ベイビィ☆アイラブユー

ラブリーベイベー編 ☆☆ 11 ☆☆

   

「おはよう、津田さん」
「あっ、おはよ〜」
クラスメイトの挨拶に、私も笑顔で返す。
ひと月ぶりに見る紺色のリボンも、なんだか新鮮な感じがする。
―― 久しぶりの学校。
セイちゃんのいない夏は長くて、セイちゃんと過ごした時間はあっという間に過ぎた。
どんな夏休みかって言えば、私にとっては初めて「彼氏」という存在がいたドキドキの夏だった。


「学園祭の組み分けをしますので、グループを作ってAとBに分かれてください」
教師が黒板の中心に縦に線を引き、A、Bと割り振った。
私は萌花ちゃんと一緒だったら、AでもBでもどちらでも良かった。
みんなもそんな感じで、人数が合うように適当にグループが散る。

「津田さん、おんなじAだね」

9月から隣の席になった、宮部さんから声をかけられる。
「そうだね〜、よろしくね」
私は何も意識せずに、普通に相槌をうった。
「2年からは、男子部と一緒に出し物するのよね〜〜楽しみだわ」
普段は勝気そうな表情を緩めて、宮部さんが微笑む。
「あ、そうなんだね」
全然気にしていなかった。
高校2、3年になると、男子と女子は混合でグループが組まれるのが通例だった。
そのために、こうしてクラスを半分に分けるのだ。
「男子部の方の1組のAグループと、私たち1組のAグループが一緒になるのよ」
「ふうーん……」
さすがよく知ってるなあ、と感心する。
宮部さんは男子部の情報をすごくチェックしていて、追っかけみたいな事もしているという噂も聞く。
「男子部の1組っていうと、花の1組でしょ?」
さらに顔を輝かせて、宮部さんは語った。
「堀尾君とか、生駒様とか中村君とか……ああ、あの辺と一緒になるかもしれないわよ!」
そう声を荒げると、彼女は遠くを見てうっとりとした。

(堀尾君……?)
……セイちゃんだよね。
急にセイちゃんの名前が出て、私はドキドキしてしまう。
「…………」
チラっと宮部さんを見ると、その事で既に他の子と話し始めていた。

(セイちゃんと一緒になるかも……?)

それから家に帰るまで、私はずっとドキドキしたままだった。



「セイちゃん、組み分けどうだった??」
私は、家でセイちゃんに会うなり聞いた。
「ああ、Aになったよ」
セイちゃんはあっさりと答える。

「ホントに?私も1組でAだよっ!」
一緒だと思うと、一気に興奮が高まってくる。
「へえー」
帰ったところで制服のままのセイちゃんはバッグを右肩にかけ直しながら、たいして興味もなさそうに言った。
「い、一緒に文化祭できるんだよ??」
「ああ、そうだなあ〜」
適当に返事をすると私に背を向けて、2階の自分の部屋へ上がって行こうとする。
「嬉しくないの〜??」
私は後を追いかけて、一緒に階段を上がった。

「うーん、なんか、……めんどくさくね?」
セイちゃんはそう言うと、すぐに自分の部屋へ入ってしまった。

(めんどくさい……?)

学祭が、ってこと?
私と一緒が、ってこと?

その夜はおじ様も早く帰ってきて、ろくにセイちゃんと話ができなかった。
なんとなく釈然としないまま、私は眠りについた。



「おはよ…うわ、なんかすごいね」
次の日学校へ行くと、既にクラスは組み分けのことで盛り上がっていた。
「Aで、大当たりじゃん!」
「良かったぁ〜〜〜〜!私、学園祭に賭けるよ!」
宮部さんたちのグループは特に賑やかだった。

「なんだか、宮部さんたちすごいね……」
お昼の時間に、周りを見ながらこっそり萌花ちゃんが言う。
屋上には人工芝が張ってあって、端っこの日陰で私たちはお弁当を広げていた。
「………あ、あのね…、ほのかちゃん……」
言わない方がいいかもと思ったけれど、言っておかないといけない気持ちの方が強かった。

「え、詩音ちゃんの彼氏って……!」

萌花ちゃんは驚いていたけれど、セイちゃん本人を知らないせいかリアクションは小さかった。
「うん、……実はそうなの」
「すごいね!私よく知らないけど…堀尾君と言えば、超有名人だよね!詩音ちゃんすごーい!」
「す、すごくはないけど……」
私は思わず周りを警戒してしまう。
屋上は真ん中に空調が回っていて、向こうにいる人の声は幸い聞こえなかった。
「でもさぁ、宮部さんたちに知られたら、なんだか大変な気がするねー」
萌花ちゃんは心配そうに言ってくれた。
「うん!うん!そうでしょう??」
私も同じ事を思っていた。
まさか、毎日のように噂をしている「堀尾君」と私が付き合っているなんて、夢にも思っていないだろう。
なんだかよく分からないけれど、彼女たちがセイちゃんや他の男子の話をしているときは皆、ものすごくテンションが上がっていた。
それは怖いぐらいに。

