ベイビィ☆アイラブユー

ラブリーベイベー編 ☆☆ 15 ☆☆

   

「ちょっと!津田さん!!」

文化祭当日、教室の隅に作られた更衣スペースで着替えて出てくると、いきなり宮部さんたちから質問攻めにあった。

「どうやって征爾くんと付き合う事ができたの??」
「いつからそういう関係なわけ?」
「どこで知り合ったの?」

「えっ、……そ、それは…」
(そんなすごい勢いで来られても…)
宮部さんたち4人に取り囲まれて、ただでさえ小さい私はものすごく萎縮してしまう。
「ねえねえ、津田さんってば!」
「えーっと……ええ…」
そういう風に言われても、答えに困ってしまう。
「えっと………、ん?」

宮部さんたちの視線が私の背後に向けられた。
彼女たちの表情がみるみる変わって、ちょっと緊張したような、ちょっとかしこまったような感じになる。

「詩音」

「セ、セイちゃん……」
(ハッ)
つい普段どおり名前で呼んでしまった。
「ここ、曲がってる」
セイちゃんの手が私に伸びてくる。
私のカチューシャを触ると、向きを直してくれた。
「あ、…ありがと」
「ああ」
セイちゃんはちょっと笑って頷くと、そのまま男子たちがいる方へ行ってしまった。

「……!!」
改めて向き直ると、宮部さんたちの目が完全にハートで、セイちゃんの姿を追っていて怖かった。



文化祭が始まってしまうと、宮部さんたちの事も忘れちゃうぐらい、すっごく忙しかった。
カフェは思った以上に大盛況で、当番のときはホントに息つく暇もないぐらいバタバタした。

「はあ…疲れたね…」

やっと当番が終わり、私と萌花ちゃんは休憩をとることができた。
「萌花ちゃんたち、こっちこっち」
すぐに陸人くんに呼び止められて、私たちは他のクラスがやっている喫茶に入った。
「ここはまた違う雰囲気だね〜」
私たちがやっている喫茶はハロウィンがテーマだからちょっとホラーっぽい感じだけれど、このクラスはなんだか体育会っぽい雰囲気だった。
「ここ、柔道部がやってるんだぜ」
セイちゃんがニヤニヤして言った。
「えーそうなんだ」
お客は多いのに、なぜか女子がほとんどいない。
「お待ちどう!」
「ええっ!」
目の前に置かれたオレンジジュースは、ファーストフード店なら余裕でLサイズ以上の大きさだった。
思わず萌花ちゃんと顔を見合わせてしまう。
「こ、こんなに飲めないよ……」
「しょうがねえだろ、これがここの売りなんだから…」
セイちゃんが苦笑した。
よく見ると入り口に『特盛喫茶』って書いてある。
「他の場所はさ、なんか視線を感じるからさ…ここなら女子が少ないし」
陸人くんが周りを見回して笑いながら言った。
(確かにそうかも…)

この教室に入るまでの廊下を歩いてきたちょっとした時間も、他の女子の視線をすごく感じた。
私とセイちゃん、それから萌花ちゃんと陸人くんは周りの注目を集めていた。
何をしてもコソコソと後ろで噂されているような気がして、そしてそれは実際にそうだった。
(セイちゃんも大変だなあ…)
まるで他人事みたいにそう思った。
いつも人に見られて、何かしら噂されて…
(ホントにアイドルみたい)
だけど私にとってのセイちゃんは、幼馴染でお兄さんみたいで弟みたいで、本当の家族みたいなんだけど誰よりも近い、誰よりも大切な男の子だ。
みんなが思う『特別』とは違う。

「何?」

セイちゃんが私の視線に気付いた。
「ううん、なんでも…学園祭って、こんなに忙しかったかなあ」
「はは、そうだな」
「学園祭終わったら、軽く打ち上げしない?」
陸人くんが提案する。
「今日でもいいし…日を改めて、オレのとこでやってもいいし」
セイちゃんが言った。
「いいね!征爾の家広いし、詩音ちゃんもよく分かってるだろうしね!」
盛り上がる陸人くん。
「えっ……、あ、うん」
思い出した。

