午後から学校のない日、輝良の部屋で簡単に昼食を食べて、その後二人はテレビを見ていた。
「ワイドショーって、ほとんどニュースだよな」
輝良がゴミを片付けて、麗佳の隣に座る。
「そういえば、芸能人ネタってあんまりしてないね」
麗佳も体をずらして、足を伸ばした。
「ちょっと、ここに来て」
「ここって…?」
麗佳はきょとんとした。
輝良が大きく足を開いている。
「……だーかーらー」
彼に引っ張られて、麗佳は輝良の足の間に座らされる。
「こうやってるのって、なんか良くない?」
輝良は後ろから麗佳に手を回した。
「…あぁ…、そうだね…」
後ろからギュっと抱きしめられるのって、いいなって麗佳は思う。
そして、ふっと別れた日の田崎のことを思い出した。
「やん……」
輝良が後ろから麗佳の首筋にキスしてくる。
麗佳の思い出は、輝良の吐息ですぐに打ち消されてしまう。
(結局、…欲情しちゃうんじゃん)
温かい彼の温もりを背中に感じながら、麗佳はちょっと笑ってしまう。
輝良の手が、後ろから麗佳の胸を掴んだ。
「もう…」
その手は麗佳の薄手のセーターの中にすぐに入ってくる。
「…あっ……」
そしてあっという間にブラジャーの中に入ってきて、麗佳の先に触れた。
「…もう……テル…」
そう言いながらも、麗佳は本気では嫌がらない。
輝良は自分の掌の中にある、麗佳の柔らかさに興奮してくる。
(絶対おっぱいデカいよなぁ…)
指先で、麗佳の乳首の先を擦る。
「うぅんっ……」
麗佳の予想どおりの反応のよさに、輝良はテンションが上がってくる。
(我ながら、全然自制できないよな…)
二人でいるとすぐに求めてしまう自分に苦笑してしまう。
「テルー…」
「なに?」
輝良は麗佳の胸を弄っていた手を一瞬止める。
「あたし今日生理だしー…」
「そうなの?」
「エッチできないよ……あたし結構重いし」
「マジで」
輝良が思いっきり凹むのを麗佳は感じた。
「ごめんね」
麗佳は輝良の腕から抜けて、正面に向いて謝った。
本当に悪い気がしていた。
「…しょうがないよな」
輝良の声が沈んでいる。
「……ごめん」
何だかんだ言っても、いつも輝良に気持ちよくしてもらっていた。
麗佳は輝良にキスした。
二人でベッドに腰掛ける。
麗佳は輝良を抱きしめた。
「好きよ、……テル」
こんな風に素直に言葉が出る自分に、麗佳自身時々驚いてしまう。
涼子が前に言っていた、『態度に表す』っていうのはこういう事なんだなって思う。
そしてその大事さも、分かるようになってきた気がしていた。
「うん…オレも」
素直に麗佳に抱きしめられながら、輝良も言った。
麗佳は、輝良が可愛くなる。
(ホントに、好きだなぁ……)
麗佳は輝良の髪を撫でた。
(なんでだろ…)
そしてその髪にキスする。
「麗佳」
顔をあげた輝良の唇に、麗佳は自分の唇を重ねた。
(優しいキス……)
麗佳は自分の唇から感じる感触でさえ、愛しいと思う。
輝良と交わすキスは、いつでも柔らかかった。
それは必然的にお互いを高ぶらせてしまう。
輝良が麗佳の手を握る。
そして自分のそこに触れさせる。
(やん…)
Gパンの上からでも分かる輝良の固さに、麗佳はドキドキする。
(このままで、二人きりでいたら……)
輝良があまりにかわいそうな気がしてくる。
「テル……」
二人はキスを交わし続ける。
輝良は自分でGパンを降ろした。
麗佳はボクサーブリーフの上から、そのまま輝良を触った。
(やぁん……)
薄くて柔らかい素材の上からの感触は、麗佳を興奮させた。
「麗佳………」
唇が離れる。
