その日はソワソワして、時間が過ぎていくのが遅く遅く感じた。
私はもう黙っていられなくなって、思わず麗佳に言ってしまった。
「今日さぁ、太郎くんとしちゃうかもしれない」
「ええ!っていうか、まだしてなかったの??」
麗佳はビックリしてた。
そう言われればそうかも。
もう7月になってた。付き合って、1ヶ月ぐらいになる。
「なんか、涼子らしくない〜〜。涼子、変わったよね」
麗佳がニヤニヤ言う。
「う〜ん、えへへへへ〜〜♪♪」
私は嬉しくなって、笑ってしまう。
嬉しい事、隠せないのだ。
「いいなぁ、なんか、めっちゃ幸せそうだよ。あたしも彼氏欲しくなってくるよ」
麗佳は茶色いストレートの髪をかきあげる。
どう見ても、麗佳はかなりカワイイ。
顔なんて、いわゆるアイドル系だ。
「まあその気になれば、麗佳なんてすぐ彼氏できるんじゃん?」
私は本当にそう思って言った。
そして言葉を続けた。
「ただ…」
「ただ、何よ」
麗佳がちょっとマジな顔になる。
私は答えた。
「好きって思える人ができるかどうかってトコだよねぇ」
「………」
麗佳が固まる。
「今の涼子の一言は、説得力ありすぎだよね」
ため息をつきながら、麗佳はちょっと遠くを見た。
なんとなくずっと思ってたことだけど、麗佳には好きな人がいるんじゃないだろうか。
何も言ってくれないから突っ込んだりもできないけど、時々そういう風に感じた。
そして待ちに待った放課後。
私は全然恥ずかしくないから、帰るときはいつもダイレクトに太郎くんの教室に行く。
1年の視線なんて、全〜然、気にならない。
太郎くんはカワイイから、多分同級生の女子からも好かれたりしてると思う。
(だって私がマジ好きになったぐらいだし)
さすがに3年の私と公然と付き合ってる太郎くんに、表立って告白してくる子はいなかった。
私が彼を待っている時、まわりにいる男子たちが羨望のまなざしで太郎くんを見る。
私はそれも、凄く嬉しかった。
何よりも、太郎くんが一目置かれてるっていうのが、嬉しい。
その日の太郎くんは廊下で待っていてくれた。
目があった、その目にいつもと違う何かを感じる。
ヘンな言い回しをすると、「艶」…?
要するに、欲情が感じてとれた。
私もそうなってるかもしれない。
「帰ろ」
早く帰りたくって早く学校から出たくって、私は太郎くんを急かした。
電車の中では、普通に会話した。
今日だけは、駅から近いところに住んでいて良かったと思った。
「入って、入って〜」
私は太郎くんを自分の家に上げるのは、初めてだった。
考えてみると、男の子が家に上がるのも初めてだ。
「涼子ちゃんの匂いがする!」
「えー?」
太郎くんはキョロキョロしてる。
玄関を上がって、廊下を通ってすぐにリビング。
リビングには入らないで、更に奥が私の部屋だ。
私は直接、自分の部屋に太郎くんを連れて行った。
「うー、涼子ちゃんの部屋だー」
太郎くんはめっちゃ部屋を見てる。
「涼子ちゃんの服だー」
「当たり前じゃん、…暑いね。クーラー入れるし」
私はリモコンを手にした。
太郎くんは部屋の真ん中に立ったままだった。
「ちょっとその辺に座ってて…って言ってもベッドしかないけど。なんか飲み物持ってくるよ」
私は太郎くんを置いて、キッチンに向かった。
(なんか、緊張してきた…)
太郎くんとエッチすること、今まで何回も何回も想像した。
だけどその想像は漠然としていて、なんだか全然リアルじゃなかった。
実際に今、自分の部屋に太郎くんが来ていても、まだ現実感がない。
―― そもそも……セックス自体が久しぶりなのだ。