萌花ちゃんに、ウソついてたんだった。
セイちゃんの家を、私の家だって。

ドキドキしてきた。
いつか本当のことを言わなくちゃいけないと思ってたけど、心の準備ができていない。
だけど春よりも、萌花ちゃんとずっと仲良くなってきたと思うし、そろそろ告白してもいいかも知れない。
「?」
キョトンとしてる萌花ちゃん。
「えへへ……」
なぜか愛想笑いを返してしまった。
近いうちに、ちゃんと話さなきゃ。
本当のことを全部言ってしまったら、きっと楽だろう。
でも、萌花ちゃんはどう思うだろう。


「津田さん、アイスティーのボトル持ってきて!」

次々と入ってくるお客をサバいて、宮部さんがみんなに指示を出す。
(すごいなあ……才能ある)
普段から仲間のリーダー格だけあって、テキパキと仕事をこなす彼女を見て、改めて感心した。
(なんて、思ってる場合じゃなかった)
ハロウィンカフェは大盛況で、2時頃には用意していたお菓子が終わってしまった。
飲み物だけのメニューに張り替えられ、それでも暑かったせいか男子がドリンクの補充に買出しに行かなくてはならないぐらいだった。

あっという間に一日が終わる。

セイちゃんといられたのはほんの少しの時間だったけれど、教室で当番の間も同じ場所にいられたから、結構長い時間セイちゃんを見ていられたことになる。
すっかり共学の気分を味わえて、最初の緊張感も今ではかなり薄くなってきた。

「5時半には男子棟第1グランドに集合ねー!」

学園祭委員の子が、各クラスに回っている。
一段落した子たちは、ゾロゾロと教室から移動しだす。

「ちょっと、詩音」
私も行こうとしたら、セイちゃんに教室の隅から呼び止められた。
「萌花ちゃん、行ってて」
「うん、あとでね」
教室を出て行く彼女を見送ると、私はコソっとセイちゃんの方に近づいた。
セイちゃんは裏側に作っていた男子の更衣スペースに入って、私を待っていた。
「しっ」
カーテンを開けて私が中に入ると、セイちゃんは唇に指をあてて静かにするようにとジェスチャーで言った。
(誰か入って来ないかなあ…)
私はハラハラした。
『残ってる人はグランドに行ってください』
後夜祭に向かうように促す校内アナウンスが教室に響くと、教室にまだ残っていた子たちの声も聞こえなくなっていく。

狭い空間、二人きりはしょっちゅうなのに、学校だと思うだけでドキドキしてしまう。
「みんな、行ったかな」
セイちゃんが小声で言った。
「後夜祭、始まっちゃうよ。行かないと」
「いいじゃん、サボっちゃおうぜ」
しゃがんでいたセイちゃんが急に立ち上がる。

カーテンを開けて更衣スペースを出ると、セイちゃんはベニヤ板で仕切った裏から教室を見た。
「もう誰もいないな」
そういうと、私の方へ手招きをした。
「………」
「自分のカバン持って、詩音」
「えっ、……ええ?」
訳も分からないまま、私はセイちゃんに言われたとおり自分の荷物を持って彼の後についていく。

「こっちこっち」

男子棟の構造は女子棟とほとんど同じだけれど、微妙に違うところもある。
オロオロしながらセイちゃんについていくと、学園祭のために部外者が入らないように区切られたスペースに入っていく。
「ちょっと、どこ行くの?」
「しー、静かに。人に見つからないように」
『囲碁将棋部』の表札があるドアに、セイちゃんが鍵を差し込む。
「セイちゃん、この部に入ってるの…?」
「名前だけな、オレ部活3つ掛け持ちしてることになってるから。
今日は部長に無理言って鍵預からしてもらってんだ」
嬉しそうにドアを開けるセイちゃん。
私は中に引っ張られた。

