太郎くんと過ごすクリスマス。
朝から街にお買い物に行って、二人でお茶したりブラブラしたりした。
何にもしなくても、横に一緒にいられるだけですごく嬉しい。
こういうのって、普段離れてるから余計に思う。
絶対いつも一緒にいた方がいいけど、
こんな気持ちも離れてるからこそなのかも知れない。
師走の街は人がすっごい多くて、ちゃんと手を繋いでないとはぐれそうになる。
「勉強の調子はどう?」
私は太郎くんに聞いた。
「まあまあかなぁ…。でもあとで後悔したくないからね」
太郎くんは私にニコって笑う。
目つきとか、ちょっとした仕草とか、太郎くんの全てが前よりも大人っぽい。
特に今はしょっちゅう会えてるワケじゃないから、変化がよく分かる。
こんな子同じクラスにいたら、私絶対好きになってる。
太郎くん学校でモテるだろうな。
「ねぇ、太郎くん、学校でモテるでしょう?」
「えー…。そうでもないよ」
太郎くんがちょっとテレてる。
「うっそー…。だって私が好きになるぐらいなのに」
私は笑って言った。
「だって、涼子ちゃんの存在がいまだに有名だからさ」
「えーそうなの?」
有名って何?
「私が麗佳ぐらい頭が良かったらさ、もっと太郎くんと一緒にいられて、
勉強とかも教えてあげちゃったりできたのになぁ…」
「涼子が?」
太郎くんが意外な顔で私を見る。
「それは、ムリだよ」
「まあ、今の私じゃムリだけどさぁ〜」
太郎くんは笑ってる。
「涼子と一緒にいたら、どっちみち勉強なんてできないよ」
繋いでる手に力がこもる。
「そう言えば、…そうだねぇ」
想像して、私も頷いた。
ホントに、一緒にいたら勉強なんてできるわけないか。
「ねえ、太郎くん」
「なに?」
私は太郎くんの手にしがみついた。
「もう、私の家に行こ」
「涼子、ハタチの誕生日おめでとう」
太郎くんが私の頬を触る。
「太郎くんも、18歳のお誕生日、おめでと♪」
唇が触れ合う。
私たちはそのままベッドへ沈む。
エッチが終って、裸の太郎くんの胸に抱かれる。
こうして、ただ抱きしめられてるのも凄く好き。
太郎くんは疲れてるみたいで、すぐに眠ってしまった。
私は起き上がろうと思って体を離そうとしたけど、
太郎くんの腕が強く絡まっていて抜けられない。
(まあ、いいか……)
太郎くんの寝顔を見ながら、彼がもう一人いたらいいのにって思う。
もう一人の太郎くんは、ずーっと私の側にいるの。
なんか最近はそんな妄想ばっかりしてる。
だけど今、目の前に感じる吐息はホンモノの太郎くんのもの。
ぴったりくっついていたら私も知らないうちに眠ってしまった。
二人の時間はあっという間に過ぎる。
「大変!お母さん帰ってきちゃうよ」
夕方の6時を回ってた。
休日出勤の日は普段よりもずっと母の帰宅が早い。
とりあえずちゃんと服を着て、二人で私の部屋でイチャイチャする。
「ねー太郎くん…」
「ん?」
「大学に入っても、付き合ってくれるよね…」
ベットに寝転がったままの姿勢で、私は太郎くんに腕枕されてた。
太郎くんは体を起こす。
「当たり前じゃん!涼子こそ……社会人になっても付き合ってくれる?」
「もちろん〜〜♪♪」
私は太郎くんに腕をまわす。
太郎くんは言った。
「色々と、…変わるよな」
「うん…だけど、…」
「何?」
太郎くんが真っ直ぐな目で私を見る。この目が、大好きなんだ。
私は一呼吸置いて答えた。
「太郎くんがまだ高校生っていうのも、わたし的にはビックリだけどね」
「そういえば、そうだね」
太郎くんが笑う。
「涼子はどんどんキレイになっていくから、正直オレはすっごく心配」
「ええ!そうなの?」
そう言われるのはちょっと意外。
心配なのは私の方だよ。
まわした腕に力を入れて、私は言った。
「私は太郎くんの事が、ずっと好きだよ……。これからも…
もっともっと大人になっても……」
「うん……そう言ってもらえるの、凄く嬉しいよ…」
「離したくないよ、太郎くん」
最近は太郎くんの名前を口に出しただけで、キュンってしてくる。
「オレも、離したくないよ…」
太郎くんがキスしてくれる。
何度もしているのに、同じ事を繰り返さずにはいられない。
今触れている唇も、溢れてくる気持ちも、
ずっと変わらずにこのままでいられたらいいのに。
「ねえ、太郎くん、久しぶりに写真撮ろうよ」
「いいよ」
私は機種変更したばかりの携帯で、太郎くんと一緒に写真を撮った。
「最近写真なんて撮ってなかったね」
「オレも撮っとこ」
太郎くんと私はお互いの携帯を見せ合って、
撮った写真について色々チェックしたりして笑い合った。
太郎くんと付き合い出してからの私の誕生日は変わった。
それから、何となく日々を重ねていただけの毎日も、
彼というたった一人の存在それだけで、こんなにも愛しいものになった。
ただ、彼がいる
それだけのことで、こんなにも。
世の中には何人も人がいて、男の人だってたくさんいるのに
たった一人の存在だけで、こんなにも自分の世界が変わってしまう。
それって本当に凄いことだ。
「涼子、冬休みはバイトでしょ?」
「うん、冬はバーゲンとかで大変だから、
店長がどうしても出勤してほしいって」
太郎くんが帰り支度を始める。
「オレも、冬休みは最後の追い込みだなぁ…。冬季講習がビッチリ」
「元旦は空いてるんでしょ?」
「うん。午後からは大丈夫」
「じゃあ、初詣行こう!合格祈願しに!」
私は笑って言った。
「そうだね。元旦ってすごい混んでるんだろうなぁ」
太郎くんが心配そうに言った。
「多分ね…。でも今年はちゃんと神頼みしないと!」
私は思わず声を大きくして言ってしまう。
太郎くんは私を見て笑うと、抱きしめてくれた。