ビター(夢色続編)

麗佳編 ★★ 1 ★★

   
卒業式の後、春休みは先生と何度か会えた。
遠距離恋愛になるとか、そんな事全然気にならなかった。
だってホントに昨日まで…もう会えないかもと思っていたのに。


それなのに、……『彼女』だよ?

先生の事が好き。
好きになり過ぎて、急に『恋人』って言われても全然実感なんてなかった。
ウソみたいだった。
目が覚めて、「これは夢です」って言われても「あぁ、やっぱり」って思ってしまいそうだ。

(あたしって、幸せ貧乏性だよなぁ…)
ウジウジした高校生活のせいで、すっかり幸福感とは縁遠かったあたし。
だから全然慣れない。
先生の名前を呼ぶ事でさえ。


「彰士…」
4月に入って、2週目の土曜日。先生は横浜まで会いに来てくれた。
あたしはJRを出て、新幹線の改札口で先生を待っていた。
遠くから、先生が近付いてくる。
人ごみの中にいても、私には彼がすぐ分かる。
教師を辞めてから、先生は髪も短くしてすごくサッパリしてた。
元々カッコいいのに、余計に大人っぽく見えてあたしはドキドキしてしまう。
「待たせたよな?」
「ううん、全然待ってないよ」
あたしは首を振った。
先生はあたしの顔を見ると、ちょっと微笑んでくれる。
その笑顔が、もう、たまらないんだけど…。
「先にホテルに荷物置いてもいいか?」
「うん」
『ホテル』って聞いただけで、ドキドキして焦ってくる自分がすごく恥ずかしい。
先生は一泊の予定で来てる。
勿論、あたしも一緒に泊まっちゃうんだ。

地下鉄に乗り換えて、桜木町へ向かう。
最近この辺りはぐっと便利になって、行楽の人たちで結構電車は混んでた。
先生と並んで立つ。
「人、多いな」
先生が言う。
「そうだねー。あたしはもうこれぐらいが普通な感じだけど」
「オレの住んでるとこは田舎だなって、いつも思うよ」
「そうなんだ…?」
あたしは先生を見上げる。
横にいる先生はあたしを見る。
つり革を掴んでいた腕を離して、あたしの頬を手の甲で撫でる。

「…………」
あたしは彼のそんな動作に、心底ときめいてしまう。
ちょっと触られただけなのに。
もうどうしよう。

先生と電車に乗ってるってだけで、以前のあたしから思えば本当に夢見たいな事だ。
こうして、堂々と二人でいられるなんて。
改札を出て、ホテルへと向かう。
二人で並んで街を歩く。
こういうの、ずーっと憧れてたんだよね…。
なんか、今までは目立たないように目立たないようにしてたから…。
卒業できたんだなって、実感してしまう。
それから、先生が「先生」じゃなくなったって事も。


「すっごい綺麗な部屋ー」
先生が予約してたホテルは、すっごく豪華な感じがした。
部屋の窓は円形になっていて、真昼の海がキラキラ見えた。
「ねぇ、あれってベイブリッジだよね」
「そうだな、…夜、綺麗そうだな」
荷物を置いた先生も窓際にいるあたしの方へ来る。
「高そうだよ?この部屋…」
あたしが値段の心配するのも変だけど。
「知り合いがさ、こういう手配やってて安くしてもらえるんだよ」
先生が笑って言った。
きっと医者って儲かりそうだから、多分先生ってお金持ちなんだろうな。
ずっと思ってたことだけど。

「麗佳……」
突然耳元で言われて、あたしはビックリして体が固まってしまう。
先生の腕が後ろからあたしに廻される。
「…先生…」
「…だから、…違うだろ」
先生があたしの耳を噛む。
「……彰士…」
どうしよう、これだけのことで、もうあたしの体は熱くなってくる。