セイちゃんはすぐに鍵を閉めなおす。

「でも誰が来るかわかんねえから、大きな声出すなよ」
「え………セ、セイちゃん?」

セイちゃんはものすごくニヤニヤしてる。
「学校にこれだけ人がいるのにさ、みんな外にいるなんて事ってそうそうないよな」
「そ、それはそうだけど……」
囲碁将棋部だから着替えるためのロッカーなんてなくて、長いテーブルが窓際の壁にくっつけて置かれていた。
両サイドに丸イスが幾つかある。
多分簡単に対局できるようにしているんだろう。
入ってきたドアの方にオープンの棚があって、そこには用具がきちんと置かれていた。
密室に二人きりで、それもここは学校で、なんだか落ち着かなくて緊張してくる。

「なあ、詩音」
「ん?」

振り返った瞬間から、セイちゃんにキスされた。
(んん……やだぁ)
ただでさえドキドキしていたのに、もっともっとドキドキしてしまう。
それから、セイちゃんにキスされただけで今、この瞬間にドっと濡れてしまったのが分かった。

「う……ん……」

少し離れてはまた触れてくる唇。
セイちゃんの舌が私の歯に触るだけで、エッチしてるみたいに体がギュンとしてくる。
……唇が熱い。
さっきまで教室で、私から遠いところで男子と盛り上がっていたセイちゃん。
いつも女子の注目を集めて、みんなの憧れのセイちゃん。
そんな彼の唇が、今私の唇と重なっていて、そしてその動きは私を求めている。

(!)

セイちゃんの手が、私の太ももに触れた。
二人で部室の真ん中に立ったまま、体をくっつけてた。
彼の右手は、スルスルと私のそこへと向かってくる。
(やだ、だめぇっ!)
恥ずかしくて消えたくなる。
セイちゃんの指が、私のショーツを触った。
布の上からでも、絶対濡れているのがバレてしまう。

「やんっ!」

唇を離して、思わず声を出してしまった。
セイちゃんの指が私のショーツの隙間から入ってきて、直接そこに触れた。

「すっげーー、もうこんなになってんじゃん」
セイちゃんは嬉しそうに、そしてちょっとギラギラした目で私を見て言った。
そんなエッチな表情ですら格好よくて、余計にドキドキしてくる。
「うわっ、これ、………すげえ……」
セイちゃんの欲情したため息みたいな声がいやらしくて、またドロっと出てしまう。
「やん……だって……だって……」
たまらなく恥ずかしい。
いつもなんでこんなに濡れちゃうんだろう。
ここ、もっと自分でコントロールできたらいいのに。

「もうガマンできないし」

(え、ちょっと、……まさかまさか)

長テーブルに、胸を下にして押し付けられる。
「え、……セ、セイちゃんっ……ダメだよっ」
(学校なのに)
私の言葉が終わらないうちに、ビックリするぐらいの素早さでセイちゃんは私のスカートをめくり、ショーツを下ろしていた。
こんなところでお尻丸出しにされて恥ずかしい、と思った時には私はそこに当てられる熱いモノを感じた。
「うそっ……やっ、やっ……ああっ!」
「ん、くっ……」

セイちゃんが私を割って入ってきた。

私のその部分は美味しいものを待ちわびていたみたいに、セイちゃんのそれを歓迎してしまう。
自分がヌルヌルなのが、恥ずかしいほどよく分かった。
そしてセイちゃんがすっごく固くなっているのも。

「声、ガマンだぜ……」
「んっ………うっ、うぅっ……」

セイちゃんが動く。
動くたびに、テーブルがカタカタと音を立てた。
(誰か来たら、どうしよう……)

不安な気持ちも、セイちゃんが動くたび次第に真っ白になっていく。
「はぅっ!」
セイちゃんが入ってくる時の、体がすうっとして首筋がビクンとするような感じ。
(ああっ……)
ズシンと奥を突かれた時の体に伝わる振動で、腰が震えた。
遠くなった瞬間に、また入ってくる。
この、入ってくる時が一番感じちゃう。
そして奥に……
「…うぅん!」
後ろからされているから、余計にそこに当たってしまう。
(やん、だめぇ……これ…)
引かれて突かれるタイミングが、次第に早くなっていく。
体の中に、快感の波がうねり出す。

(ああ、……ああんっ……)

セイちゃんの動きが激しくなる。
「はうぅ、うぅんっ……あぁっ、」
ドロドロになったそこが、セイちゃんをもっと求めてしまう。

(が、学校なのにっ……)

