ラブで抱きしめよう |
☆2−2 デート |
太郎くんのキスは、すごくよかった。 なんでだろう。 ただの、キスなのに。 …太郎くんの唇は、とってもあたしを感じさせた。 すごくドキドキしてしまった。 「う〜〜〜〜」 思い出すと、悶々としてしまう。 (でも、付き合ってこんなすぐにエッチしたいなんて言ったら絶対幻滅させちゃうし……) 「『彼女』ってゆーのも、難しいなぁ…」 だけど嬉しい。 こういう付き合いも、いい。 太郎くんのこと、好きになりそうな気がする。 少なくても今、自分の中では一番好きな男の子だ。 「太郎くん、携帯持ってないんだよね…」 今すぐに電話して喋りたいのに、それすらままならない。 「ますます悶々としちゃうよ…」 太郎くんは毎日部活があるから、それからは私が彼の部活が終わるまで待つことにした。 家に電話するのも気がひけちゃうし、待ってるのが手っ取り早かった。 それに何よりももっと一緒にいたいから、私は健気に放課後の時間をつぶした。 「部活、かぁ〜」 教室にいるのも何だから、図書室の一人用スペースで雑誌とか読んで待ってた。 太郎くんを待ってた最初の日、色んな人の怪訝そうな視線を浴びた。 「なんで春日が藤田待ってんの???」 特に驚いてたのは3年の男子だ。 多分全員が私の冗談だと思ってたと思う。 「どうせ遊びだろ」って感じの目で私を見てた。 言われなくたって分かる。 ちょっとした事実に尾ひれをつけられて、私に対するいい加減な悪いウワサが広まってるって事ぐらい知ってる。 高校に入ってから、この学校の男子と付き合ったことなんてないのに。 くだらない。 他人の事なのに。 色々と考えるとムカつくから、私はそういうウワサとかそんな事言ってるヤツらとか無視してた。 まぁ、確かに今までの私の行動ってロクでもなかったから、そんな風に言われても仕方がないとは思うけど。 太郎くんを待っている間に携帯にメールが入る。 タケルからだ。 『明日、都合どうよ?』 すごくエッチしたい気分だったけど、明日は太郎くんの部活がない。 それよりも、タケルと会う時間があったら太郎くんと遊びたい。 私は『しばらく都合悪そう』って返信した。 私は玄関の横で下駄箱に寄りかかって立って、彼を待っていた。 バスケ部の3年の一団が超じろじろ私を見てから、さっき出て行った。 1年の太郎くんはもうすぐ出てくるはず。 「太郎くん♪♪」 彼の姿を見つけて、私は玄関から出て行く。 太郎くんも私を見つけると、笑顔を返してくれた。 1年がまじまじと私と太郎くんを見てくる。 1年軍団の視線を後方から感じながら、駅までの道を二人で歩く。 「…あたし、待ってたら迷惑かなぁ」 だいぶ日が延びてきたから、6時前なのに外はまだ暑い。 太郎くんはタオルで汗をふきながら、恥ずかしそうに答えた。 「迷惑じゃないよ…すごい嬉しい」 「それなら、待っててもいい?」 「…待ってて欲しいよ」 太郎くんは私を見て、優しい声で答えた。 付き合ってまだ数日だけど、太郎くんがちゃんと私を見てくれる回数が増えてきた。 それがすごく嬉しい。 そして『待っててほしい』って言われた嬉しさとで、やっぱり私は笑顔で太郎くんを見つめてしまう。 「涼子ちゃん、すごい可愛い…」 太郎くんは視線をそらして、小さな声で言った。 (あ、なんか……) 自分でもビックリするぐらい、すごいドキドキしてきた。 こういうのが恋愛なのかも…って思う。 だって、私達、どこからどう見てもラブラブだ。 いつものように、太郎くんに家まで送ってもらった。 マンションの下で、彼は私にキスしてくれる。 立ったままの姿勢だと、身長差があんまりないからキスしやすい。 太郎くんの舌と、私の舌が自然に触れ合う。 本当はもっと激しく長くキスしたい。 そしてそれ以上も、早くしたくてたまらない。 まだ……早すぎるかな。 (タイミングって、よく分からないよ…) 太郎くんが唇を離して私の体を抱き寄せてくれる。 太郎くんのキスがすごくいいのは、多分私が彼のことを好きだからだろう。 気付かないうちに、太郎くんのこと…ホントに好きになってた。 |
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