だけど欲情にだけ身をまかせて、全然好きじゃない(勿論キライではなかったけど)男としてきた行為と、今日これから起こるであろう出来事は、全然別モノだと思う。
(うわ〜どうしよ)
何かすごい恥ずかしくなってくる。
だけど、だけど、…太郎くんが部屋で待っている。
キスしたら、頭がぼうっとなって……そして
「涼子ちゃ〜ん…」
「あ、あれれれ?」
私は無意識に、太郎くんの上に乗ってた。
要するに、太郎くんを押し倒してたのだ。
「い、いいんだけど、あのさ…」
「あ…」
私は体を起こした。
これじゃあ、私が襲い掛かってるみたいじゃん。
というか、まさにそうなんだけど。
「ごめん、…が、ガマンできなくって…」
超恥ずかしくなって、私は太郎くんから離れた。
太郎くんは、すっごい笑ってた。
緊張してた空気が、一気に弾けてしまった。
「ごめぇん…」
それを無意識にしてたってのが、我ながらすごい恥ずかしかった。
「涼子ちゃん、すげー面白いね」
「……」
それに対してどう答えていいのか。
太郎くんは、私を抱きしめてくれた。
太郎くんの腕に、力が入る。
太郎くんに、吸い取られてしまうみたいに私は力が抜ける。
「だって、緊張しちゃうもん」
私は言った。
「オレも、すごい緊張してる…」
耳元で太郎くんが答える。
「…………」
…この間が、ダメだ。
すごく嬉しいのに、大事にしたいのに、逃げ出したくなるくらい落ち着かない。
もう、今、すぐに、何も考えられないように、してほしくなってくる。
起き上がった太郎くんが、改めて私の頬にキスする。
私は、もう息が苦しくなってくる。
「あっ…」
何もされてないのに、声が出てしまう。
吐息が漏れるのを、堪える。
このまま何もしなくても、太郎くんに触られなくても、私は勝手に感じてしまうんじゃないかと思う。
側に、太郎くんがいるだけで。
こうして、2人きりなだけで。
太郎くんが、私のシャツのボタンに手をかける。
1つ1つに時間がかかって、なかなかボタンが外れない。
そんなぎこちなさでさえ私にとっては焦らされているみたいで、もう耐えられなくなってくる。
ボタンが外れて、太郎くんが私のシャツを開く。
「……!」
改めて、…というか初めて、太郎くんの前で、
…これから少しずつ、脱がされていくんだ。
「涼子ちゃん、可愛い…」
太郎くんも息を吐きながら、言った。
ブラジャーをしたままの、乳房に指が触れる。
私はビクっとなって、一瞬体を引く。
太郎くんは、ブラジャーの中に、手のひらを入れてくる。
「んんんっ…」
もう声をガマンしていられない。
私は目を閉じていた。
太郎くんの顔が見たかったけれど、目が合うのが恥ずかしくて。
太郎くんの指先が、時々乳首に当たった。
「んんっ」
太郎くんは私の形を確認するみたいに、ゆっくりと私の胸を触った。
私はシャツを脱いだ。
太郎くんと目が合う。
「…外して…」
私は言った。
太郎くんは私の背中に手を廻して、ブラジャーのホックを探る。
すぐに外れて、私は上半身裸になる。
太郎くんが私を見てる。
そんなに見られたら、ホントにだめかも。
「涼子ちゃん…」
私は太郎くんに、押し倒された。
太郎くんが、私の乳首を口に含む。
両手で、私の乳房を大きく触る。
「あぁ、…あ、…あぁぁっ…」
もう声が出ちゃう。
ドキドキしてる。
おっぱいを触られてるだけなのに、自分の中からはどんどん溢れてくる。
(スカート濡らしちゃうかも…)
私はちょっと心配になる。
(…多分もう汚してる…)
首筋がゾクゾクして、落ち着かない。
もう入れて欲しくて、私はもう欲しくてたまらない。
太郎くんの手が、私の太ももを触る。
(あたし今日汗いっぱいかいちゃった…)
1日過ごした体が急に汚れたモノに思えて、妙に恥ずかしくなる。
