ベイビィ☆アイラブユー

ラブリーベイベー編 ☆☆ 3 ☆☆ 後編

   
初めてのキスは突然過ぎて、頭の中は真っ白。
2度目のキスもおんなじで、私は石みたいに固まったまま。
3度目のキスは……。


(ああ………)

こんなに柔らかいんだ、セイちゃんの唇。
丁寧に触れてくるその感触に、私の体まで柔らかくなってしまうような気がした。

「………」
「詩音…」

ドキドキが止まらない。
近すぎるセイちゃんとの距離に、息まで感じてしまう。
私を見つめるセイちゃんの目。
切ないみたいな、甘いみたいな。
こんな顔されると、こっちまでキュンとしちゃう。
(『付き合おう』って、言ってたよね?)
それって、セイちゃんの彼女になるってこと……?
(ホントに……?)

「セイちゃん……、あっ」

セイちゃんの手が、私の肩のキャミソールのストラップを下ろした。
「えっ…」
あっという間に、ブラジャーまで下げられてしまった。
唐突に、胸から上が裸になってしまう。
「やっ、……あんっ!」
強引にされそうになった、セイちゃんの部屋での一件以来だった。
だけど今日の私は意識もはっきりとしていて、視野の中にある自分自身の乳房のいやらしさにドキドキが高まってしまう。
「詩音」
セイちゃんが私の首筋にキスした。
その感触は柔らかくて優しい。
セイちゃんの両手が、私の胸を触ってくる。

「はぅっ!」

思わず肩をすくめてしまう。
今まで触られたことはあったけれど、全部服の中でだった。
こんな風に自分の胸がセイちゃんの指で触られていたなんて…。
私の乳房をフニフニと掴むセイちゃんの手は、すごく生々しかった。
(やあん、どうしよう…)
『彼女』になったならば、拒むのも変だ。
それにこれまでセイちゃんに色々されてきたせいで、今日の私の体の奥だって、何だかもう熱くなってきていた。

「あんっ、うぁんっ…、」

くすぐったいとかじゃなくって、セイちゃんの手にもてあそばれてる私の胸はすごく感じてた。
「やんっ、セイちゃぁんっ……、あっ」
両方の乳首を指先で摘まれて、私は電気が走ったみたいにビクッとしてしまう。
腰と足の力が抜けて、ガクンとしたその時、
「あっ…!」
「うお?」

私はソファーからずり落ちてしまった。
セイちゃんの腕の下で、私は体半分落ちてた。
「大丈夫かよ、詩音」
「やだ……、もぉ…」
私は恥ずかしくてたまらなかった。
セイちゃんは笑って、私の体を引き上げてくれる。
そして、ちゅっ、って軽く唇にキスした。

(ああん、もう、セイちゃん大好き……)

私は自分の両手で胸を隠しながら、セイちゃんへ向けて顔を上げた。
セイちゃんはニコっと私を見て微笑んで、言った。

「じゃ、…オレの部屋に行く?」
「…………」

鈍い私にだって、セイちゃんの言ってることの意味はさすがに分かる。
(え…だって、こ、こ、心の準備が…)
私は内心すごく焦ったけれど、うまく言葉にできなかった。
セイちゃんが私の腕を引っ張りかけたその時、家の電話が鳴った。
「………なんだよ…」
セイちゃんは電話の方を睨む。
なかなか電話が切れなかったから、セイちゃんは渋々受話器を取りに行った。

「はい、ああ、親父?………ああ!?……あ、いや、何でもない…うん、うん、分かった…」

セイちゃんは電話を切った。
「くそー、何だよ、親父!空気読めよ!」
そう言って、空中を蹴り上げる。
「……おじ様だったの?」
すっかり服を直した私は、ソファーから立ち上がった。
「ああ、……もうすぐ帰ってくるってよ。あと15分ぐらいで着くって。
……なんでこんな日に限ってこんな時間に帰ってくんだよ」
セイちゃんはものすごく不機嫌になってた。
「はああああーーー」
こちらへ戻ってくると、大きなため息と一緒にソファーにドカッと座った。

「夕方に帰ってくるなんて、珍しいね」
「なんでよりによって今日帰ってくるんだよ…、KYジジイ」
今度はセイちゃんがズルズルとソファーを滑り、完全に体勢を崩す。
私は傍らに立ったまま、そんなセイちゃんを横目で見た。


「詩音、……明日、出かけようぜ」
「えっ…」

「何?都合悪い?」
セイちゃんが右手で黒い髪をかき上げる。
「ううん、大丈夫だよ」
突然の誘いに、本当に胸が鳴った。
(デ、デートって、ことだよね……)
「じゃあ、外、出ようぜ。オレ買い物もしたいし」
セイちゃんは立ち上がった。
横に並ばれるだけで、私はどうしていいか分からなくなるぐらいドキドキしてしまう。
こんな風なのに、明日一緒に歩けるんだろうか。
「シャワー浴びてくる。また後でな」
私の方をチラっと見て微笑むと、セイちゃんは早足で部屋を出て行ってしまった。

(デート……)

男の子と付き合ったことのない私は、デートするのだって初めてだった。
その相手が、セイちゃんだなんて。
「いやーん、ホントにっ?」
今日のめまぐるしいこの展開に頭がついていかなかったけれど、これは現実だ。
「どうしよう、何着て行こう……」

セイちゃんと初めて外で二人で会えるって、想像しただけで浮かれた。
『初デート』、それ以上のことが起こるなんて、その時は全然考えていなかった。
 
 

ラブで抱きしめよう
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