もう後夜祭は始まっている。
今頃はみんな、今日の学園祭の締めくくりを楽しんでいるんだろう。
(だけど、私は……)
気持ちよくて、たまらなかった。
声をガマンするのが辛い。
(ああ…あ…あ…気持ちいい…セイちゃんっ…)
そこがグっと締まるのが分かった。
そして同時にセイちゃんがもっと固くなる。
密着度を増したその部分から、堪えられない快感が体中に送り込まれる。
膝がガクガクした。

「う、う、うっ……、…い、いっちゃうぅっ……セイちゃぁんっ……」

背中がビクンと跳ねる。
その直後、テーブルの上に体重全てがズシンと圧し掛かった。
力が抜ける。

「はあ、はあ……」



いつのまにかコンドームをしていたセイちゃんが、それを丸めてティッシュに包んでいる。
終わった後の彼はいつも素早かった。
既にセイちゃんはズボンを直しているのに、私はまだそのままグッタリしていた。

「うーわー、詩音、床まで零してる」
「もう、やだぁ……」

足を広げていたから、ボタボタと垂れていたのは何となく感じていた。
だけどそれを見てしまうと、本当に恥ずかしくて死にそう。
「うわーん」
自分の足の間だって、酷い事になっていた。
セイちゃんにされちゃう前から、もう相当大変な事になっていたから、今の状態は本当に酷かった。
「トイレ行きたいよ……」
「うん、行っておいで」


後始末が終わってトイレを出ると、セイちゃんは二つカバンを持って廊下で待っていてくれた。

「帰ろうか」
「でも…」
「早退ってことにして、オレは送ってくって感じで適当に理由つけるから」
セイちゃんはすっきりした顔で、もういつも通り、ううんそれ以上に凛としたセイちゃんに戻っていた。
「………」
私は体のあちこちにエッチな余韻が残っていて、歩くたびにまだ零れてきそうなぐらいなのに。

守衛のところで、セイちゃんは言っていたとおり適当な理由を書いて、私たちは学校をみんなより早く出た。
結構不審な目で見られたけれど、セイちゃんはそんな事は全然気にしていないみたいだった。


「だめだよ……学校でなんて」
歩きながら、私はポソっと言った。
「あんなになってて、お前もよく言うな」
セイちゃんはいじめっ子みたいだ。
「もう……」
私が言い終わらないうちに、今度はセイちゃんがつぶやく。

「……お前といると、オレも色々と大変なんだよ」

その声は全然ふざけていなくてすごく真面目だった。
表情を変えるセイちゃんのそばにいるだけで、私はまたドキドキしてくる。
「セイちゃん……」
好きな人から求められるのは嬉しい。
男の子みたいにいつもじゃないけれど、私だって、スイッチが簡単に入ってしまう。
セイちゃんが大好きで、大好きで、もう本当に大好きって思う。
心から好きだって思う。
それから、セイちゃんを好きなのは心だけじゃなくって、私の体も。
それだって自然に思えた。
私は、私を構成するもの全部でセイちゃんを大好きだった。


「早く帰ろう、まだ足りないし」
足早に歩くセイちゃんに、私はついていくのが精一杯だった。
「足りないって、何が…?」
「……バァカ、分かんねえの??」
セイちゃんが私を睨む。でもその目は怒っていない。
むしろ……
なんとなく意味を察してきて、私は顔が赤くなってくる。
「うそぉ…」

「あったり前だろ!あれで済むと思ってるのか?」
またいやらしい目で私を見てる。
「………」
あれ、と言われてさっきの事を思い出して、私は益々恥ずかしくなる。

「ほら、急ぐぞ!」
セイちゃんに、グッと手を引っ張られる。
「もう!」
小走りで、私はセイちゃんに追いついた。
肩が当たり、一瞬寄り添う私たち。
「今日はくっついて帰っちゃおうぜ」
「えっ…」
「まだ、みんな学校にいるし」
そういうセイちゃんも、珍しく照れてるみたいだった。

二人でこんな風に帰る……

既に暗くなっているいつもの通学路を、並んで歩いた。
幸せで、幸せで、こんなに幸せでいいんだろうかと思った。


 

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