「あんっ」
太郎くんの指が、私に触った。
ショーツの上から、もっと触ってくる。
(もうぐしょぐしょなのに…)
私は首を振った。
太郎くんが、私の首筋にキスする。
「お願い、太郎くんも脱いで」
太郎くんは、少し体を起こしてシャツを脱いだ。
下に来てたTシャツも、脱いだ。
初めて見る太郎くんの胸は、洋服を着てるときからは想像できないぐらいたくましかった。
やっぱりバスケットやってるだけあって、肩にもすごく筋肉がついていた。
私は太郎くんの可愛い顔とその体のギャップに、また欲情してしまう。
私は自分からスカートのホックを外した。
太郎くんが自分のベルトを緩めて、チャックを下ろす。
太郎くんがズボンを脱いでいるとき、私もスカートを脱いだ。
昼間の部屋はカーテンをしていたけど明るくて、私は恥ずかしかった。
裸の太郎くんと、部屋にいる。
私も裸で。
太郎くんのものが見える。
私はもうすっかり濡れていて、早く入ってきて欲しくてたまらなかった。
「太郎くん…」
「うん…?」
太郎くんと見つめ合う。
「あたしね…」
「ん…?」
太郎くんは私の頬を撫でる。
太郎くんの目は、男の人なのにすごく色っぽくって、いつも可愛いのに、すごく色っぽくて。
「あたし、ピル飲んでるから…、そのまま出してもいいよ…」
私は言った。
自分のいい加減な行動のために、高校に入ってからピルを飲んでいたのだ。
「…大丈夫、なの…?」
「うん、平気…。大丈夫」
私は頷いた。
太郎くんがキスしてくれる。
私の口の中に、太郎くんの舌が入る。
それだけで、もう倒れそうなくらい、それなのに今から…。
私は太郎くんを掴んだ。
そのまま、自分の方に、そっと近付けた。
太郎くんはそれに合わせて、私に体を押し付ける。
私はもうヌルヌルになっていて、太郎くんを、簡単に受け入れてしまう。
「ああ……んっ」
太郎くんが、私の中に入ってくる。
「うあぁぁんっ!」
あまりの気持ちのよさに、体がヘンになりそう。
好きな子が入ってくるのって、こんなに凄いんだ…。
奥の方が、すごく熱い。
(私が熱いの…?太郎くんが熱いの…?)
太郎くんが、動く。
「あっ、あっ、…あ、あ、…あっ」
「あ、…りょ、涼子ちゃんっ…」
太郎くんはすぐに止まる。
「う、…うぅんっ」
動いてなくても、太郎くんが入っているだけで私のあそこは溶けちゃいそうになる。
「だ、…だめ、だ…。も…出ちゃうよ…」
『出ちゃう』って太郎くんの言葉で、私はキュンってなる。
太郎くんが私の中で震えているのが分かった。
「ダメだよ、…も…涼子、ちゃんっ」
「いいよ…、出して…太郎くん…」
私は太郎くんの肩を掴む。
「あっ、…あぁっ」
「ううっ、…う、んんっ…」
太郎くんにぎゅって抱きしめられた。
そのまま、私の中に太郎くんは出しちゃった。
「はぁ、…はぁっ…はぁ…」
太郎くんは私の上でぐったりしてる。
その重さも、その汗も、全て、私は愛しく思う。
太郎くんは顔を上げて、私を見た。
自然に唇が近づいて、キスされる。
裸のまま体を合わせてするキスは、こんなのアリ?ってぐらい私を嬉しくさせてくれる。
「うん……んんっ…」
太郎くんが私の中に入ったままだし、私の体はまだすっごく興奮していて思わず声が出ちゃう。
太郎くんは抜こうとして、腰を引きかける。
「あああっ、待って待って……。まだ入れてて…」
「うん」
太郎くんは体を起こして、もう一度私と腰を合わせた。
「まだ、太郎くんが私に、入ってるよ…」
「うん……、すげーー、嬉しい」
私たちは見詰め合う。
そしてまたキス。
唇が離れるたびに、見詰め合って、またキスした。
言葉も交わさないで、何度も、何度も。