「えっ……ちょっと、…ちょっ…」
先生がズルズルあたしの体をベッドの方へ引っ張る。
そのまま流れで押し倒される。
「…ちょっと、しょ、…彰士っ…」

「………」
「………」

先生があたしの口を塞ぐ。
すぐに唇をこじ開けられて、熱い舌が入ってくる。
って、…手が…。
「やっ…、…あぁぁんっ、……久しぶり、なのに…」
あたしは唇を離して少し抵抗した。
「久しぶり、だから、…だろ」
先生はニヤっと笑って、すぐにあたしの唇を追いかけてくる。
「んっ……もっ……」
先生の手は、あたしのスカートの中に入ってた。
素足の脚の間、すぐに指が触れてくる。
(もぉ…もう??)
全く無駄な抵抗だって分かってるけど、あたしは逃げようとして手に力が入る。
その手を先生の空いている方の手ですぐ捕まえられてしまう。
「んんっ………んっ…」
先生の舌があたしの口の中で暴れる。
いっつもクールに見えるのに、どうしてこんなにキスが激しいんだろ。

先生の指はあたしのショーツの横から、すぐにそこを割ってくる。
(やぁんっ…)
「…んん、……んぐっ…」
先生に食べられちゃいそう。
やだ……。もう、指が…。
「………んんっ!」
素早くて的確な先生の動きで、もう指が入ってきてしまう。
やっと先生が唇を離す。

「……麗佳」

「やだ……彰士…」

あたしは早くも息が上がってた。
「こんなになってるのに?」
先生があたしの中で指を動かす。
「あぁんっ!」
だって先生に会った時から、もうあたしは興奮してた。
ううん、本当は彼の事を考えるだけで欲情してしまうのに。
「可愛いよ…」
先生があたしの瞼にキスする。
そして頬へ優しくキス。
ゆっくりと髪を撫でてくれる。
だけど、あたしの中に入ってる指は…どんどん動きを激しくしてくる。

「あっ、…あ、…あぁぁんっ!」

すごい…。
先生にはあたしの感じるところが、ピンポイントで全部バレてるんじゃないかっていつも思う。
彼はそれぐらい上手だ。
ちょっとの愛撫で、もう体が痺れてしまう。
「あ、……あっ、…ダメ、……やっ、…しょう、じ…」
信じられない。もう、イきそうになってきた。
「…麗佳……締まってきた…」
先生が耳元で囁く。すっごいいやらしい声で。
「あぁんっ!」
あたしは余計に興奮して、益々感度が上がってきてしまう。
こんなすぐにイかされるなんて、幾らなんでも…イヤ…。
ガマンしようと思うのに、先生の指はそこを捕らえて離さない。
そんなに指を動かしたら、……ダメだよ…。
「イヤっ……、彰士っ、…あっ、あっ、ダメっ…」
「麗佳の可愛い顔……見るよ」

恥ずかしい。ホントにヤダ。
だけど、やっぱり嬉しかったりして…。
で、もう余裕がなくて…。

「…んあっ、あっ!…やっ、…あ、やぁぁぁっ!」


本当に恥ずかしかった。
だってあたしは全然服も脱がされないまま、勝手にあっという間にイかされちゃったんだもん。
先生はズルい。いつもすぐにあたしをイッパイイッパイのとこまで追い詰める。
「はぁ、…はぁ…はぁ……」
あたしの髪に先生が触ってる。
脚の間がベトベトしてるのが気持ち悪い。
あんまり恥ずかしすぎて、目を開けるのもイヤ。

「麗佳」
「………ひどいよ、彰士…」
あたしは少しだけ目を開いて、先生をちょっと睨んだ。
想像した通り、先生は凄く嬉しそうにあたしを見てた。
多分、先生ってちょっとS傾向にあるんじゃないかっていつも思う。
…でもそんなトコも好きなんだけど…。

彼のペースで、そしてあっという間に全裸にされてしまう。
明るい昼間の室内、大きく開いた窓、ベッドからは空しか見えないけど。
先生には、あたしの全部が見られてる。
目を開けると、あたしも彼の全部が見える。
あたしは見られるのも恥ずかしかったけど、見るのはもっと恥ずかしくて、どうしても目を伏せてしまう。
久しぶりに会った彼の顔とか、本当はよく見たいのに。