(昨日、セイちゃんが言ってた……)
めんどくさい、っていう意味が、なんとなく分かってきた。


萌花ちゃんと寄り道をしていつもより遅く家に帰ると、もうセイちゃんは帰っていた。
リビングの黒革のソファーに半分寝そべって、一人でDVDを見てた。
「お帰り、めずらしいな、遅いじゃん」
DVDを止めると、振り返って私に向かって言う。
「……ちょっと寄り道してて」
私はセイちゃんへと近づいた。
「さっき、タケルさん出て行ったぜ」
「うん、向こうですれ違った……セイちゃんもうゴハン食べちゃったんだよね?」
「だってめっちゃ腹減ってたし、やっぱ出来たて食いたいし」
そう言いながら体を起こして、セイちゃんはソファーに座りなおした。
私のためのスペースを空けてくれたのだ。
「そうだよね」
私はセイちゃんの隣に座る。

「…詩音、色白いな」
セイちゃんは私をじっと見て、言った。
「セイちゃんが黒すぎるんだよ」
腕を並べると笑えるぐらい、二人の肌の色は違っていた。
「さっき、親父から電話あったけど」
「うん」
「今日晩御飯いらないってさ」
「うん、分かった」
「分かった?」
念を押してくるセイちゃんへと、私は顔を上げた。
「うん、……ん…」

二人きりになると、いつもすぐにキスしてしまう。
セイちゃんのキスは大好きだったし、セイちゃんのことだって勿論大好きだ。

「んん………ん……」

すぐにセイちゃんのキスが深くなる。
キスが深くなると、向かう先はいつも同じだった。

「やん、……あん…」

二人が寝そべっても余るぐらいに大きなソファー。
あっという間に押し倒されてしまう。
「こ、こんなとこで……」
普段、おじ様やパパが行ったり来たりするオープンなこの場所で、既に私はTシャツを完全に捲り上げられていた。
「こんなとこで、って、ここで今までさんざんオレにエッチな事されてたくせに」
セイちゃんはニヤっとする。
そういえば付き合う前はリビングやキッチンで悪戯されていたんだった。
「あんっ!やっ……」
セイちゃんの指が、急に下着の横から滑り入ってくる。
「ああ、ああんっ」
下着に侵入した指は、簡単にその場所を探り、ぬるぬると中へ沈んでいく。

「きゃっ、はぅんっ……!」

「オレがここでどんだけガマンしてたと思ってんの?」
深く入っていくセイちゃんの指が、中で動き出すのを感じる。
「あっ、……はぁんっ……」
全然抵抗できなかった。
セイちゃんに悪戯されていたちょっと前だって、結局はこうだった。
その頃はセイちゃんの指は入ってこなかったけれど、そこを触られるだけで簡単にイってしまってたんだった。
「あぁん、セイちゃぁんっ……」
思わずセイちゃんへと手を伸ばしてしまう。

「詩音のそういうヤラシイとこ、オレ大好き」

(ちがうもんっ……)


「うあ、ああんっ!」

否定しようとして出た言葉は、声にならない声だった。
指よりももっと大きいセイちゃんのモノが、私を貫いていく。
「すっげ、しっかり入ってくぜ……、詩音」
「やん、……やぁっ、あんっ」
首を振っても、息は上がってしまう。
セイちゃんの両手で、私の両足はしっかり広げられてる。
(ああん、恥ずかしいよぅ……)

「あん、あぁんっ……」

受け入れるために大きく開いた足。
繋がったその部分を見られていると思うと、恥ずかしくて本当は足を閉じたかった。
しっかりと抑えられた膝に、セイちゃんの動きが伝わって震える。


(ああ、気持ちいい……セイちゃん……セイちゃん……)

固く目を閉じると、瞳の中が赤く見えた。
私の体に入っているセイちゃんが擦れる度に、体中に散る痛いような感覚。
セイちゃんの動きは激しくなって、私は受けとめるのが精一杯だった。

「あ、あっ、…セイ、ちゃんっ…、セイちゃぁんっ……」

何がなんだか分からなくなる。
ただセイちゃんを感じるためだけに、身を任せた。
(ああ……セイちゃん……セイちゃん……)
セイちゃんに合わせて、いつの間にか私も動いていた。




「詩音……好き」

セイちゃんがほっぺたにキスしてくれる。
「はあ、はあ……」
私は半裸の状態でぐったりして、ソファーに寝そべったままでいた。
「詩音のエロいところも好きだぜーー」
そしてセイちゃんは私の頬を撫でてくる。
「エ、エロくないもんっ……」
なんとかそれだけ言い返した私に対して、セイちゃんは思いっきり笑った。
「はははは、まあいいけどさ」


私の食事に付き合って、セイちゃんは隣にいてくれた。
ダイニングのテレビを見てたまに笑ったりしていたけれど、その間も私の髪をずっと触っていた。
(食べにくいんですけど……)
それでもこんな時間がすごく幸せで、学園祭の話をするのもすっかり忘れてしまった。


 

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