太郎くんは私に体重をかけないように、両手で自分の体を支えててくれてた。
「好き…大好き、太郎くん」
「オレも、すごい好き、涼子ちゃんのこと」
視線が合う。
またキス。
「あ…太郎くん…」
太郎くんが、私の中で大きくなっていくのが分かる。
「また、おっきくなってきてるよ?」
「うん…分かる?」
「…うん」
私は頷いた。
太郎くんが、少し腰を引く。
「あっ」
ずっと私の中を埋めていたものが形を変えていく。
「あ、あ、あ…どうしよっ、…太郎くん…」
太郎くんは止まって、心配そうに私を見た。
「どうしたの?…大丈夫?…動かない方が、いい…?」
私は首を振った。
「ううん、…どうしよう…すごい気持ちいいの…、太郎くん…」
自分が変わってしまったのかもしれない。
こんな風に感じてしまうなんて、今まで経験したことがなかった。
だって今だって、太郎くんとこうして目が合う度に、どうしようもなくドキドキしてしまう。
ドキドキは、体の中心に通ってる快楽の芯を刺激する。
動いてなくても、こんなに感じてるのに。
ほんとにどうしよう。
太郎くんは私の手を握ってくれた。
今日初めて結ばれたのに、太郎くんはこんなにも優しい。
「あ、あっ、…あんっ、あんっ!」
太郎くんが動く。
その動き方はぎこちないけれど、私には愛しい。
なんかすごい泣けてくる。
太郎くんが好きだ。
私は太郎くんを抱きしめた。
私はしがみついたまま、太郎くんをまた受けとめた。
「はあ、はあ、はあ…・」
「あぁっ!いや〜んっ!」
太郎くんがいきなり抜いちゃうから、私はたくさんこぼしてしまった。
「あ、あ、あ…ごめんっ」
太郎くんはオロオロしてる。
「あの、そっちの鏡の横、ティッシュあるよね?」
慌ててティッシュをとって、私の横に座る。
「え〜っと、…あ…、なんか、すごいかも…」
太郎くんは私の股間を見て言った。
「だって、太郎くんがいっぱい出すから〜…」
「う〜ん、っていうか、何か色んな意味で」
太郎くんはしみじみと私のあそこを見ていた。
「やだー、ちょっと、見ないでよー。もーエッチ!」
私は太郎くんに拭いてもらいながら、体を起こした。
やっぱりベットを汚してる。
「まあ、いっか…。自分で洗おう…」
お腹に力を入れると、まだ出てきちゃう。
「見てみて、これ、太郎くんのだよ〜絶対」
私は自分から出てきたものを拭きながら言った。
「だってすごい気持ち良かったからさ、涼子ちゃんの中」
太郎くんが横を向いて言った。
その横顔が幼い。
こうしてると、やっぱり彼は最近まで中学生だったんだなって感じがする。
(犯罪的??)
「太郎くん〜…」
私は抱きついて太郎くんの胸に頭を付ける。
太郎くんは私の裸の背中を撫でてくれた。
「涼子ちゃん、すごいカワイイ…、すごい好き」
太郎くんはまた私をキュンってさせる事を言う。
太郎くんにくっつきながら、私はもうこの子だけでいいと思っていた。
私はまだ17歳だけれど、一体今まで何人の男と関係してきたのだろう。
そんなバカみたいな時間を全部捨てて、この子のためだけにこれからは生きていきたいと思った。
15歳の太郎くんの、初めての相手が、わたし。
最初で最後の相手になれたらいいのに。
だけどそんな事あるんだろうかって考えたら自信がなくなって、なんだか急に不安になってくる。
太郎くんのことが好きだ。
できれば、これから、ずっと、離したくない。
そう思った。
幸せな時間がずっと続く事を、信じていたい。
こんなに幸せなのに、私は太郎くんを失う事を想像して切なくなっていた。
人を好きになるのは、コワイ。
だからずっと避けて通ってきたのに。
もう、戻れない気持ちに、なってしまったんだ。