先生があたしの膝に両手を当ててる。
そして開いていく。……そんなに開かなくてもいいってぐらいまで。
「麗佳」
何でこのタイミングで名前を呼ぶの…?
「……」
目を開けると、恥ずかしい格好をした自分の脚の間から、
ずっと会いたかった愛しい彼の顔が見える。
もう、…恥ずかしくってホントやだ…。
あたしはまたすぐに目を閉じる。
いつも彼にされるがままだ。
先生の顔が、あたしの顔に近付いてくる。
体重が、少しかかるのを感じる。

「あっ……」

入ってくる。

下半身、あたしの真ん中を貫いて先生の重さが伝わる。
はっきりと入ってくる感触を感じてしまう。
感覚として、彼の形が分かるぐらいに研ぎ澄まされる。
先生とするセックスはいつも久しぶりで、だから入ってくるだけで凄く感じてしまう。
そしてさっきイったばっかりだから、あたしはもうヤバい状態になってくる。

「先生……ゆっくり、して…」
あたしは思わず言ってしまう。
だって、久しぶりに会えたんだもん。
もっと先生のこと、じっくりと感じたかった。
「ダメ……」
先生が低い声で言う。
「どして……?」
あたしは懇願するように先生に言った。彼の肩を掴む。
「『先生』って言ったから」
意地悪な声で耳元で彼が言った。
「だって……あっ、あぁぁんっ!」

彼が動く。
そんなに激しくって動きじゃない。
なのに、奥の、あたしの感じるところにガンガン当たってくる。
その場所の感覚が、剥き出しになっているみたいだった。
恥ずかしい。
こんなに感じてしまう自分が。
それもこんなに簡単に。

先生と一緒にいると、体がおかしくなってるんじゃないかと思ってしまう。
それぐらい、あたしは感じてる。
自分がすごく淫乱になってしまった気がする。
そうだとするならば、

あたしは、先生の前ではいつも淫乱だ。


「あっ、あ、……んあっ、…あぁっ!」

彼があたしを揺さぶる。体の内側も外側も、そして心までも。
先生が入ってからすぐに、あたしはもう訳が分からなくなってた。
「麗佳……」
先生があたしに囁いてる。
会いたかった、みたいな事、言われたような気もした。
だけどあたしは、先生との行為の最中は自分がどこかへ行ってしまう。
それが何だか勿体無くって、あたしは冷静になりたいのに。

「だめっ、……彰士、…それ、ダメっ、あ、あ、…あぁっ!」

乱れてると思う。
だけど抑えられない。
こんな明るいところでこんな風になる自分が恥ずかしい。
もう、体の中心から本当に感覚が剥けてしまいそう。

「いくっ……、あっ…やぁぁっ…!」
「いいよ…イって…何度でも……」
「…あ、あ、あっ、…あ、あぁぁぁぁっ!!」

あたしはすぐに達してしまう。
先生も、あたしに合わせるようにイってくれた。



「もぉ…もぉ…。彰士のエッチ!」
二人で裸のまま、ベッドに横になってた。
「麗佳のせいだから」
先生はもう涼しい顔で、そんな風に言う。
「もー彰士のばか…」
あたしは短時間で2度もイかされて、ホテルに来てまだそんなに時間が経ってないっていうのに、もうぐったりだった。
こういう風になると、猛烈に眠気に襲われてしまう。
「……寝てもいいよ」
あたしの行動を知り尽くしてるみたいに、先生が言った。
「ヤだ。寝ない……。勿体無い……」
「おいで」
体勢を変えて、先生が腕枕をしてくれる。
「ダメだよ…。この状態……。ヤバイってば…」
気持ちよすぎて、本格的に瞼が重くなってくる。
「いいよ、おやすみ……麗佳」
肩とか撫でられてるし。
もう、色んな意味でダメ。
あたしは逆らう言葉を口にする前に、もう意識がなくなってた。
 

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