麗佳が輝良を見ると、彼の目が自分を求めているのを感じた。
「………」
麗佳はゆっくりと輝良の下着を下げていく。
「あぁん…」
声を出してしまったのは、麗佳の方だった。
麗佳はほとんど男性のものを直に手に触れたことがなかった。
肩に置いた輝良の手に力が入る。
自然にその力に促されるように、麗佳はベッドに座っている輝良の足の間にひざまずいた。
目の前で輝良のものを見てしまう。
(こんな、おっきいんだ……)
自分にこんなものが入ってきているのかと思うと、改めて不思議な気分になる。
麗佳の手の中にある輝良のものは、想像以上に固く、大きかった。
(どうしよう……)
「そんなに、見るなよ……」
輝良が口を開いた。
麗佳は恥ずかしくなってしまう。
「だって……すごいんだもん」
「……口でして…」
輝良が言った。
(………)
麗佳は輝良のものを握ったまま、固まってしまう。
そして舌を出して、そっと彼の先を舐めた。
「………」
暫く麗佳は輝良の先の方を舐めていた。
(……いいんだけど…)
輝良は自分の視野に入る麗佳の舌を見ていた。
(焦らしてんのかな……)
麗佳が輝良に送る刺激はとてもゆるく、目に入るビジュアルがいやらしいだけに輝良はじれったくて仕方がなかった。
「あのさ……」
とうとう輝良が口を開いた。
「…あんまり、焦らさないでくれよ…」
「……」
麗佳が顔を上げた。
輝良と目が合うと、真っ赤になる。
「ごめんね……。へたくそで…」
「いや、そういう意味じゃなくって」
輝良は少し困ってしまう。
「あのね…」
「うん」
自分のものを握られたまま会話するのも変だなと輝良は思いながら、それでも麗佳に返事を返す。
麗佳は輝良を見上げた。
「あたし、…こういう風に…口で、したこと、…ないの……」
「マジで?」
輝良は驚いた。
「ウソだろ?」
「…ホントに…」
麗佳が下を向く。
輝良は思い出そうとした。
自分と麗佳の過去、…麗佳にそうされたことはなかったかもしれないと思った。
(だけど、田崎は……?)
「ウソだろ?」
また言ってしまう。
「嘘じゃないって」
麗佳の様子から見ると、どうやら本当らしかった。
(マジかよ…?田崎…?)
輝良は心の中で、初めて田崎に向かってガッツポーズした。
「咥えて、動かして……」
輝良は麗佳に言った。
彼女は素直に輝良の言うとおりにしようとした。
(可愛いなぁ……)
一生懸命、自分にしてくれる麗佳を、輝良は本当に愛しいと思う。
麗佳の愛撫はつたなかったが、それでも充分過ぎるほど輝良を興奮させた。
「んっ……んんっ……」
自らもいやらしい声を出しながら行為に没頭する麗佳を見ていると、輝良は次第に高ぶってしまっていた。
麗佳の動きも、だんだんとスムーズになっていく。
輝良のものと麗佳の唇が擦れる音が、麗佳の声とともに部屋に響く。
「麗佳、……オレ……」
輝良は麗佳の髪を触った。
「…ん……」
「もう、出そうだよ…」
「うん……」
麗佳は動きを止めようとしなかった。
「そんなにしたら、…ダメだって」
輝良は麗佳の頭を離そうとした。
「……いいよ……」
麗佳は輝良を咥えたまま、さらに動いた。
「って、…ダメだって………、麗佳っ……」
「…………」
「…………」
「…ごめん」
バツが悪くて、輝良はすぐにズボンを直した。
麗佳は首を振る。
そして輝良を見て言った。
「飲んじゃった……」
輝良は何とも言えない気持ちになる。
「ごめん」
麗佳にすごく悪い事をしてしまったような罪悪感でいっぱいになってくる。
(はじめてそういう事させたのに……)
嫌がられたらどうしようかと、輝良は考える。
