にっこり笑う。 「大丈夫だって」 そのままオレの背中に腕を回してくれる。なんかお姉さんって感じする。 「なんかさー、涼子にそう言われると、ホントに大丈夫な気になってくるよ」 何だかほっとする。 涼子ちゃんがいてくれるだけで、すっごい癒し効果だ。 明日の待ち合わせをして、彼女と別れる。 せっかくだから、第一志望、合格してたらいいけどな。 正直、全然自信はなかった。 |
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