「なんか、ノドがイガイガする」
口をおさえながら麗佳が言った。
「……何か飲む?」
「うん」
麗佳は頷いた。
輝良は立ち上がった。
「怒ってない?」
輝良は恥ずかしそうに言った。
「なんで?怒らないよ……」
彼を見て麗佳は優しく笑う。
「だってさ……」
こういうことって上手く説明できないよなと、輝良は思う。
「いっつも、テルにはいっぱいして貰ってるから。…たまにはお返ししたい」
そう言って麗佳は輝良に寄りかかった。
「うん……」
輝良はただ頷いた。
(好きだ……麗佳……)
そしてそのまま麗佳を抱きしめた。
今日は時間があって、その後も二人でベッドでゴロゴロしていた。
「明日、…麗佳バイトだろ?」
「うん」
麗佳は寝転がりながら輝良のTシャツの胸に乗っていた。
「じゃ送ってくから、終わったら電話してくれる?」
半分麗佳を抱いて、輝良は言った。
いつも側にいることが、二人の間では既に自然になっていた。
「テルも午後バイトだよね?」
「ああ」
「なんか、テルってあんまり学校行ってないよね」
麗佳は笑った。
「そうかもな…」
テスト前だというのに、それでいいのかと輝良は考える。
「じゃー、午後は時間ないね」
麗佳が言った。
「なんで?」
輝良が聞く。
「授業の終わりと、バイトの始まる時間が中途半端なんだー。いっつも本屋さんとかで時間潰してて」
「あ…」
輝良が麗佳の腕をよけて起き上がる。
「?」
玄関口に置いてある棚から、輝良は何かを探し始める。
「あ、…あったあった。良かった」
暫くすると輝良はベッドに戻ってくる。
「これ、麗佳にやる。持ってて」
麗佳に手渡されたものは、鍵だった。
「えー、これって……」
手の平に置かれた鍵を見てから、麗佳は顔を上げた。
「ここの合鍵。…そういえば持ってた方が何かといいだろ。明日時間空くようだったら、ここに来て時間潰せば?オレがいなくても全然好きにしてくれていいから」
当たり前のように輝良はそう言ったが、麗佳は感激していた。
「いいの…?合鍵なんてもらっちゃって」
「ああ、なくすなよ」
輝良は笑った。
「なくさないよ……」
麗佳は嬉しかった。
(なんか、感激……)
ちょっと涙が出そうになった。
次の日、バイトの合い間に麗佳は輝良の部屋に寄った。
(あー、テルの匂い…)
先日来たばかりなので、部屋の雰囲気はほとんど変わらない。
オーディオの横にあるCDが雑然と散らばっていた。
麗佳は、輝良のいない部屋にこうして一人でいるのが不思議な気がした。
『今、テルの部屋にいるよ』
麗佳はメールを打ってみた。
暫くしてテルから返信が来る。
『送るから、バイト終わったら部屋で待ってて』
麗佳はそれを見て思わず微笑んでしまう。
(なんか、自然なんだよね……)
麗佳は輝良のベッドに寝転がった。
輝良の前では、意地を張ったり変に気後れしたりしないでいられた。
(やっぱり、相性がいいのかなぁ…)
彼のベッドは少し自分の匂いもした。
形で表さなくても、麗佳にとって輝良は自分の彼氏だと素直に思えた。
毎日会うことも、…会っていてもメールしたり電話したりすることも、
今の麗佳にとって全てが自然なことのように思う。
どうして以前の自分が恋愛に対してあんなにも不安ばかりだったのか、逆に今となってはそれが不思議なほどだった。
(今の自分なら…)
麗佳は目を閉じる。
(もっと素直になれたかもしれないな)
できなかったこと、今ではできること、…少しずつ落ち着いて自分を含めた色々なことが、今では考えられる。
麗佳は輝良の枕を引き寄せて、顔を埋めてぎゅっと抱きしめた。